エーベルス・パピルス(Ebers Papyrus)は、紀元前1550年頃に書かれたエジプト医学パピルスである。古代エジプト医学について記したパピルスとしては、最も古く、最も重要なものである。1873年から1874年の冬に、ルクソールでゲオルグ・エーベルスによって購入された。現在はドイツのライプツィヒ大学図書館に収蔵されている。 このパピルスは紀元前1500年頃に書かれたものだが、紀元前3400年頃に遡るより以前の文章を書き写したものだと考えられている[3]。110ページあり、長さは約20mである[1]。Kahun Gynecological Papyrus(紀元前約1800年)、エドウィン・スミス・パピルス(紀元前約1600年)、Hearst papyrus(紀元前約1600年)、Brugsch Papyrus(紀元前約1300年)等と並び、エーベルス・パピルスは、現在まで伝わる最も古い医学文書の1つである。Brugsch Papyrusにはエーベルス・パピルスと共通する記述もあり、エーベルス・パピルスの文章の意味を明確にする手助けにもなっている。 エーベルス・パピルスはヒエラティックで書かれ、古代エジプト時代の医学知識を現代に伝える最もボリュームのある文書になっている。この中には、700程の魔法の調合法や治療薬が記されている。また病気の原因となっている悪魔を退散させる多くの呪文についても記されている。また、心臓についての「論文」も含まれ、心臓は体内の血液供給の中心に位置し、血管で全身の器官と繋がっていることが記されている。エジプト人は腎臓についてはほとんど知らず、心臓は血液、涙、尿、精液等の全ての体液を運ぶ管が集まる場所と捉えていたと考えられる。Book of Heartsと呼ばれる章には、うつ病や認知症のような精神障害についての記述が詳細に書かれている。これらの記述は、エジプト人が精神と肉体の疾患を同じように捉えていたことを示唆している。他にもエーベルス・パピルスには、避妊法、妊娠の診断等の婦人科医学、消化器疾患、寄生虫、眼病、皮膚病、虫歯、膿瘍や癌の外科手術、接骨、火傷等についての章もある。 エーベルス・パピルスに書かれた治療薬には、次のようなものがある。 様々な疾患の共通の治療薬として書かれているものに、黄土がある。例えば、様々な消化器疾患[5]や眼病[6]に処方される。また泌尿器疾患 エドウィン・スミス・パピルスと同様に、エーベルス・パピルスは1862年にエドウィン・スミスによって所有された。パピルスの出所は分かっていないが、テーベの共同墓地にあるアサシーフ
文書
医学知識
治療薬エーベルス・パピルスの気管支喘息に関する記述
気管支喘息
気管支喘息の患者には、れんがで温めたハーブのミックスの煙を吸入させる。
胃
胃痛の患者の胃を空にするためには、牛乳 1:穀物 1:蜂蜜 1で混ぜたものをすり潰し、ふるい、加熱し、4度に分けて与える。
腸
腹痛の治療薬は、シナガワハギ
癌
癌に対しては、「何もしないこと」が推奨されている。
服飾
服飾にネコの脂肪を添加することで、ネズミやラットから身を守ることができる。
死
タマネギ半分とビールの泡は、「死に対する治療薬」だと考えられていた。
メジナ虫症 ⇒[1]
メジナ虫症には、虫の新しいほうの端を枝の周りに覆い、ゆっくりと押し出す(3500年後もこの方法は標準的な治療法である[4])。
黄土粘土の利用
近代の歴史
出典^ a b Ludwig Christian Stern (1875). Ebers G
^ United States National Library of Medicine|U. S. National Medical Library at the National Institutes of Health.
^ a b ⇒Mysticism and Urology in Ancient Egypt, by Jennifer Gordetsky, MD(PDF file)
^ Uniformed Services University of the Health Sciences. “ ⇒Dracunculiasis”. Tropical Medicine Central Resource. 2008年7月15日閲覧。
^ ⇒PAPYRUS EBERS, 1937 translation.
^ Recipes for Treating the Eyes: Papyrus Ebers
参考文献
Pommerening, Tanja, "Altagyptische Hohlmasse Metrologisch neu Interpretiert" and relevant pharmaceutical and medical knowledge, an abstract, Phillips-Universtat, Marburg, 8-11-2004, taken from "Die Altagyptsche Hohlmasse" in studien zur Altagyptischen Kultur, Beiheft, 10, Hamburg, Buske-Verlag, 2005
Scholl, Reinhold, Der Papyrus Ebers. Die groste Buchrolle zur Heilkunde Altagyptens(Schriften aus der Universitatsbibliothek 7), Leipzig 2002; ISBN 3-910108-93-8.
関連項目
古代エジプト
ヒエラティック
医学史
エドウィン・スミス・パピルス
ゲオルグ・エーベルス
外部リンク
⇒PAPYRUS EBERS, 1937 translation by B. Ebbell
1889 German edition from the Internet Archive
⇒Brief note of Ebers and the papyrus
⇒Univ. of Leipzig's catalog description (in German), photograph
⇒Indiana University: Medicine in Ancient Egypt