オウム真理教の修行
[Wikipedia|▼Menu]

オウム真理教の修行(オウムしんりきょうのしゅぎょう)では、オウム真理教で行われていた修行について解説する。
概要

当初は、専らヨーガの手法を用いた修行が行われていた。その後、本来「加入礼」を意味する宗教用語であった「イニシエーション」という言葉を、オウム独自の「解脱者のエネルギーを伝授することで弟子を成就、解脱させる」という意味で使う[1]ことで信者を増やしていった。

しかし一方で、麻原彰晃は「ヴァジラヤーナの実践」「シークレット・ワーク」などと呼ばれた反社会的活動を「修行の一環、功徳を積む行為」[2]などと正当化し「第三次世界大戦を回避するため三万人の成就者を出す」「ハルマゲドンが起きる1997年までに修行を完成させなければならない」[3]などと終末思想を煽り、そして「ヴァジラヤーナの妨げとなる弟子の中の『観念』を崩す、すり替える、消し去る」[4]。つまり修行の妨げになるからという名目で麻原の考えや反社会的活動に反抗する意志や能力を信者から奪うための様々な洗脳施策を取るようになった。

なお、オウムで頻繁に行われた「観念崩し」という修行は自己啓発セミナーから影響を受けており、ロバート・ホワイトが1977年に設立した「ライフ・ダイナミックス」の流れを汲むトレーナーを、オウムの女性幹部が数千万円でスカウトしようとしていた[5][6]

1994年前後には違法薬物や機械によるイニシエーションが始まり、イソミタールチオペンタールによる催眠状態を利用して潜在意識へ教義を刷り込む「バルドーの悟りのイニシエーション」(ナルコ)、また、LSD幻覚作用覚醒剤の薬理作用などを利用して「神秘体験」を誘導する「キリストのイニシエーション」「ルドラチャクリンのイニシエーション」が大掛かりに行われた。そして最終的には電気ショック療法を悪用して記憶を消す「ニューナルコ」まで行われるようになった。麻原はこのような機械的な修行を「完全他力本願しかない」といって奨励した[7]宮台真司は脳内物質さえ満足すれば良いというテックの奴隷の例としてオウムを挙げている[8]

薬物や電気ショックという手法まで駆使したため、他のカルトと異なりオウム真理教の教えは潜在意識のレベルにまで浸透しており[9]、その事が教団からの脱会をより困難にしている。
修行
アーサナ
ヨーガの体操。
プラーナヤーマ
ヨーガの呼吸法。
ムドラー
気がよく流れるようにする行法[10]
クンバカ
息を数分間止める修行。水の中に潜る「水中クンバカ」やその変形「水中エアータイトサマディ」などがある。「水中クンバカ大会」も何度か開催された。オウム最高記録は14分[11]TBSなどの取材陣を前にして5分30秒間潜った井上嘉浩に対し麻原は「何怖がってるんだよ」と発言していたが、当の麻原は「毒ガスが入っていた」と言い訳しクンバカ実演を拒否して逃亡した[11]TBSビデオ問題も参照。
ガージャガラニー
塩水を飲んで吐き出し胃を洗う修行[12]
ダウティ
布を飲み込む修行。
ダルドリー・シッディ
いわゆる空中浮揚(座禅ジャンプ)現象のこと。自分の意思で行っているのではなく、クンダリニーのエネルギーが上昇して起こるとされていた[13]結跏趺坐(座禅の際に行う両足を互いの太腿部にかける脚の組み方)をしていても、反動をつけて下半身の力でジャンプすることは出来るのだが、一般の人間には身体の柔軟性の問題でこのような脚の組み方自体がなかなか出来ないため、こういったことを知らずに、麻原彰晃のダルドリー・シッディとされる写真について、本当に空中浮揚をしているのか、しばしば本気で話題にする人もいたという。広瀬健一によると「(力学的な)データをみせてもらったが明らかに脚の力で跳んでいた」とのこと。反オウムの弁護士滝本太郎は麻原より高く跳んでみせて脱会者をつくっていたためサリンで殺されかけた(滝本太郎弁護士サリン襲撃事件)。この他江頭2:50も跳んでいる[14]。オウムを脱会して「ひかりの輪」を作った上祐史浩も、のちに、この写真は麻原がジャンプしているだけの写真であることを認めている[15]
マハームドラー
弟子にわざとやりたくないことをさせて、帰依を試す修行[16]。グル麻原への盲従を正当化するために用いられた[17]林郁夫によると、村井秀夫は、地下鉄にサリンをまく指示を出した際に「これはマハームドラー(麻原のいう第一段階の解脱)の修行なんだからね」と言い、それを聞いた林は「サリンをまくことはヴァジラヤーナのポアの実践なのだ」と考え「この指示からは逃げられない、やらなくてはならない」と判断したという[18]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:107 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef