エンキ
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エンキ

エンキ(シュメール語: ?? - DEN.KI(G) - Enki)は、メソポタミア神話である。
呼称

エンキの正確な意味は不明であるものの、一般的には[誰?]「地の王(Lord of the Earth)」を表す(シュメール語でenは「王」、kiは、不明もしくは「盛り土、小山(mound)」の意)。

のちのバビロニア神話では、都市エリドゥの守護神エア(アッカド語: Ea)として知られる。エアの名前の語源はフルリ語ともセム系の言語ともいわれているが、「生命」「泉」「流れる水」などを意味する“hyy”と考えられている。
前史 - エリドゥの神殿 -

エンキの神殿は、ユーフラテス川の湿地帯の中で、当時としてはペルシャ湾口に近い部分に位置する都市エリドゥにあり、一つの敷地内に18の神殿が存在した。主神殿は「エエングラ」(e-engur-a:深き水の王の家)、もしくは「エアブズ」(e-abzu:水の家)と呼ばれており、地下には水の領域が存在していた。

18の神殿のうち、最も小さいものが最古のものである。その小部屋には紀元前5,000年にさかのぼる清浄な砂が置かれており、壁龕、前庭、祭壇、2つの教壇、犠牲をささげるテーブル、アブズと呼ばれる聖なる水のプールがあり、オーブンが建物の外にあるなど、メソポタミア神殿の特徴を色濃く備えている。淡水魚の骨が出土したことから、当初から淡水を司る神があがめられていたと考えられる。ジョーン・オーツ(Joan Oates)はこれについて次のように言及している「ウバイド期からそれに続くシュメール時代にかけて、エンキ神殿の周辺に少しでも大きな変化があれば、神殿がこの場所にあること、その宗教・建築の伝統が破壊されずに残っていることは信じ難いことだ。」

ここで崇拝されていた神がエンキであるか、エンキと似た位置づけの別の神(アプスーなど)であるかは不明である。
神性と特徴

工芸(=ga?am)、水(=a, ab)、知性(=gestu(「耳」の意))、創造(Nudimmud)を司る。
知識・魔法・淡水を司る神性

エンキは、世界の創造者であり、知識および魔法を司る神とされる。彼は、地下の淡水の海である「アプスー」(アッカド語の読み。英語・ギリシャ語の abyss(「深淵、奈落」の意)の語源であるとする説もある)の主である。アッカド人による称号は「水の家の主」。また、人類に文明生活をもたらす「メー」と呼ばれる聖なる力の守護者でもある。はるか昔、人間が野蛮で無法な生活をしていた時に海から現れ、手工業、耕作、文字、法律、建築、魔術を人間に教えたとされる[1]

後期バビロニアの文書エヌマ・エリシュによると、神々の父であったアプスーは、若い世代の神々に平穏な眠りを乱されたため、彼らを滅ぼそうとした。アプスーの孫にあたり、当時神々の中で最強であったエンキは、若い世代の神々の代表に選ばれた。彼はアプスーに魔法をかけて深く眠らせたうえ、地底深くに閉じ込めて殺した。エンキは、世界を豊かに保つ力をアプスーから獲得し、そのまま地底を住処として、淡水および繁殖を司る神としての役割を継承した。
繁殖・豊穣を司る神性

伝承では、古代の創造の女神であり、「偉大な神々に命を与えた母なる女神」である女神ナンム(Nammu)がエンキの母であるとされており、エンキとは水による創造の力を持つという共通性によって、エンキ(エア)は女神ナンムが姿を変えたものであるとも考えられている。ベニート(Carlos A. Benito:ペンシルベニア大学Ph.D)は、「エンキに関しては、性のシンボリズムの興味深い変化が窺える。メソポタミアにおいては、土地は「水」によって豊かさがもたらされるとの通念があるが、シュメール人は、この「水」の神格化の対象・意味合いについて、女神ナンム時代の女性的な「生命を産み出す海」から、エンキ時代の男性的な「精子」へと、とらえ方を変化させている。たとえば、シュメールのある聖歌では、涸れた川岸にエンキが立ち、彼の水で満たした、との部分がある」と述べている。このようなエンキの男性的な繁殖・豊穣を司る神性については、配偶者である女神(Ki) または女神ニンフルサグとの、ヒエロス・ガモスすなわち「聖なる結合」との関連性も示唆されるところである。
死後の世界との関連

紀元前2000年以前の初期の王家の碑文には、「エンキの葦(the reeds of Enki)」について触れられている。葦は、建築に用いられるほか、籠・箱などの材料にも用いられる重要な資材であり、死者や病人が運び出される市壁の外から調達されていた。このことから、シュメール神話では、エンキには、死後の世界との関連性があると考えられている。
象徴する動物・惑星

エンキを表す象徴には、山羊と魚があげられる。両者はのちに統合され、黄道十二星座やぎ座を象徴する怪物カプリコルヌスとなった。また、シュメールの天文学においては、地上から見た位置変化のスピード、太陽からの距離が近いなどの点から、エンキは水星の象徴とされた。
女神ニンフルサグとエンキの後裔たち

エンキは、理想的な神ではなかった。水の神にしてはビール好きであり、繁殖・豊穣の神にもかかわらず、近親相姦を行った。伝説によれば、エンキは配偶者ニンフルサグとの間に女神ニンサル(Ninsar:植物を司る)という娘があったが、ニンフルサグの不在の間、ニンサルと関係を持ち、女神ニンクルラ(Ninkurra:農耕・牧畜を司る)という娘をもうけた。

さらに、彼はそのニンクルラとも関係を持ち、女神ウットゥ(Uttu:機織り、もしくは蜘蛛を司る)をもうけた。

そしてさらにエンキは女神ウットゥと関係を持った。しかし、エンキは、ニンサル・ニンクルラに対してしたのと同様に、しばらくするとウットゥのもとを去ってしまい、困惑した女神ウットゥは、戻ってきた女神ニンフルサグにそのことを相談した。ニンフルサグは、エンキの見境のない欲求に憤り、ウットゥに対して、水神エンキの勢力のおよばないよう、川の水辺から逃れるよう言った。そして、ニンフルサグは、ウットゥの子宮からエンキの精を取り出し、土に埋めた。すると、そこから8種類の植物が芽を出し、みるみると成長した。エンキは、僕である双面のイシムード(英語版)とともに、それらの植物を探し出すと、その実を食べてしまった。自らの精を取り込んでしまった彼は、あご・歯・口・のど・四肢・肋骨に腫れ物ができた。エンキは途方にくれていたところ、ニンフルサグの聖なる狐がウットゥを連れ戻してきた。

ニンフルサグの心は和らぎ、エンキの体からアブ(Ab:水、または精)を取り出し、ウットゥの体に戻した。ウットゥからは8つの神

アブー(Abu)

ニントゥルラ(Nintulla:またはニントゥル(Nintul))

ニンストゥ(Ninsutu)

ニンカシ(Ninkasi)

ナンシェ(Nanshe)


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