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エンデューロレース(英: enduro race)はオートバイや自転車などで行われる、クロスカントリー(オフロード)の耐久レースの一種。単に「エンデューロ」と呼ばれることが多い。
本記事ではオートバイで行われる、エンデューロと名の付く競技を中心に扱う。 一周あたり数十kmという長距離の、自然の地形を利用したコースで競われる。ただの耐久レースというよりは様々な路面でバイクと乗り手を試す名目があり、どの要素を重視するかによってルールや形式が細分化している。国際モーターサイクリズム連盟(FIM)ではエンデューロ世界選手権(エンデューロGP)、スーパーエンデューロ世界選手権、ハードエンデューロ世界選手権という3種類の「エンデューロ」と名のつく世界選手権が開催されている。 最も古く格式が高いエンデューロ大会は「ISDE」(International Six Days Enduro、国際6日間エンデューロ)で、エンデューロのオリンピックと呼ばれるような、国別対抗のチーム戦となっている[1]。 エンデューロのルーツは1900 - 1910年代に英国を中心に、史上初めてのオートバイ競技として誕生したトライアル(信頼性トライアル)である。当時のトライアルは現在のエンデューロに近い形式で行われ、まだ乗り物として未熟だったバイクの耐久テスト・性能テストを名目としていた。これに当時まだ生まれたばかりのオートバイメーカーたち[注釈 1]が、自社の技術研鑽と宣伝のために挙って参加した[2]。そして当時生まれたトライアルの大会の一つに、ISDEの前身のISDT(国際6日間トライアル)もあった[3]。ISDTは順位を争うよりも完走できるかを試す部分が大きかったため、現在のISDEでも個人部門では規定時間内で完走した者全員が金・銀・銅のいずれかのメダルを授与される[注釈 2]という、相対評価の形式を取っている。 語源は英語の「Endurance(耐久)」+俗語の接尾辞の「o」で、1950年代には成立していたとされる[4]。 「タイムキーピング・エンデューロ」「タイムカード・エンデューロ」とも呼ばれる。日本では「オンタイム式」という名称が定着している。欧州で盛んで、ISDEやエンデューロ世界選手権も採用する、エンデューロの王道といえる形式である。 タイム計測区間・移動区間・タイムチェックポイントがそれぞれ存在する。その点ではラリーレイドに近い形式を持つが、エンデューロはバイクの試験がルーツということもあり、タイム測定区間は「スペシャルテスト」(又は単に「テスト」)と呼ばれ、人工物含めた様々な種類の路面が意図的に用意される点が異なる。また標識やロープなどでコマ図無しに道順が分かるようになっており、ラリーレイドのようにナビゲーションで勝敗を決める要素は少ない[注釈 3]。 スペシャルテストの種類は運営団体によっても少々異なるが、MFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)では の3種類に分類される[5]。 上記以外にエンデューロ世界選手権では、四輪のラリーでいうSSS(スーパースペシャルステージ)に相当する、ファンが観戦しやすいコースで二人がバトルする「スーパーテスト」、ISDEの最終日ではコースを用いて全車が一斉に競争するモトクロス形式の「ファイナルクロステスト」がそれぞれ行われる。 各スペシャルテストの間には移動区間(リエゾン)とチェックポイントが存在する。スペシャルテストでは速さを競うのに対し、各チェックポイントでは運営の指定時間通りに通過できるかどうか(1分速くても遅くてもペナルティ、大幅に遅れると失格)が見られており、勝敗にも関わる。 また大会期間中の整備・補給・修理は基本的にライダー自身だけで、それも規定時間内で行う必要があるため、一定水準以上のメカニックとしての技術も求められる。モトクロス出身で優秀なタイムで走れる選手がこれで躓く場面も多く、伝統的エンデューロの醍醐味の一つにもなっている。 