オキソ酸(オキソさん、Oxoacid)とは、何らかの原子にヒドロキシ基 (-OH) とオキソ基
(=O) が結合しており、かつ、そのヒドロキシ基がプロトンを供与できる化合物を指す[1]。ただし、無機化学命名法に関してIUPACが1990年に行った勧告のオキソ酸の定義では、先述した化合物の他にアクア酸 (aqua acid)[2] 、ヒドロキソ酸 (hydroxoacid)[3] も、オキソ酸に含まれる。「ブレンステッド酸」も参照オキソ酸が脱水縮合して、ポリオキソ酸
が生成する場合が有る。例えば、リン酸では、二リン酸、三リン酸が見られる。酸無水物も同様に、オキソ酸の脱水縮合生成物に当たる。遷移金属元素のオキソ酸は、金属オキソ酸(ポリ酸)と呼ぶ。オキソ酸には、様々な種類が存在する。無機化合物のオキソ酸の例としては、硫酸や硝酸、リン酸などが挙げられる。さらに、有機化合物の中にもカルボン酸のようなオキソ酸が存在する。酸塩基反応においてオキソ酸は、一般に、多原子イオンとプロトンを与える。ただし、酸としての強弱は、化合物の種類により様々である。 単核オキソ酸の酸性度の強さを推定する2つの経験則として、ポーリングの規則(Pauling's rules)が知られている。 ただし、この規則に従わないオキソ酸も存在する。例えば炭酸の推定値は3だが、実測値は6.4である。これは水溶液中に溶けている二酸化炭素のうち、僅かしか炭酸にならないためである。これを考慮に入れるとpKa値は規則通り約3.6である。 CO 2 + H 2 O ↽ − − ⇀ H 2 CO 3 {\displaystyle {\ce {CO2 + H2O <=> H2CO3}}} H 2 CO 3 ↽ − − ⇀ H + + HCO 3 − {\displaystyle {\ce {H2CO3 <=> H^+ + HCO3^-}}} また、亜硫酸は見かけ上のpKaが1.9と一見して規則に従っているかのような値を示す。しかし、実際には規則に従っていると言えない。これはSO2水溶液中に亜硫酸分子が検出されず、さらに二亜硫酸イオンを生成するなど複雑な、化学平衡を持っているからである。 SO 2 + H 2 O ↽ − − ⇀ H + + HSO 3 − {\displaystyle {\ce {SO2 + H2O <=> H^+ + HSO3^-}}} 2 HSO 3 − ↽ − − ⇀ S 2 O 5 2 − + H 2 O {\displaystyle {\ce {2HSO3^- <=> S2O5^2- + H2O}}}
ポーリングの規則
中心元素 E のオキソ酸の化学式が EO<m(OH)n で表される場合に、酸解離定数 Ka は次の関係式で表される。 p K a = − log K a ≈ 8 − 5 m {\displaystyle {\mbox{p}}K_{a}=-\log K_{a}\approx 8-5m}
n>1の酸の逐次酸解離のpKa値は、プロトン解離が1回起こる毎に5ずつ増加する。
オキソ酸の一覧
ハロゲンオキソ酸
次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸
次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸
次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸
ホウ酸
炭酸
オルト炭酸
カルボン酸
ケイ酸
亜硝酸
硝酸
亜リン酸
リン酸
ヒ酸
亜硫酸
硫酸
スルホン酸
スルフィン酸
クロム酸
二クロム酸
過マンガン酸
タングステン酸
脚注[脚注の使い方]^ ⇒IUPAC Gold Book - oxoacids
^ 中心金属イオンに配位した水分子が、プロトンを供与できる化合物。例:ヘキサアクア鉄(III)イオン
^ 隣接するオキソ基が存在せず、ヒドロキシ基がプロトンを供与できる化合物。例:オルトケイ酸 (H4SiO4)
関連項目
オキソアニオン
過酸
ヒドロキシ酸