オクシデンタリズム(Occidentalism)または逆オリエンタリズム(ぎゃくオリエンタリズム、reverse Orientalism)[1]とは、西洋精神・西洋文化、西洋風、西洋趣味、西洋気質[2]、西洋かたぎ、西洋崇拝を指す語[3]。または、西洋の文化・言語・人々に関する学究的な知識を指す語[4]。オリエンタリズムの片割れに当たる[5][注釈 1]。「オクシデンタリスト」(Occidentalist)は西洋通、欧化主義者[10]、西洋文化愛好者(研究者)の意味[11]。
オクシデンタリズムは「反西洋思想」とも訳される[12]。 著作家兼バード大学教授イアン・ブルマ、およびヘブライ大学名誉教授アヴィシャイ・マルガリートの研究書『反西洋思想』(Occidentalism)によれば、「オクシデンタリズム」(反西洋思想)は、西洋の「敵」によって描かれる「非人間的な西洋像」を指す[13]。これは「殺人的な憎悪」であり、特定の政策や国家にではなく、特定の生き方・社会・政治の在り方(大都会・貿易・商業・懐疑主義・個人の自由等)に向けられる[14]。ただしオクシデンタリズムは、「凶暴な憎悪と強い憧れがいかに密接に繋がっているか」を示してもいる[15]。 単なる西洋文化への嫌悪感や、西側諸国の政策に対する考察・評論はオクシデンタリズムではない[14]。「オクシデンタリズム」はオリエンタリズムの双子の片割れに当たるもので、正当な西洋研究とは異なる[5]。何故ならオリエンタリズムに見られる、人間から人間らしさを取り除こうとする傾向が、オクシデンタリズムの中にもあるためである[16]。オリエンタリズム的偏見の中には、非西洋人は完全な人間ではなく未成熟的で、自分たちよりも劣った人種として扱えるという前提があった[16]。オクシデンタリズムもオリエンタリズムと同様、相手を人間未満に過小評価する傾向があり、オリエンタリズムをそのまま鏡で逆写ししたものと言える[16]。 ブルマとマルガリートの『反西洋思想』について、『エコノミスト』や『ニューヨーク・タイムズ』は絶賛した[17]。また『ニューヨーク・タイムズ』は、オクシデンタリズムについて 「この道はイスラムへ戻っているのではなく、実際は、西洋自身へ戻っている」 と要約した[18]。 オクシデンタリズムは、資本主義(capitalism)、マルクス主義(Marxism)、その他の諸々の主義(ism)と同じく、ヨーロッパで生まれ、その後に非西洋世界へと移動していった[13]。西洋は啓蒙主義の源であり、世俗的・リベラルな思想を生み出していったが、同時に反動的で有害な思想をも生み出してきた[13][注釈 2]。思想史的・歴史的には、オクシデンタリズムはヨーロッパの反宗教改革や反啓蒙主義 西洋に対する国家主義的・土着主義
概要
("The path does not lead back to Islam but, in fact, back to the West itself.")
経緯
ブルマとマルガリートが突き止めたところでは、そうした反抗の由来はドイツロマン主義にある。また、19世紀ロシア帝国での西洋化主義者とスラヴ主義者との論争や、シオン主義(シオニズム)・毛沢東思想・イスラム主義(イスラム教)・帝国的日本国家主義のイデオロギーに現れている論も同根である[21]。
オクシデンタリズムにおける「西洋」イメージ「資本主義社会(市民社会)」、「自由主義(リベラリズム)」、「近代化」、「ブルジョア革命(市民革命)」、「啓蒙主義」、「合理主義」、「世俗主義」、「人権宣言」、「フランス革命」、および「アメリカ独立革命」も参照
オクシデンタリズムの敵意が向けられる矛先は、次のようになっている[22]。
敵意が向けられる対象対象のイメージ
「都市」「尊大、貪欲、軽薄で退廃的な根無しのコスモポリタニズム(世界主義)に彩られた」都市
「ブルジョア階級」「自らを犠牲にする英雄とは正反対に、自己保身に走る」階級
「西洋的考え」「科学と理性に裏付けられた」考え
「不信心者たち」「純粋な信仰世界のために倒されなければならない」者たち
オクシデンタリズムの土台