カイコ
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この項目では、昆虫について説明しています。愛称「カイコ」のサッカー選手については「アイルトン・グラシリアーノ・ドス・サントス」をご覧ください。

カイコ
成虫 幼虫
分類

:動物界 Animalia
:節足動物門 Arthropoda
:昆虫綱 Insecta
:チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
:カイコガ科 Bombycidae
亜科:カイコガ亜科 Bombycinae
:カイコガ属 Bombyx
:カイコガ B. mori

学名
Bombyx mori
Linnaeus, 1758
和名
カイコガ(蚕蛾)
英名


Silk moth

Silkworm

カイコ(蚕、学名:Bombyx mori)はチョウ目(鱗翅目)カイコガ科に属するの一種。和名はカイコガとされる場合もカイコとされる場合もある。カイコガと呼ばれる場合も、幼虫はカイコと呼ばれることが多い。幼虫はクワ(桑)の葉を食べて育ち、糸を分泌してをつくりその中でに変態する。この糸を人間が繊維素材として利用したものがである。
家畜化された昆虫

カイコは絹の生産(養蚕)のためにクワコ家畜化した昆虫であり、野生動物としては生息しない。そのため家蚕(かさん)とも呼ばれる。また野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物として知られ、人間による管理なしでは生きることができない[1]。カイコを野外のクワにとまらせても、餌のクワの葉を探さないまま餓死したり、体色が目立つ白であるためにすぐに捕食されたり、腹脚の把握力が弱いため容易に落下したりして、すぐに死んでしまう。成虫もはあるが、体が大きいことや飛翔に必要な筋肉退化していることなどにより、羽ばたくことはできるが飛ぶことはほぼできない[2]

他に家畜化されている昆虫としては、セイヨウミツバチ(養蜂)、コオロギ(食用)、ナミテントウ(天敵製剤)などがある。
地方名

20世紀の調査では、カイコを意味する方言地方名)には主に次のような例があった[3]

あみぶくろ - 奈良県十津川村

あとと - 福島県会津地方

いちとい - 滋賀県(「第一眠」をも意味する)

いとぅむし(糸虫) - 沖縄県首里方言

ぼぼさま(幼虫): 新潟県東頸城地方

うすま - 新潟県越後地方

おさなもの - 京都府兵庫県丹波地方

おしなもんさま - 富山県

おしろさま、おしらさま(御白様) - 静岡県駿河地方

おしろさん(御白様) - 山梨県

おぼこ、おぼこさま - 山梨県南巨摩郡

きんこ - 陸奥国

くわご、くわこ(桑子) - 熊本県大分県

けごじょ(毛蚕じょ) - 鹿児島県宮崎県

こごじょ、こごじょさま - 富山県

こもぜ - 京都府与謝郡

こな、こなさま - 東京都八丈島三宅島

しろさま(白様) - 山形県庄内地方

とどこ、とどっこ、とどっこさま - 秋田県青森県岩手県

ひめこ(姫子) - 神奈川県千葉県兵庫県播磨地方

まむし(真虫)、まむしぐゎー(真虫小) - 沖縄県、鹿児島県奄美大島

もつく - 群馬県勢多郡

起源

養蚕は少なくとも5000年の歴史を持つ[4]中国伝説によれば黄帝の后・西陵氏が、庭で繭を作る昆虫を見つけ、黄帝にねだって飼い始めたと言われる。

カイコの祖先は東アジアに生息するクワコ (Bombyx mandarina) であり、中国大陸で家畜化されたというのが有力な説である[5][2]。カイコとクワコは近縁だが別種とされる。これらの交雑種は生殖能力を持ち、飼育環境下で生存・繁殖できることが知られているが、野生状態での交雑種が見つかった記録はない[2]。一方でクワコはカイコとは習性がかなり異なり、夜行性で活発に行動し[6]、また群生することが無い。これを飼育して絹糸を取ることは可能ではあるが容易ではなく[7]、むしろにおいてカイコとは異なる昆虫であるヤママユの方が、絹糸を取るために利用される。

しかし5000年以上前の人間が、どのようにしてクワコを飼い慣らしてカイコを誕生させたかは、現在まで完全には解明されていない。そのため、カイコの祖先はクワコとは近縁だが別種の、現代人にとって未知の昆虫ではないかという風説[8]が流布している。しかし、ミトコンドリアDNAの情報[9][10][11][12][13]や全ゲノム情報[14][15]を元に系統樹を作成すると、カイコはクワコのクレード(分岐群)の一部に収まるため、この仮説は支持されない。
生育過程

完全変態の昆虫である。

孵化したての1齢幼虫は、黒色で疎らな毛に覆われるため「毛蚕」(けご)と呼ばれ、また、アリのようであるため「蟻蚕」(ぎさん)とも呼ばれる。を食べて成長し、十数時間程度の「眠」(みん、脱皮の準備期間にあたる活動停止期)を経て脱皮する。2齢以降の脱皮後も毛はあるが、体が大きくなる割に、毛はあまり育たないのでイモムシ様の虫となり、幼虫の体色や模様は品種によって様々であるが、通常は白く、頭部に眼状紋が入る。幼虫の白い体色が天敵に発見されやすいこともあって(逆に言えば、見失っても飼育者である人間の目には留まり易い)、幼虫は自然下では生育できない。また2齢幼虫になる頃に毛が目立たなくなるのを昔の養蚕家は「毛をふるいおとす」と考え、毛ぶるいと表現した。各発生段階のカイコ

多くの品種の幼虫は、5齢で終齢を迎え、(さなぎ)となる。蛹化が近づくと、体はクリーム色に近い半透明に変わる。カイコは繭を作るのに適した隙間を求めて歩き回るようになり、摂食した餌をすべて排泄する。やがて頭部の吐糸口から絹糸を出し、頭部を∞字型に動かしながら繭を作り、その中でになる。繭の色や形は品種によって異なるが、白い楕円形が一般的である。絹糸は唾液腺の変化した絹糸腺(けんしせん)という器官で作られる。後部絹糸腺では糸の主体となるフィブロインが合成される。中部絹糸腺は後部絹糸腺から送られてきたフィブロインを濃縮・蓄積するとともに、もう一つの絹タンパク質であるセリシンを分泌する。


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