エンジェル・ハウリング
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エンジェル・ハウリング
ジャンル
ファンタジー
小説
著者秋田禎信
イラスト椎名優
出版社富士見書房
掲載誌月刊ドラゴンマガジン
レーベル富士見ファンタジア文庫
巻数全10巻
テンプレート - ノート

『エンジェル・ハウリング』は富士見ファンタジア文庫から刊行されている秋田禎信ライトノベル作品。イラスト椎名優
目次

1 概要

2 登場人物

2.1 ミズー編

2.2 フリウ編


3 用語

4 既刊一覧

4.1 関連商品


概要

この作品は奇数巻と偶数巻では主人公が異なる。奇数巻の主人公はミズー・ビアンカという女暗殺者、偶数巻の主人公はフリウ・ハリスコーというハンター見習いの少女である。この両者は普段は全くの別行動をしているものの時々で絡み合いながら、それぞれ未知の精霊アマワを巡る事件に挑んで行く。ミズー編とフリウ編を通して読むことで初めてミズーとフリウがどのような陰謀に巻き込まれていたのかということが分かるようになっている。

全編を通して「心」や「愛」の有無、その答えをなぞる内容となっており、また、ライトノベルらしからぬシリアスな、言い方を変えればやや重苦しい雰囲気が多いのも特徴(同時期執筆されていたオーフェン東部編に通じるものがある)。初期のオーフェンなどに見られたギャグテイストはほとんど見られず、全編を通してシリアスなストーリーとなっている。また明かされていないエピソード・設定も数多く存在する模様。

