オペレーションズ・リサーチ
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オペレーションズ・リサーチ(英語: operations research、米)、オペレーショナル・リサーチ(英語: operational research、英[1]、略称:OR)は、数学的・統計的モデル、アルゴリズムの利用などによって、さまざまな計画に際して最も効率的になるよう決定する科学的技法である。
概要

複雑なシステムの分析などにおける意思決定を支援し、また意思決定の根拠を他人に説明するためのツールである。またゲーム理論金融工学なども OR の応用として誕生したものであり、OR は政府軍隊国際機関企業非営利法人など、さまざまな組織に意思決定のための数学的技術として使用されている。

OR の研究では、線形計画法(linear programing)、動的計画法、順列組み合わせ、確率、数理最適化および待ち行列理論、微分方程式、線形代数学などの数学的研究を踏まえて現実の問題を数理モデルに置き換える。そのことで、合理化された意思決定が可能となるだけでなく、定量的な問題についても最適化を行うことができる。近年は計算機を用いて煩雑な計算を実行する方法を研究することが多い。

また、OR は特定の領域の問題だけでなく幅広い領域に応用することが可能であり、学際的な研究分野であるとも言える。
歴史
初期の研究業績

現代の OR の研究は軍事的関心と経済的関心から行われているが、歴史的に OR の初期の頃の研究者は軍事的関心から研究を進めてきた。イギリスフレデリック・ランチェスター第一次世界大戦中に両軍の戦闘部隊の戦力が戦闘の結果とどのように関係しているかを研究してランチェスター方程式を確立した。同時期にロシアのM.オシポフも独自の研究によってオシポフ方程式を研究している。しかしながら、これらの研究は先駆的な研究ではあったものの、その価値が見出されて本格的に研究されるのは第二次世界大戦からであった。

戦間期においてもイギリスでは OR の発展が見られ、ルイス・フライ・リチャードソン線型方程式を第一次世界大戦の軍備拡張競争に応用する研究成果を挙げていたが、これも彼の著作が1950年に再出版されるまで広く知られることはなかった。またロシアではレオニード・カントロヴィッチは工場の生産性を増大させるために多種多様な原材料の配分、個々の機械的作業、供給者への発注などを数学的に解くことができるという革新的な OR 研究の方法を示したが、この研究も受け継がれることはなかった。
第二次大戦期の研究業績

第二次世界大戦が勃発すると OR はアメリカとイギリスの科学者たちによって組織的に研究されるようになり、イギリスのパトリック・ブラケットドイツ海軍潜水艦Uボート)が実施した群狼作戦の脅威に対処し、またイギリス本土の防空戦術を確立するための OR が研究された。

1941年にブラケットはロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメント (RAE) から海軍に移籍し、最初はイギリス空軍の沿岸司令部 (Coastal Command) で研究したのち、1942年にはイギリス海軍本部で研究した[2]。沿岸司令部オペレーショナル・リサーチ・セクション (CC-ORS) におけるブラケットのチームには、その後ノーベル賞を受賞することになる学者が二人含まれており、その他のメンバーもその後それぞれの分野で第一人者になっていくことになる優秀な面々がそろっていた[3]。彼らは戦争遂行にかかわる数多くの重要な分析業務に携わった。

たとえば当時、イギリスは輸送船の損害を抑えるために護送船団方式を採用していたが、これについて、商船に軍艦を随伴させるべきだという原則についてはだいたい意見が一致していたが、船団の規模の大小については意見の一致がなかった。船団はいちばん遅い船に合わせて移動するので、小さな船団の方が速力が速い。また、小さな船団の方がドイツ海軍のUボートに発見されにくいはずだという意見もあった。一方、多数の船団をまとめて大きな護送船団を組むようにすれば、それだけ多くの軍艦を護衛に付けることが出来る。ブラケットのスタッフは、船団の被害はその全船舶数よりも、むしろ護衛艦の数に大きく依存している事を示した。したがって、大きな護送船団を組んで船団の数を減らした方が、小さな護送船団を何度も出すよりも護衛しやすいというのが彼らの結論だった[4]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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