この項目では、機械人形について説明しています。
計算モデルなどの分野で用いられる語については「オートマトン」をご覧ください。
2014年製作のSFアクション映画については「オートマタ (映画)」をご覧ください。
2017年にスクウェア・エニックスが発売したアクションRPGについては「ニーア オートマタ」をご覧ください。
「手紙を書くピエロ」(レオポール・ランベール作 1900年) 右手が滑らかに文字を書くように動き、少し眠気が差したように目の表情が変化する。首が上下しランプの炎が小さくなると、はっと我に返るようにまた手紙を書き始めるという一連の動作をする。野坂オートマタ美術館所蔵品
オートマタ(英: Automata [???t?m?t?] 複数形)、オートマトン(Automaton [???t?m??t?n] 単数形)は、主に12世紀から19世紀にかけてヨーロッパ等で作られた機械人形ないしは自動人形のこと。
本項で述べる人形は、日本の伝統的な機械仕掛けの人形をからくりと呼ぶのに倣うと、いわゆる「西洋からくり人形」に該当する。 オートマタは、言葉の原義としては「自動機械」のことであり、語源のギリシャ語「automatos」は「自らの意志で動くもの」というような意味合いを持つ言葉である。どういう条件を満たせばオートマタと呼ぶのにふさわしいかは、作られた時代背景や用途、特徴によっていろいろな種類があるがゆえに見解が分かれるところである。本項では主に、18世紀から19世紀にかけてのドイツやスイスの時計技術の革新と、ルネサンス以降のフランスが持っていたディレッタンティズムの複合によって作られた、動力がぜんまいばねによる人形状のものを中心に説明する。また、表記は「オートマトン」「オートマータ」などが同様の意味で用いられるが、学術用語との区別がつきやすく「人形」の意味で使うケースが多い「オートマタ」とする。 オートマタの起源は人形の起源にまでさかのぼる。娯楽のためだけではなく宗教的な儀式などに用いられた人形や仮面のなかには部分的に可動するものもあり、操作することにより伝承などの効果的な補助として使われていた形跡がある[1]。こうした試みは、人間が自ら仮面をつけたり人形を操作するという動力によって動いていたが、機械的な仕掛けにより自動で動くという演出を付加することで、人形(ひとがた)信仰においてあたかも人形に魂が入っているかのように見せることができる。人形を作り、それが動く(動かす)というテーマはユダヤ教のゴーレムやギリシア神話のタロースでも明らかなように、人間にとっては根源的なテーマであり、創造主としての神への挑戦といった面も垣間見える[2]。 一方、オートマタのもうひとつの要素である機械仕掛けは、単に人形の稼動部分を人間が直接動かすという段階を経た後、古代ギリシアにおいてより洗練される。アルキメデスの螺旋や同時期に発明されたといわれる歯車、サイフォン、水力、滑車などの技術が生まれる。アレクサンドリアのヘロンが作ったといわれるコインを入れると水が自動で出る装置やビザンチウムのフィロン[注釈 1]により、シンプルな仕掛けであるが自動装置と呼べるものが作られた[5]。 13世紀にはいるとオートマタの基本的な技術要素であるカムシャフトが文献に現れる。この時期には時計の製造技術も飛躍的に向上した。決められた時間に鐘を鳴らす仕組みが考えられ[6]、その技術は教会に設けられた時計台の鐘を鳴らすオートマタに応用された[7]。それまで時を知らせるのは鐘つき男の仕事だったが、鐘つき男を模したジャックマール 15世紀にはゼンマイによる蓄積できる動力が発展していく。これによって時計の小型化が可能となり、職人の増加や市場の拡大が進んだ[10][14]。 オートマタの機械的な技術は、後にオルゴールに分類される自動演奏楽器の歴史にも大きなかかわりがある。現在ではカリヨンとよばれる大掛かりな仕掛けを伴う時計には、分類上はオルゴールに近い自動演奏装置が組み込まれ、教会の鐘を音程をつけて鳴らすために使われていた[15]。この原理は、シリンダーと呼ばれる円筒状の媒体に楔を打ち込み、その楔部分がスイッチとなって演奏情報に変換されるものであった[16]。このスイッチを空気の制御および鍵盤(音程)の高低の情報とし自動オルガンが作られた。楔は点でなく棒状にもできるため、空気を送り込む時間が、音符の長さとしても表現できるものであった。 楽譜による曲の情報の保存とともに、特定の演奏家の演奏を記録し再生する手段として、シリンダーを使った記譜法が考案された。1757年、アングラメル神父によって作られたもので、イタリア人演奏家によるチェンバロ演奏を、現代で言うカーボン紙のようなものを記録媒体とし、ゆっくりと回るシリンダーに巻きつけた紙に演奏情報が記録される仕組みとなっていた[17]。演奏終了後記録の通りに楔を打ち込み、自動演奏を可能にしたチェンバロにセットすると楔に対応してチェンバロの中の弦が鳴り、演奏を再現するという装置であった[18]。 これにより、ある一定の時間を反復させる動作をあらかじめひとつながりの命令として記録させ、毎回同じように実行するという、一種のマクロのシステムが生まれた。このシリンダー記譜法は自動楽器の開発や、楽譜以外の手段による楽曲の記録方法として当時の作曲家にも注目され、ヨハン・ゼバスティアン・バッハやヘンデルは自動オルガンや自動時計用の作品を作曲している[19]。それまで唯一の楽曲の保存・伝達手段は楽譜に限られており、曲情報の解釈は演奏者の個人にゆだねられることが多かった。
概要と呼称
歴史
発祥と背景
ゼンマイとオルゴール
自動楽器
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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