エヴァルト・ヘリング(Karl Ewald Konstantin Hering, 1834年8月5日 - 1918年1月26日)は、ドイツの生理学者、神経科学者。ザクセン王国で生まれ、ライプツィヒ大学で学んだ。のちに、プラハ大学の教授に就任した。
ヘリングは色覚についての研究を行い1878年に反対色説を発表した[1]ことでで知られるほか、1861年にはヘリング錯視を、1868年にはヨゼフ・ブロイウェルとともにヘーリング・ブロイウェル反射を発表した。
息子にはツェルマク・ヘーリング反射を発見したハインリッヒ・エヴァルト・ヘリング、おじに医師のコンスタンティン・ヘリング、祖父に構成者のカール・ゴットリープ・ヘリング、門下には呉建がいる。 ヤング=ヘルムホルツの三色説では「色は赤・緑・青の3要素の刺激の比率に応じて知覚される」としていたが、ヘリングは三色説では「赤と緑の混色」だとする黄は赤とも緑とも全く異なるとし、黄は混色ではなく独立した色だと考えた[2][3]。網膜には対となる「赤-緑」「黄-青」に反応する視物質
反対色説
色はそれらの3対の網膜視物質の光化学反応によって知覚されるとしており[4]、その光化学反応は「同化」と「異化」と呼ばれる[2]。例えば「紫」を示す光が網膜に当たったとき、「赤-緑物質」は同化によって赤を生じ、「黄-青物質」は異化によって青を生ずることで、「紫」が知覚される[2]。なお明るさは中間であることから、「白-黒物質」は同化と異化が同時に起きる[2]。白色光の場合は「白-黒物質」は同化、「赤-緑物質」「黄-青物質」はともに同化と異化が同時に起きる[2]。この理論により順応・対比・補色残像などを説明することが可能である[4][5]。
これを反対色説(Opponent process)、または4つの色を基本としていることから四色説、あるいはヘリングの色覚説と呼ぶ[1][2]。また、この説における4つの有彩色(赤・黄・緑・青)を心理四原色と呼ぶ[6]。
この説はヘリングの観察によって成立したもので発表当初は注目されていなかったが、その後外側膝状体に反対色説を裏付ける細胞が見つかったことから生物学的にも実証され、今日では色覚理論において重要な位置づけにある[3][7]。
反対色説における6つの基本色
ヘリングの色相環
脚注[脚注の使い方]^ a b c “ヘリングの色覚説”. コトバンク. 2021年7月9日閲覧。