チェックポイントでの早着でペナルティを受けることは、英語で俗に「燃やす(Burning a Check)」と呼ばれる。この早着ペナルティを無くしてシンプルにしたルールは「スタートコントロール/リスタート式」と呼ばれ、2007年から米国のAMAナショナルエンデューロ選手権が採用しており、伝統的ルールの時代に比べてエントリー数を倍増させたとされる[6]。 また英国では「スプリントエンデューロ」という形式もある。各テストに分かれている点は伝統的エンデューロと同じだが、タイムコントロールが存在せず、各テストを自分の好きな順番でこなせるというのが最大の特徴となっている[7]。 スタートしたら最後まで同じコースで規定時間を周回し続ける、サーキットの耐久レースのようなルール[8]。長距離のコースの中に伝統式エンデューロでいうクロステスト・エンデューロテスト・エクストリームテストの要素が含まれており、タイヤや丸太のような人工の障害物も用意される。 シンプルでルールが分かりやすく、アメリカや日本で人気がある。アメリカのGNCC(グランド・ナショナル・クロスカントリー選手権)や日本のJNCC(全日本クロスカントリー選手権)は、AMAやMFJが主催する伝統的エンデューロの選手権よりも多くのエントリーを集めており[注釈 4]、エンデューロ世界選手権でも一部イベントでこのルールが取り入れられたことがある。 バハ1000のような、ビバーク(休息地)がなく一気に走り切るタイプのラリーレイドをこれに含める場合もあるが、こちらはナビゲーション能力が問われる分、競技の性質は異なる。 「インドアエンデューロ」もしくは「エンデューロクロス」とも呼ばれる、屋内で行うインドアタイプのエンデューロ。スーパークロスと近い形式となっており、全車一斉にスタートして、規定周回(10周以内)のレースを2 - 3ヒート程度行うだけとなっている。全コースを一望でき、短時間で勝敗が決まるという点で、観戦しやすいのが魅力である。 最大の特徴はコース設計で、スーパークロスのようなジャンプや高速ターンのセクションに、トライアル寄りのゴツゴツした人工の岩場(ロック・ガーデン)や丸太のような障害物を低速で丁寧にクリアしていくセクションが組み合わされている。連続する非常にタイトなコーナー、さらにそれを抜けてすぐに現われる障害物を十分な助走無しにクリアしていく必要から、他のエンデューロのルールでは到底扱えないほど固めたサスペンションを用いており、短時間の走行でも身体への負荷は非常に大きい[9]。 ハイメ・アルグエルスアリSr.が中心となって2000年代に欧州で始まり、2007年から「FIMインドアエンデューロワールドカップ」、2011年から「FIMスーパーエンデューロ世界選手権」として開催されている。また北米でも2004年に単発イベントとして輸入され、2007年からシリーズ戦のAMAエンデューロクロスが開催されている[10]。屋外エンデューロのシーズンオフとなる、冬を中心にカレンダーが組まれるのが一般的である。 なお東日本で開催されている「Super Enduro East Area Championship」は、スーパーエンデューロではなくハードエンデューロの選手権である。 「エクストリームエンデューロ」とも呼ばれる。険しい山岳部で開催される、トライアル競技の要素が強く、走破能力が試されるエンデューロ。
概要
ルール/形式
伝統的エンデューロ「クロステスト」の例(2003年フランスエンデューロ選手権)「エンデューロテスト」の例(2012年ドイツ開催のISDE)「エクストリームテスト」の例(2012年エンデューロ世界選手権)
障害物の無い牧草地や砂地をハイスピードで走る、モトクロスのようなコースの「クロステスト」
山道や獣道など自然の中を走る「エンデューロテスト」
急坂や丸太や岩などの障害物を乗り越えるトライアル的な「エクストリームテスト」
クロスカントリー
スーパーエンデューロ屋内で開催されるスーパーエンデューロ世界選手権
ハードエンデューロハードエンデューロの一つ「レッドブル・エルズベルグロデオ」の様子。完走率は10%あれば良い方で、2015年は参戦500人中完走者1人だった[11]。