オペレーション・カー・ウォッシュ
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オペレーション・カー・ウォッシュ
(左から右、上から下)リオデジャネイロにある国営石油会社ペトロブラス本部。 ブラジルの連邦警察の紋章。 裁判官セルジオ・モロ、ロドリゴ・ジャノットとデルタン・ダラニョール。ブラジル連邦警察。 建設会社オデブレヒト社のロゴ
場所ブラジル及び南米11か国
日付2014年3月17日より
容疑贈賄、マネーロンダリング
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オペレーション・カー・ウォッシュ(: Operacao Lava Jato、: Operation Car Wash、日: 洗車場作戦〈せんしゃじょうさくせん〉)とはブラジルの連邦警察、初期はセルジオ・モロ裁判官、現在はガブリエル・ハルド裁判官らによる進行中の刑事捜査を指す[1]。南米史上最大の汚職事件とも言われる。ブラジルのルーラ元大統領[2]ディルマ・ルセフ元大統領にも捜査は及び、ルーラ元大統領は懲役刑に、ルセフ元大統領は罷免された[3][4]。ブラジル国内にとどまらず、アルゼンチンのクリスティーナ・フェルナンデス大統領、ペルーオジャンタ・ウマラ大統領ペドロ・パブロ・クチンスキ大統領らはいずれも弾劾、辞任に追い込まれた。ペルーの大統領候補だったケイコ・フジモリもブラジルの建設会社オデブレヒト(Odebrecht)を介して事件への関与が疑われ、逃亡のおそれがあるとして、2018年11月1日より予防拘留処置が取られている[5][6]。この捜査によって、大規模な汚職が明るみに出たことは、ブラジルで新たに右派ジャイル・ボウソナロ政権を誕生させる一因にもなった[7]

捜査開始当初のマネー・ロンダリング捜査は、国営石油会社ペトロブラス(Petrobras)が腐敗の疑いを隠蔽しようとして拡大した。ペトロブラス社は、幹部が実際よりも上積みした金額で契約を結ぶ代償として、建設会社から賄賂を受け取っていた。ガソリンスタンドと洗車場で外貨両替と送金サービスを利用して、不法支払いを行なっていたことが発覚したため、捜査は「Operacao Lava Jato(オペレーション・カー・ウォッシュ、洗車場作戦)」と名づけられた[8]。また国営石油会社に関わるスキャンダルのため、「Petrolao(ペトロラン)」と呼ばることもある[9]

捜査では、捜索、差押え、一時的および予防的拘留、司法取引による強制措置のためのおよそ1,000以上の令状が出され、総額300億レアルものマネーロンダリングが予想されている。目次

1 事件概要

2 捜査概要 - 「報酬ある共同作業」

3 ペトロブラス社への影響

4 ルーラ元大統領への捜査

5 ブラジル国外への影響

5.1 ペルー

5.2 ベネズエラ

5.3 その他


6 ブラジル連邦警察の日本人(Japones da Federal)

7 脚注

8 関連項目

事件概要

オペレーション・カー・ウォッシュは、中南米史上最大の汚職事件だと言われている[10][11]。 ラテンアメリカを中心に少なくとも11か国を巻き込み、ブラジルの建設会社オデブレヒトは深く関与していた。

これまで、ほとんど罰せられることのなかった政治家やビジネスリーダーたちにまで捜査の手が伸びたたこともあって、汚職事件は飛躍的な増大を見せた。現在では、許容されなくなった政治をめぐる経済システムの構造的腐敗が調査されており、刑事罰も生じている。 このような大胆な捜査は、労働党政権が自ら行なった司法制度改革の結果として可能となった(つまり、自らの改革の結果、自ら裁きを受けることとなった)。もし政府が2013年9月に独立検事総長を任命せずにおけば、洗車場捜査は起こらなかった可能性もあった[12]

裁判官セルジオ・モロの捜査は、一見捜査の手が及ばなそうな大物政治家、ルーラ元大統領やディルマ・ルセフ元大統領にも及んだ。この成功の理由は新たに導入された司法取引、 「報酬ある共同作業(rewarded collaboration)」と最初にビジネスマンを標的とする戦略を取り、政治家に対して彼らの証言を用いたことによるものだと言われている。
捜査概要 - 「報酬ある共同作業」

2008年、事件はビジネスマン、エルメス・マグナスが彼の会社である電子部品メーカーDunel社(Dunel Industria e Comercio)を通じて資金洗浄しようとした疑いに端を発した[13]。 捜査を続けることで、4つの大きな疑惑の輪が発覚した。捜査当局は最初の捜査で、4人の闇市場の為替投機家と国営石油会社ペトロブラスと契約を結んだアルベルト・ユーセフへの不適切な支払いに焦点を定めた。

アルベルト・ユーセフがペトロブラス社の元ディレクターだったパウロ・ロベルト・コスタのために自家用車レンジ・ローバーを購入したことを発見すると、調査はブラジル全土に拡大した[14]。コスタは疑惑の証拠を提供するように求められ、当局と合意した。 新たに採用された「報酬ある共同作業」(嘆願交渉)は容疑者が協力した場合の刑罰軽減を約束した。コスタの提供した証拠は、政党がいかにしてペトロブラス社を支配しているかを明るみに出した。

逮捕の波がおこった。実業家とロビイストでもあるフェルナンド・ソアレスは、与党の労働者党ブラジル民主運動党と主要なブラジル建設会社の間のパイプ役だったと言われている[15]。コスタとソアレスの後、2014年から2016年2月まで、検察との共同作業にさらに多くの合意が集まり、連邦検察当局は政治家やビジネスマンを中心とする179名の犯罪に対して37件の刑事訴訟を起こした。 2017年12月には約300名の犯罪告訴が起こされた。

オデブレヒト社の創設者の孫であるマルセロ・オデブレヒトは19年間の懲役刑を言い渡された[16]後、「報酬ある共同作業」の刑の軽減を理由に、他の幹部とともに目撃者として証言し、汚職計画についての全体的な情報を提供した(結果、彼は2年半ほどの懲役の後、出所している[17])。証言によれば、オデブレヒトは、ベネズエラのヒューゴ・チャベス元大統領やパナマのリカルド・マルティネリ元大統領へと違法な支払を行なうための秘密の支店をラテンアメリカ諸国に持っていた。オデブレヒトは12か国の関係者に総額でおよそ7億7800万ドルに上る贈賄を認めた後、ブラジル、スイス、米国の当局によって計26億ドルの罰金を課せられた[18]

検察はパウロ・ロベルト・コスタ、アルベルト・ユーセフと司法取引をし、捜査の範囲はブラジルの9大建設会社に拡大した。

ペトロブラスに関わっていたとされる政治家だけでなく、 2003年から2010年にペトロブラス委員会の長を務めるジルマ・ルセフ大統領も不法行為を否定した[19]。 2016年3月、ブラジル最高裁判所はルーラ元大統領を含む現在および過去の議員48人の調査を許可する判決を出した[9]


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