ミズー編は文庫書き下ろし、フリウ編は月刊ドラゴンマガジンに連載された後、文庫に収録されている。

2009年12月に発売した「秋田禎信BOX」に新作が収録されたが、それにおいても、ミズー編とフリウ編が分かれた。



登場人物

声はドラマCDの出演者。
ミズー編
ミズー・ビアンカ(声:
山崎和佳奈
奇数巻の主人公。辺境随一の腕を持つ女暗殺者。くせの強い赤毛が特徴。剣やナイフといった武器の扱いに秀でているのはもとより、念糸使い(能力は「熱する」)でもあり、加えて強力な力を持った獣精霊ギーアを扱う精霊使いでもある事がその腕をより確かなものにしている。後述する訓練の結果「知っている距離なら殺人は行える」という持論を持つ(この距離は物理的なものだけを意味しない)。絶対殺人武器を作るという思想に取り付かれたイムァシアの刀鍛冶達によって幼い頃から塔に幽閉され、徹底的に殺人技術を叩き込まれて育った。本当に存在しているのかどうかすら不明だった双子の姉、アストラ・ビアンカの消息を知るために、彼女が契約していたという未知の精霊アマワの謎を追い求める。殺し屋を生業としているが、それはあくまで上述のようにイムァシアで殺人者として育てられ他にすることを知らないから(彼女いわく「もしわたしがあの場所でないところで育っていたらどうなっていただろう、という想像すらできないほど徹底的に今のわたしにさせられた」)であり、彼女自身は(必要とあれば躊躇しないものの)特段好戦的な性格でもなく、また必ずしも殺人という行為に対して肯定的でもない。「絶対殺人武器」としての力として獣の時間というものを持っている。この時間の間はあらゆる肉体的・精神的な苦痛から逃れられ、どんな殺人も行えるが、代わりに解放されてからは凄まじい疲労と激痛、嘔吐を伴う。この時間を彼女は「良心の遮断」だと考えていたが、それとは大きく異なるものでありミズー編における(そして精霊とは何かという問題においても)非常に重要なキーワードである。他人との距離を常にとるような言動・行動が多く、他人に自分のルールを押し付けることが多かった。物語が進むにつれ、殺人武器としての自己がいかに一般的な人間性から遠くなっていたかを思い知らされ、その都度自分に呆れたり嘆いたり、時には悲鳴をあげたりする。事実、それまでの自分のペースを乱されてからは世俗的なものとの接触に大きく戸惑い、特にある街での服屋とのやり取りではそれまでに経験したことのない苦労を味わうことになる。しかし、さまざまな人と出会い話し、徐々に人間らしさと人とのつながりを取り戻していく。中でもジュディア・ファニクに対しては非常に親しい感情を抱いており、己の過去や心情を吐露するまでに心を開いていく。イラストレーターいわくカラーは赤、イメージは炎。
アイネスト・マッジオ(声:石田彰
神秘調査会の学者。非常に優れたマグスである。好青年風な風貌でおとぼけた性格を装っているが、実年齢は80歳以上であり、イムァシアにミズーやジュディアら念糸能力を持つ子供を引き渡していたのもアイネストである。その本性は他人の屈辱を眺めるのを好んだりと、かなり冷徹で曲者。ミズーを神秘調査会の計画に組み込むため、また調査会の目論見とは別に、個人的に彼女が真に硝化し精霊となるのを見たいがために彼女につきまとう。その偏執さはミズーをして「一般的な論理の尺度など意味がない。この男は根底からの狂人だ」「焼き尽くしたはずのイムァシアの狂気は未だここに残っている」と言わしめた。干渉することをよしとしない絶対の観察者にして傍観者であることを自負し、全知を目指す。また自身が語るには師ですらも及ばないほどの大マグスである。そのマギは他人を殺すことで自分の尽きかけた命を無理やり伸ばす、といったことまで可能とし、彼を妨害しに来た同属が死の間際にも関わらず驚愕するほど。あまりにも強いマギの力を持っているため、眠ることができない。そのため夜に独り言をつぶやく癖があり、たまに日中であろうと一人でいる際につぶやくことがある。作中、彼の独白は多く歌うように様々な思いを口にする。ただし、彼曰くそれを聞くものはない。また、その多くは彼の心情や周囲の状況を歌っているものである。もっとも本人いわくマギは「こんな力は学べば誰にでも出来る、手品みたいなもの。念糸のような強力な力にはとても及ばない」と語っている。ミズーに興味を持って何度も彼女の前に姿を表しつきまとうが、同時にミズーが持つヒステリックな一面を心底不愉快にも思っている。彼女に対しての感情は歪んだ愛情とも取れるようなものであり、作中での彼の独白などにはそういった一面を示唆するようなものも存在する。ただし、当のミズーからは嫌悪されている。最後は崩壊する帝都の中、殺人精霊となって目覚めたアストラによって殺される。「心の不在を証明すれば、人は精霊と同じになる」というのが(彼が今際の際に語った)自説であった。サイコロ賭博で思い通りにサイコロの目を出すなど、妙な特技を数多く持っているようだが、それを披露することはなかった。また、裕福な家の三男であったらしい。
アストラ・ビアンカ
