オゾン層破壊
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地球の大気の鉛直構造宇宙空間
約10,000 km
外気圏
800 km
熱圏
電離層
 (カーマン・ライン)(100 km)
80 km
中間圏
50 km
成層圏
オゾン層
11 km
対流圏自由大気
1 km
境界層
0 km
※高度は中緯度の平均 /


オゾン層(オゾンそう、: ozone layer、ozonosphere)は、地球大気の層の一つ。
定義

地球大気中でオゾンの濃度が高い部分のことである[1]。オゾンは、高度約10?50 kmほどの成層圏に多く存在し[2]、特に高度約25 kmで最も密度が高くなる[1]

一般的には、大気中のオゾンの9割が存在する成層圏の高濃度オゾン帯を指し、高度10?50 km付近とされる[3]。以下、いくつかの定義を挙げる。
高度10?50 kmの成層圏
国連環境計画 (UNEP) のQ&A集[4]、およびそれを基に作成された環境省の資料[3]など
高度15?60 km
アメリカ気象学会の用語集による[5]
大気境界層(高度約1 km)より上の大気オゾンの層
オゾン層の保護のためのウィーン条約[6]

ちなみに、オゾン濃度が最も高いのは高度20 km付近で、1立方センチメートル (cm2) あたり約1013個(= 10兆個)のオゾン分子が存在する。また、オゾンの混合比(乾燥空気に対する質量比)が最も高いのは高度30 km付近で、9?10 ppmである[5]
オゾン層の発見

1839年スイスの化学者クリスチアン・シェーンバインがオゾンを発見し、その特有の臭いから、ギリシャ語で "臭い" を意味する "ozein" に基づいて命名した。1879年マリー・アルフレッド・コルニュ太陽光スペクトル観測において、300 nm付近より短い波長の紫外線が地表付近で観測されず、大気による紫外線の遮蔽があることを発見した。1881年アイルランドの化学者ウォルター・ハートレイは、実験室内で300 nmより短い波長の紫外線がオゾンにより強く吸収されることを発見し(ハートレー帯吸収)、大気による紫外線隠蔽の原因はオゾンであると提案した。1913年ジョン・ウィリアム・ストラット(レイリー卿)は下層大気では紫外線の吸収が無いことを発見した。そして、同1913年には、シャルル・ファブリとアンリ・ビュイソンの2人のフランス人科学者によって「オゾン層」の存在が発見された。1920年には、ゴードン・ドブソンが科学的測定によってオゾン層の存在を証明した[7][8][9]
オゾンの発生高度(縦軸:km)とオゾン濃度(横軸:ドブソン単位)のグラフ。地上付近の高濃度帯は光化学スモッグの影響を反映したもの。縦長の帯は各波長帯における紫外線の透過度。

成層圏内では、酸素分子が、太陽からの242 nm以下の波長の紫外線を吸収して光解離し、酸素原子になる反応が進行する。この酸素原子が酸素分子と結びついてオゾンとなる。また生成したオゾンは320 nm以下の波長を持つ紫外線を吸収し、酸素分子と酸素原子に分解するという反応も同時に進行する(反応式のMは主に窒素や酸素の分子で、反応のエネルギーを受け取るという役割をしている)。
オゾン生成のプロセス

各反応素過程は以下の4つの式で示される。h はプランク定数で、hν は振動数 ν の光の光子が持つエネルギーを表している。(それぞれの式における ν は、酸素分子やオゾン分子の吸収帯に対応する太陽からの紫外線の振動数に当たる。)
自然界でオゾンを生成する唯一の反応
O   + O 2   + M ⟶ O 3   + M {\displaystyle {\ce {O\ + O2\ + M -> O3\ + M}}}
生成したオゾンは紫外線を吸収して解離
O 3   + h ν ⟶ O   + O 2 {\displaystyle {\ce {O3\ + h\nu -> O\ + O2}}}

上記2式の反応速度は非常に早く、O? と O は平衡状態にあり、両者の和である奇数酸素 Ox = O? + O は変化しない。Ox を変化させる次の2つの反応は、比較的ゆっくりと進む。
生成反応
O 2   + h ν ⟶ 2 O {\displaystyle {\ce {O2\ + h\nu -> 2O}}}
分解反応
O   + O 3 ⟶ 2 O 2 {\displaystyle {\ce {O\ + O3 -> 2O2}}}

この反応のメカニズムは1930年チャップマンによって考え出され、チャップマン機構と呼ばれる。大気中のオゾンは、その90%以上が成層圏に存在し、オゾン層では濃度は2?8 ppmと、地表の0.03 ppmと比較すれば非常に高い。

酸素分子の密度は、空気の密度に比例するので高度が高くなるほど低くなる。他方、酸素分子が吸収する紫外線は、太陽入射光の強度に比例するため高度が高いほど強い。オゾン生成はこれら高さと共に増大する量と減少する量の両方に依存するので、オゾン密度はある高度で極大となり、成層圏中部の20?30 km付近がそれにあたる[9]
オゾンの輸送と分布

オゾンは主に、日射量の多い赤道上の熱帯成層圏下部で最も活発に生成されている。生成されたオゾンは赤道から両極に向かうブリューワー・ドブソン循環によって高緯度の成層圏に運ばれるので、中?高緯度地域の方が熱帯地域よりもオゾンが多くなる。

ブリューワー・ドブソン循環は成層圏下部にあたる高度20 km付近で1年中続いているため、オゾン輸送は年中途切れない。しかし、冬に当たる成層圏には極付近に極渦というジェット気流帯があり、その南北をまたぐ熱や物質の輸送が起こりにくいので、熱の輸送が遮断されて低温になり、南極では冬の間に大量の極成層圏雲 (PSC) が生成される。春?初夏にかけて、この氷の雲が融解すると同時に塩素原子が大量に発生する。PSCの表面ではオゾンの分解反応が促進され、オゾン濃度が急低下し春季にオゾンホールが発生する主因となる。一方、北極ではロスビー波の影響で極渦が南北に乱されるため、PSCの生成に至るほど気温は低下せず、オゾン濃度の低下も起こりにくい。
オゾン層の役割

オゾン層は、太陽からの有害な波長の紫外線の多くを吸収し、地上の生態系を保護する役割を果たしている。

紫外線は波長によってUV-A (400?315 nm)、UV-B (315?280 nm)、UV-C(280 nm未満)に分類される。最も波長が短く有害なUV-Cは大気中のオゾン分子や酸素分子によって完全に吸収され、地表に届くことはない。UV-AとUV-Cの中間の波長を持つUV-Bは、そのほとんどがオゾン層によって吸収されるが、その一部は地表に到達し、皮膚炎症皮膚がんの原因となる。最も波長の長いUV-Aは、大半が吸収されずに地表に到達するが、有害性はUV-Bよりも小さい。UV-Aは、しわやたるみの原因になる。「紫外線」も参照
ドブソン単位詳細は「ドブソン単位」を参照


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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