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OHVとは、 Over Head Valve(オーバー・ヘッド・バルブ)の略語で、4ストローク機関の吸排気弁機構の形式の一つ。従来のサイドバルブやスライドバルブに対しバルブ機構をシリンダーヘッド上に備えた形式を言う。日本語では頭上弁式と表記される。OHVやOver Head Valveは単に本方式を示す用語であり、吸排気弁をシリンダーヘッドの上部に備える他の機構を含む一般概念ではなく、シリンダーヘッドにカムシャフトを持たないものを指す。
カムシャフトをシリンダヘッドに備えたSOHCやDOHCも吸排気弁をシリンダーヘッドの上部に備えるが、一般的にOHVとは呼ばれない。 カムシャフトがシリンダーブロック側に位置し、プッシュロッドとよばれる長い棒を介してロッカーアームを押し上げバルブを開閉させる[1]。したがって「プッシュロッドエンジン」と呼ばれることもある[2]。最初のOHVエンジンはスコットランド系アメリカ人であるデビッド・ダンバー・ビュイック
構造
側弁式のSVに対して頭上弁式のOHVが有利なのは、バルブ開口部をシリンダーボア径内に配置することで、燃焼室を小さくできる点である[3]。これによりOHVはSVに比べて燃焼室の表面積が小さくなったことで、ヘッドから逃げる熱が少なくなり、さらにノッキングを起こしにくい燃焼室形状にしやすく圧縮比も高くとれるため、一段と熱効率を高められる事で出力や燃費を向上させることが可能となった。一方、高回転でも吸排気バルブの開閉タイミングを正しくとれるSOHC(OHC、シングルカム)や、開閉を独立して変化させることが可能なDOHC(ツインカム)に比べると燃費や出力の面で不利とされ、また、厳しさを増す排出ガス規制への対応も不利とされる[4]。
SV方式からの移行期には吸気弁がOHV、排気弁がSVというIOE(intake/inlet over exhaust)エンジンも存在した。IOEエンジンはウィリス時代のジープやハーレーダビッドソンなどにも見られ、米国などでは「Fヘッド」、日本では「F頭式」[注釈 1]と通称される。自動車やオートバイではOHVの登場によって廃れたが、汎用石油発動機ではその後も多く見られた。また逆に吸気弁がSV、排気弁がOHVというEOI(Exhaust over intake)エンジンも存在した。
SVのOHV化は、吸排気ポートと動弁機構を持つヘッドに交換し、サイドバルブが通っていた部分にプッシュロッドを通してシリンダーヘッドのバルブを駆動させる事で可能となるため、初期のOHVエンジンにはSVエンジンをベースにしたものもみられた。この様に構造上は比較的容易にOHV化することも出来ることから、SVをOHV化するキットなども存在する。
長いプッシュロッドではその慣性質量と、熱膨張による寸法変化、および、駆動時の弾性変形が問題となるため、カムシャフトを高い位置に配置してプッシュロッドを短くした、ハイカムシャフト(ハイカム[注釈 2])方式と呼ばれるものもある[5][注釈 3]。この場合、カムシャフトはローラーチェーンなどを介して駆動され、動弁系の往復慣性重量はSOHCと比べさほど大きくならず、また、ヘッド直上にカムシャフトがないためDOHC同様のセンタープラグと理想的弁配置が取れる利点がある。また、エンジン下部のシリンダーブロック内にカムを配置する構造により、騒音面でもOHCより有利な場合が多い。 OHVは往復運動する部品が多く、特にプッシュロッドの重量により高回転時のポペットバルブの追従性を悪化させるバルブジャンプや、往復運動機構の共振によるバルブサージングが発生しやすく、エンジンの許容回転数を上げることが難しい。しかし、飛行機や船舶で使われるレシプロエンジンではプロペラを定められた回転数よりも高速に回転させる必要がない上、耐久性と信頼性に優れるため、 OHV は多用されている。これは常用回転域が低いディーゼルエンジンにも当てはまる。ただし自動車用ディーゼルエンジンの内、小型のものはガソリンエンジンとの設計の共通化が進み、部品点数の削減や軽量化の面、さらに燃費の面などでもOHCが有利とされ、OHVは淘汰された[6]。トラック・バス用の中排気量、および大排気量のエンジンの一部には、OHV機構のままでありながら、厳しさを増す自動車排出ガス規制に対応するため[6]、4バルブ化されたものもある[注釈 4]。 日本車では、1960年代から1980年代に製造された乗用車のエンジンにOHVが多く採用された。同一車種に複数のグレードを設定する場合、上位グレードにはSOHCもしくはDOHCを、下位グレードにOHVを採用することで差別化が計られていた。なお、ホンダおよびスズキ[注釈 5]は、四輪車にOHVを一切採用していない。 しかし1990年代以降、LPG自動車を含む一部のトヨタ製の商用車を除いてOHVはほとんど採用されなくなり、ポペットバルブを持たないロータリーエンジンを除き、すべてSOHCもしくはDOHCに置き換えられた。 唯一の例外が水平対向エンジンで、エンジン両脇にシリンダーヘッドを持つ構造から、長らくOHC化はかえって非効率で、寸法や重量の増大、整備性(イニシャルコスト)の悪化を招くものとされていた。スバル・レオーネは当時の富士重工業(現・SUBARU)のフラグシップ車という位置づけでありながら長らくOHVを採用し続け、1984年には1,800 ccエンジンのみSOHC化されたものの、バルブ駆動形式だけ見るならば他社に一段以上遅れた状況を展開していた[注釈 6]。
OHV方式の採用例
四輪車
日本