ミズーの双子の姉。ミズーと共に塔に幽閉され殺人技術を叩き込まれて育ったが、8年前にミズーと生き別れる。しかしミズーは彼女のことを、塔での辛い経験が生み出した妄想の産物ではないかと疑っている。イムァシアによって帝都の先帝に引き渡され、アマワを御する精霊使いとして用意された。これがミズーとの別離の原因となる。彼女がアマワに発した問いは「わたしの妹はどこにいるのか」。アマワはそれに対して「二人ともどこにもいない」と答えた。彼女はその答えを聞いて豹変しアマワに襲い掛かり、その力は当時筆頭軍属精霊使いだったリスの精霊を一瞬で退け、帝の護衛である黒衣も苦もなく倒してしまう。8年前の帝都の火事はこのとき彼女によって起こったもので、そのときからアストラは「殺人精霊アストラ」として眠り続けることになる。物語終盤、フリウとミズーの帝都来訪に呼応するように目覚め、殺人精霊として帝都の人間すべてを一晩かけて殺し尽くしてしまう。そのさまは恐ろしく美しい手並みであり、彼女の手にかかった犠牲者はまるで眠るように殺されていった。このときフリウも殺人精霊として次々に帝都の人間を葬っていくアストラに遭遇し、危うく殺されかかるが、かろうじて残っていた「ミズーの姉アストラ」という人間としての自我が、フリウの命を奪う寸前でその剣を押しとどめた。最期はミズーと刺し違え、アストラが消滅することでアマワからミズーのもとへ取り戻される。
ウルペン(声:藤原啓治
黒衣の変装をした謎の男。念糸能力者(能力は「乾燥」)。自らを契約者、そしてアストラの夫と名乗る。「なにもかもが不確かな世界の中で、確かなもの」を求めてアマワと契約する。作中で蛇に例えられることが多い。ただ眠り続けるミズーの姉アストラを帝より下賜され、彼女を「妻」と呼ぶ。そのためかアストラに異様なほど執着し、ミズーを恐ろしいまでに憎悪し倒すことに執着する。戦うたびに身体を失いながらも、その意志は最後まで変わることはなかった。ミズー編における宿敵の一人。シルクの寝間着ほど愚かなものはないというのがポリシーで、妻アストラ(といっても帝都にある彼の自宅でただ眠り続けるだけなのだが)には木綿の寝間着を着せていた。彼がアマワに発した問いは「俺が得られる確かなものはあるか?」。答えは「ない」との一言であり、8年後彼はそれを実感させられることになる。ただし、彼がアストラを愛していた気持ちそのものは偽りのないものであり、ミズーにもその点は認められていた。アストラとの関係上、彼はミズーにとって義兄にあたる。
ジュディア・ホーント
アイネストが派遣した神秘調査会に飼われている女性剣士。年齢は三十代。負傷したミズーの護衛(兼監視)としてアイネストに呼ばれた。若くまだ血気盛んな彼女に皮肉を浴びせることなどもある。が、その多くは的を射たものであることが多くミズーも反論しても納得せざるを得ないことが多かった。それだけでなく剣士としても非常に高い戦闘力を持つ。実はミズーの前に塔に幽閉されていた子供だった。故に、ミズーの状況に共感したり、知ったような口をきくことが出来た。また、性格も近しいものがあるが、人生経験の分だけミズーより大人びている。過去に幾度となくアイネストに復讐しようとしていたが、その中で無意味であることを知り今は使い走りとして使われている。主要武器は鉈の様な剣。念糸使いの素質も持っているが、昔に力を失い作中で使うことはほとんどない(能力は「凍結」)。初期はミズーに苛立ちを覚えることも多かったが、長い時間を共に過ごす中で絆が芽生え、のちにはミズーの第一の友人となる。またミズーも彼女との触れ合いの中で徐々に人間らしさ、温かみを思い出していくことになる。ペイン・ギャングの元へミズーを向かわせる際の服選びでわざとミズーに助け船を出さないなど、お茶目な面もある。
ファニク
ペイン・ギャングの使い走り。どこにでもいそうな風貌の、何の変哲もない糸目のただの若いちんぴらである。ミズーが帝都に向かう際、「こいつは便利な奴だし、女ひとりより男と女ふたりのほうが目立たないだろう」と彼のボスであるペインからミズーの手助けを命じられ、それ以降ミズーに同行する。ミズーに対して好意を持っており、またもともと姉っ子だったこともあってか姉のように彼女を慕う。気性はいたって温和であり、むしろフリウ編のスィリーに近い雰囲気を持っている。その言動は時にミズーを呆れさせてきたが、同時に彼女に響く言葉も少なくない。ミズーに大きく影響を与えた人物の一人でもある。一部の広告ではミズーとのラブコメと語られるなど、彼女との仲は終始良好であった(恋愛であったかは解釈が難しいところだが)。非常に器用でこまめな男であり、その手回しのよさはミズーをして感嘆を通り越して呆れさせてしまうほどである。手先も器用で妙な特技も数多く持っている。反面、色々と積み重ねた(はずの)努力が無に変わることも多く、決して運がいい方ではない。博識でウンチク語りも好き。武器として改良されたパチンコを使うことがあるが、彼自身は戦闘力に特化した人間ではないため、戦闘する場面はほとんどない。
ベッサーリ・キューブネルラ
帝国を統べる皇帝。兄帝とも呼ばれる。不死を願いアマワと契約した。怯える狂王などと揶揄されることもあるが、威厳にあふれ傲慢で力強い戦士でもある。ベスポルトに匹敵する戦士であり、黒衣がなくとも半端な技量であれば打倒せるだけの実力を保持している。ただし、体形は年相応のものである。その地位や性格、また作中でも数多くの人間から動向を警戒されるほどの人物だったが、最期はあっけないものであった。メルソティは彼の実弟である。
未知の精霊アマワ(声:西川幾雄
自らを御遣いと名乗る不思議な存在。常に他人の姿を(それもおかしな形で)借りて現れる。その正体は未来精霊。未だ生まれない未来(作中の表現を借りるなら「隙間」)に存在する精霊であり、そのためアマワを傷つけるすべは作中には存在しなかった。未来の精霊であるため、彼の告げた約束は必ず成就する。自身が語るところによれば「わたしは御使いであり、その本意はもう一段遠いところに存在する」。


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