オイラト語
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オイラト語

??рд келн [??rt kel??n]
話される国
ロシア
モンゴル
中華人民共和国
地域中央アジア
話者数518,500人
言語系統モンゴル語族[1][2]

東モンゴル諸語[1][2]

オイラト・ハルハ諸語[1][2]

オイラト・ハルハ・ダルグート諸語[1][2]

オイラト語




表記体系キリル文字(ロシア)
ラテン文字1930年 - 1938年ロシア
トド文字(中国)
公的地位
公用語 カルムイク共和国
言語コード
ISO 639-2xal
ISO 639-3xal
消滅危険度評価
Definitely endangered (Moseley 2010)
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オイラト語(オイラトご、??рд келн)は、オイラト系諸部族によって話される言語であり、アルタイ諸語モンゴル語族に分類される。話者はロシア連邦カルムイク共和国モンゴル国西部、中国新疆ウイグル自治区青海省甘粛省に分布しており、書き言葉としてはカルムイク共和国で用いられるカルムイク語(ru、zh、en)、中国新疆ウイグル自治区で用いられるオイラト文語が存在する。Redbookに載る危機言語
名称

オイラット語などとも表記される。カルムイク共和国で用いられているオイラト語を限定してカルムイク語ということもある。中国語では衛拉特語/?拉特?(注音: ??? ?? ?????、.mw-parser-output .pinyin{font-family:system-ui,"Helvetica Neue","Helvetica","Arial","Arial Unicode MS",sans-serif}.mw-parser-output .jyutping{font-family:"Helvetica Neue","Helvetica","Arial","Arial Unicode MS",sans-serif}?音: Weil?tey?)と呼ぶ。
話者分布

オイラト語の主な話者はロシア連邦カルムイク共和国モンゴル国西部(ホブド・アイマク及びオブス・アイマク)、中国新疆ウイグル自治区青海省甘粛省に暮らしているオイラト族である。

カルムイク共和国の人口の半数はカルムイク人が占めている。彼らは1630年代内戦を避けてボルガ川流域に移動したオイラト族トルグート部の末裔である。ロシア連邦においてオイラト族とオイラト語はひとつの民族、ひとつの言語とみなされ、カルムイク人、カルムイク語と呼ばれる。カルムイク共和国においてオイラト語はロシア語と並ぶ公用語であり、キリル文字による書き言葉を持っている。

モンゴル国と中国では、オイラト族はモンゴル民族に含まれ、独立した一つの民族としてみなされていない。しかし、元来オイラト族の文化、習慣などはモンゴル民族と違いがある。オイラト語も行政上それぞれの国における標準語(モンゴル国ではモンゴル語のハルハ方言、中国ではモンゴル語のチャハル方言を標準語の基礎としている)に対する方言とされており、実際それぞれの標準語の影響を受けた中間的な言語(または方言)に変質している。モンゴル国及び中国のオイラト語話者は書き言葉としてはそれぞれの標準語を用いるが、唯一新疆ウイグル自治区のオイラト族は1648年モンゴル文字を基に作られたトド文字を用いたオイラト語の書き言葉、すなわちオイラト文語を用いる。現在学校機関におけるオイラト文語の教育はなくなり、モンゴル文字によるモンゴル語の文語が学ばれるようになっているが、新聞、雑誌、書籍などでは現在もオイラト文語が使用されている。

地域文語(文字)口語標準語
カルムイク共和国カルムイク語(キリル文字)カルムイク語
中国新疆ウイグル自治区オイラト文語(トド文字)
中国青海省、甘粛省

オイラト語派はRedbookに載る危機言語であり、街中でも聞くことはまれである。ロシア構成共和国であるカルムイク共和国の首都にあるカルムイク大学にはカルムイク語・文化学科がありオイラト語を教える学生を育ててはいるが、彼らの普段の会話からもオイラト語を聞くことはまれというのが21世紀初めの状態である。

