オーク(orc, ork)は、人間に似た架空の生物。 オーク族は、邪悪な勢力によって兵士使われる種族として、J・R・R・トールキンの小説群に登場した。架空の世界中つ国を舞台にした作品ら(『ホビットの冒険』、1937年刊;『指輪物語』1954?1955年刊)である。 のちに盤上RPGの元祖的存在である『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(1974年刊)や、その資料を通じて広く知れ渡り、ファンタジー系の文学や諸作品に多く登場するようになった。 トールキンは専門分野の古英語文学から、オーク(古英語: orc; 複数形:orcas)という怪物種族を取材した。具体的には1)《古英語語彙集》で「地獄の悪魔」や「巨人」と語釈されるオルクス/オーク、2)古英英雄詩『ベーオウルフ』に登場する「オーク骸」族(仮称)(orcneas)らを原典に挙げている。 後者はエルフ族や巨人族以外にもいるカインの末裔の仲間と詩中で歌われている種族である。直訳ならば「地獄骸」か「悪魔骸」族なので、(邦訳のように)「悪霊」族を充てるのは不十分、との指摘がある。ゲルマン文化でも信じられた死体返り術による、今風で言えばゾンビの一族を指したのではないかとの説が立てられている。 オークという怪物は、16世紀末には初期近代英語の文献にすでに登場した。『オックスフォード英語辞典』にも記載される。このうち狭義(第一義)のオークは「海の怪物(シーモンスター)」を指し、トールキンが自分の作品のオーク族と関係ないとしたが、広義(第二義)では「人食いの怪物、オーガ」すなわち陸棲の怪物の意味であり、語源にラテン語のオルクスや古英語の「地獄の悪魔」の関連性を可能としているので、無関係とはいえない。 オーク orc という古英語単語は、ラテン語のオルクス orcus(冥界神プルートーと同化された[1][注 2])からおそらく借用されたものである[2][3]。 ただし当時のキリスト教化された英国においては「邪神」というより「地獄の悪魔 hel-deofol 」であると解釈されており[1]、「巨人 tyrs 」の意としても使われていたことが、古英語語彙集に記載される[7][注 3] [注 4] 。 用例は[注 6]、『ベーオウルフ』第1節第112行 に「オーク骸」族(仮称)(複数形:orc-neas; 単数形::-ne[3])という複合語のかたちで見られ[9]、「悪しきモンスター」(英訳)[10]や「悪霊」(忍足訳)と解釈されている[11]。 「オーク骸」族はカインの末裔として巨人族やエルフ族などいくつかの種族とともに名を連ねている[注 7]。
概要
語源
古英語ラテン語 orcus の項と語釈[注 1]。?古英語語彙集(クレオパトラ写本)
古英語語彙集
古英雄詩ベーオウルフ『ベーオウルフ』。「エティン族(巨人)、エルフ族、オーク骸族のくだり[注 5]。