オリオン宇宙船
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この項目では、NASAの次世代有人宇宙船について説明しています。

原子力ロケットについては「オリオン計画」をご覧ください。

小型研究用ロケットについては「オライオン (ロケット)」をご覧ください。

人工衛星打ち上げ用固体燃料ロケットについては「オライオン (固体燃料ロケット)」をご覧ください。

アルゼンチンのロケットについては「オライオン (アルゼンチンのロケット)」をご覧ください。

オリオン

飛行中のオリオン宇宙船[1]
詳細
目的:貨物と乗員を国際宇宙ステーションへ輸送 [2]
乗員: 4人

打ち上げロケット: スペース・ローンチ・システム

初飛行: 2014年12月5日[3]
大きさ
全高:
直径:5 m (16.5 ft)
与圧部体積:19.55 m3[4]
居住部体積:8.95 m3
カプセル重量:8,913 kg (19,650 lb)
機械船重量:12,337 kg (27,198 lb)
総重量:21,250 kg (46,848 lb)
機械船推進剤重量:7,907 kg (17,433 lb)
性能
トータルデルタ-v:1,595 m/s
滞在期間:210日

オリオン(英語: Orion、またオライオンとも)は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) がスペースシャトルの代替として開発中の有人ミッション用の宇宙船である。

当初はCrew Exploration Vehicle(クルー・エクスプロレイション・ビークル、略称はCEV)と呼ばれていたが、2006年8月22日に、オリオン座にちなみ「オリオン」と正式に命名された。この宇宙船は国際宇宙ステーション (ISS) への人員輸送や、次期有人着陸計画(コンステレーション計画)への使用を前提に開発されていたが、2010年にコンステレーション計画が中止されたため、新たに「オリオン宇宙船」(Orion Multi-Purpose Crew Vehicle、略称はMPCV)として、ISSへの人員と貨物の輸送と回収に用途が変更されて開発が続けられている。その後、この機体は小惑星の有人探査にも使うことが表明された。オリオンの開発は、ロッキード・マーティンが行なっている。

2014年12月5日に無人試験機による初飛行が行われた[5]。2024年3月現在、有人での初飛行は2025年9月頃を予定している[6]
沿革
コンステレーション計画におけるオリオン「コンステレーション計画」も参照コンステレーション計画当時のオリオン(想像図)アレスIの打ち上げ(想像図)

コンステレーション計画において計画されていたオリオン宇宙船は、アポロ計画で使われた機体に近いカプセル形状をしている。この円錐形の司令船は、アポロが底面直径3.8mで定員3人であったのに対して、オリオンは底面直径5m(当初の計画では5.5mだった)、寸法は1.5倍、容積は3倍で、最大6人のクルーが生活できるとされた。定員はISSへの往復で6名、コンステレーション計画での月探査では4名を予定していた。アポロが完全使い捨てであったのに対し、オリオンは10回程度繰り返し使用する計画であった。

後部に連結される円筒形の機械船には、アポロ同様に月への往復に使用できるロケットエンジンを備え、燃料は液体酸素メタンが検討されていた。これは将来の有人火星探査において、火星大気中の二酸化炭素からメタンを現地生産することを考慮したものだが、採用は見直し中であった。また、ロシアソユーズ宇宙船と同様に、太陽電池パドルを設置することで、長期間の電力供給を可能にする予定であった。この太陽電池パドルは、ATK社のUltraflexが採用される[7]予定だったが、欧州宇宙機関 (ESA) の参加によって、ATK社に代わりESAがサービスモジュールの開発を担当することとなった。

コンステレーション計画における有人打ち上げ機 (Crew Launch Vehicle: CLV)、つまりオリオンの打ち上げ機には「アレスI」が使用される予定だった。アレスIは、開発コストを削減するため第1段にはスペースシャトル固体燃料補助ロケット (SRBs) を延長した物を、第2段にはサターンロケットで使われたJ-2エンジンを改良したJ-2Xエンジン1基を使用する予定となっていた。地球低軌道への打ち上げ能力はスペースシャトル並みの約25トンを計画していた。

一方、貨物(月着陸船)の打ち上げ機 (Cargo Launch Vehicle: CaLV) には、「アレスV」ロケットが用いられる予定だった。月探査時には先にアレスVでアルタイル月着陸船を地球の周回軌道上に投入してから、アレスIでクルーを乗せたオリオンを同じ軌道に投入し、両者が軌道上でドッキングし月に向かうことになっていた。アレスVの第1段のメインエンジンには、ボーイング社のデルタIVに使われているRS-68エンジン5基が、固体ロケットブースターには、5セグメント化されたスペースシャトルの固体ロケットブースター (SRB) 2基が、第2段にはJ-2Xエンジン1基が使用される予定だった。アレスVの地球周回軌道への打ち上げ能力は125トンで、アポロ計画のサターンVロケットに匹敵する規模であった。
開発スケジュール再設計されたオリオン宇宙船(想像図)アルテミス1号の打ち上げ

NASAは当初、2011年までに試作機を製作、早ければ2014年にも有人飛行を行うとしていた。しかし、2007年4月にスケジュールが見直され、オリオン宇宙船とアレスIの試作機は2013年、有人飛行は2015年以降に延期となった。これに伴い、開発費も39億ドルから43億ドルへ上昇した[8]

この延期によって、シャトルが退役する2010年(実際の退役は2011年になった)からアメリカの有人宇宙飛行に最低5年のブランクが生じる見込みになり、その間のISS滞在要員輸送手段はロシアのソユーズのみとなった(その後、ISSへのアメリカ人宇宙飛行士の輸送は、民間企業が開発する有人宇宙船に任せることに方針が変更された)。また、アレスVの初飛行は2018年以降になり、しかもアルタイル月着陸船の打ち上げが優先される予定だったので、ISSへの物資輸送も日本のHTV[9]やロシアのプログレスなどに頼ることになった。

2010年2月1日、オバマ大統領は2011会計年度の予算教書にて、サブプライムショック以降の財政悪化を理由にコンステレーション計画の中止を表明した。これによりシャトル後継機のオリオンとアレスロケット開発計画は白紙に戻った[10]

しかし同年4月13日、米政府が用途を国際宇宙ステーションの緊急脱出装置に変更した上でオリオンの開発を継続する方針を持っていることが明らかになり、同月15日にオバマ大統領がフロリダ州で公式に発表した[11]

2011年5月、NASAはオリオン計画を仕切りなおす形で、月や火星、小惑星への飛行を主眼に置いた多目的有人宇宙船 (Multi-Purpose Crew Vehicle: MPCV) の開発を発表した。NASAは当初、MPCVをオリオンをベースとした宇宙船、としていたが、後にオリオンの名前自体も受け継がれており、事実上オリオン宇宙船が復活した形となった[12]

2013年1月、NASAと欧州宇宙機関 (ESA) は、ESAがオリオンの開発に参加することを発表した。ESAは欧州補給機 (ATV) の技術を元に、オリオンのサービスモジュールを担当する[13]。このESM (European Service Module) は、エアバス・ディフェンス&スペース社が開発を担当する。長さ2.7m、直径4.5m、乾燥重量は3.5トンで、8.6トンの推進薬を搭載可能[14]

2014年12月5日には、無人試験機を打ち上げる初の試験飛行が実施された。


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