カルムイク共和国、モンゴル国、中国におけるオイラト語は文化的に一つの言語圏をなしてはおらず、発音・文法・語彙の面において差異が認められ得る。
標準語と方言

オイラト語の標準語を定めているのはカルムイク共和国のみであり、モンゴル国及び中国(内モンゴル)の影響で、オイラト語はモンゴル語の方言とみなされているため標準化されていない。カルムイク共和国のオイラト語標準語は基本的にトルグート方言(フランス語版、英語版)に基づいているが、ドルベト方言の要素も含まれている。

カルムイク共和国の主要な方言はトルグート方言とドルベト方言である。この二つは音声と語彙にわずかな差が見られる。
モンゴル文語の第二音節以降の-ayi-, -oyi-に対してトルグート方言では/a?/が、ドルベト方言では/a?/が相当する。

トルグート方言の第一音節でb, mに先行する母音/u, y/がドルベト方言では/o, o/となる。

ドン川流域のカルムイク語をブザワ方言として一つの方言とみなすことがある。上記1.の特徴はトルグート方言に一致するが、そのほかの面ではドルベト方言に一致する。

その他の地域の方言は調査が不十分であり、詳しい分類は行われていない。




ブザワ方言 Buzawa (xal-buz)

ドルベト方言 Dorbot (xal-drb)

オイラト方言 Oirat (xal-oir)

Sart Qalmaq (xal-sar)

トルグート方言 Torgut (xal-tor)

音韻

ここではカルムイク共和国におけるオイラト語、すなわちカルムイク語の音韻について述べる。
母音

カルムイク語の短母音には/a, o, u, a, o, e, y, i/の8つがある。

前舌後舌
非円唇円唇非円唇円唇
и/i/?/y/у/u/
中е/e/?/o/о/o/
?/a/а/a/

短母音は第一音節においては8つが音素として区別されるが、第二音節以降では単一の音素/?/に中和される。長母音はそれぞれの短母音に対応する形で/a?, o?, u?, a?, o?, e?, y?, i?/の8つが音素として存在する。二重母音は存在せず、モンゴル文語のayi, uyi, oyiには/a?, y?, o?/が対応する。
母音調和

母音は短・長に関係なく後舌母音/a, o, u/と前舌母音/a, o, e, y, i/に分類される。第一音節の母音が後舌母音である場合、第二音節以降の長母音は/a?, u?, i?/のいずれかに限定され、第一音節の母音が前舌母音である場合、第二音節以降の長母音は/a?, o?, i?/のいずれかに限定される。第二音節以降の短母音は音素としては一つに中和されるため、母音調和とは無関係である。また、モンゴル語ハルハ方言などでは、円唇母音/o, ?/の後で/a?, e?/がそれぞれ/o?, ??/に同化されるという前進的円唇化が起こったが、オイラト語においては前進的円唇化が起こらなかったため、母音調和の構造が比較的単純である。

第一音節の母音第二音節以降の長母音
a, a?
o, o?
u, u?a?, u?i?
a, a?
o, o?
e, e?
y, y?
i, i?a?, y?

このような母音調和は一つの形態素内のみにとどまらず、接尾辞まで及ぶ。そのため、接尾辞のなかには/a/~/a/及び/u/~/o/の母音交替による異形態を持つものが多い。
子音

両唇歯茎口蓋化歯茎軟口蓋口蓋垂
破裂音無声п/p/т/t//t?/к/k/
有声б/b/д/d//d?/г/g/
摩擦音無声с/s/ш/?/х/χ/
有声з/z/?/?/
破擦音無声ц/ts/ч/?/
有声?/?/
鼻音м/m/н/n/?/?/
震え音р/r/
側面音л/l//l?/

/b/は語頭及び/m/の直後では[b]、語中・語末では摩擦音として現れ無声子音の前では[?]、それ以外では[β]となる。
表記トド文字で書かれたカルムイク語による主の祈りの一節。(1870年

元来、オイラト族には文字は無く、モンゴル帝国時代にモンゴルに支配された時期、モンゴル文語を用いていたが、1648年にザヤ・パンディタがモンゴル文字を改良したトド(托?)文字を考案してからは、トド文字によって書き表されるオイラト文語を書き言葉とした。


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