エルヴィス・プレスリー登場!
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『エルヴィス・プレスリー登場!』(Elvis Presley)は、エルヴィス・プレスリーのデビュー・アルバム。1956年3月発売。
解説

デビュー・シングルの『ハートブレイク・ホテル』が3月3日に68位で登場したばかりでまだヒットに至っておらず、アルバムヒットの保証が無かったため、サン・レコードで録音されていた5曲と、RCAでの第1回目のセッション(1月10日、11日)と、第2回目のセッション(1月30日、31日、2月3日)で録音されたカバー曲が5曲、その場で作られた新曲が2曲が収録された。

しかし、蓋を開けてみると、10週連続1位を獲得し、発売からおよそ1年間チャート・イン。RCAのポップス・アルバムのうち、ソロ・アーティストとしては史上初の100万ドル以上の収益を記録し、RCAのポップス部門最大のヒット作となった。これを受けて、8月31日には6作シングル・カットされた。

収録曲の中で、エルヴィスは「ワンサイデッド・ラブ・アフェア」が一番のお気に入りとのこと[1]。ジャケット写真は、1955年1月31日にフロリダ州タンパで撮影されたもの。エルヴィスの後ろにいるのは、ビル・ブラックである。

1999年に、アップグレイド盤として6曲がボーナストラックとして加えられた。1999年の再発盤では「ハートブレイク・ホテル」と「ただ一人の男」が最初に収録され、その次にオリジナル収録曲、残りのボーナストラックという曲順だったが、その後の再発盤ではボーナストラックは全てオリジナル収録曲の後に収録されている。

2011年に、『エルヴィス』とのカップリングでボーナス・トラックを加えた、レガシー・エディションが発売された。

「ただひとりの男」は、RCAのプロデューサーのスティーヴ・ショールズがエルヴィスに提供した曲で、エルヴィスのアイディアでシャッフルして盛り上げようとカントリーシャッフルが取り入れられ、途中でテンポが変わる。発売数ヵ月後のラジオのインタビューで、エルヴィスは「最も好きな曲で録音としても自信作だ」と語った。

アレンジは即興演奏から練り、エルヴィスがイメージと違うと言うとバンドもそれに同感し、一からやり直していた。収録中にミスをして録り直そうと言うと、エルヴィスは反対し「雰囲気も音もいいからそのままでいい。録り直したら台無しだ」と言った。エルヴィスは技術的に完璧な演奏よりも感覚的に判断し、求めるフィーリングが出るまで何度も録音を繰り返した。一方で技術的にかなり高度な要求をすることもあり、誰も弾けないようなリックを思いついては断られていた[2]。また、スタジオで歌う際にも激しく体を動かしており、それを見たチェット・アトキンスは妻に電話すると「こんなものは二度と見られないぞ、って言ったんだ。それだけエキサイティングだった」と語っている[3]

ザ・クラッシュの『ロンドン・コーリング』のジャケットは、このアルバムのオマージュである。

ローリング・ストーン』誌が選んだ「オールタイム・ベスト・アルバム500」に於いて56位[4]、と「オールタイム・ベスト・デビュー・アルバム100」にて79位[5]にランクイン。
テレビ出演の反響

ハートブレイク・ホテル」発売直後の1月28日に放送された人気番組「ザ・ドーシー・ショー」で「この若者がテレビの歴史を変えることになるでしょう」と紹介され、その後3月にかけて同番組に6回出演。4月に「ミルトン・バール・ショー」に出演したときの推定視聴者数は、4000万人だったという。さらに7月には、「スティーヴ・アレン・ショー」で脅威の55%を叩き出して見せた。番組には「腰の動きが猥褻だ」「声が淫らだ」「姿が不良っぽい」など抗議の電話や電報、手紙が殺到した。

分別ある大人の代表でもあったエド・サリヴァンは、「どんなことがあってもエルヴィスだけは自分の番組に出演させない」と宣言していたものの、ライバル番組の「スティーヴ・アレン・ショー」がエルヴィスを起用して自分の番組の4倍の視聴率を上げたことにも刺激され、ついに出演を許可。半年間に3回の出演契約を結んだ。1956年9月にエルヴィスが「エド・サリヴァン・ショー」へ初出演した際には、82.6%という視聴率を記録。

快進撃を続けていたエルヴィスだったが、その批判は凄まじく、CJCH局のDJはエルヴィスのレコードを600枚公園で焼き、ナッシュビルではエルヴィスそっくりの人形が絞首刑にされ、ミズーリ州セントルイスではエルヴィス人形が火あぶりにされた。テキサス州知事は、エルヴィスを筆頭とするロックン・ロール・アーティストのコンサートを一切中止すると発表し、ミシガン州ではエルヴィスと同じ髪形をした高校生が退学になった。評論家はエルヴィスのことを下品でいやらしい踊りの名人と評し、ニューヨーク・ジャーナルは「まるで原始人のステップを見ているようだ」「白人の子供を黒人にする陰謀の張本人」などとこきおろした[6]
収録曲
オリジナル盤
A面

Track録音日邦題曲名作曲者時間
1.1956年1月30日
ブルー・スエード・シューズBlue Suede ShoesCarl Perkins1:58
2.1956年1月11日当てにしてるぜI'm Counting on YouDon Robertson2:24
3.1956年1月10日アイ・ガット・ア・ウーマンI Got a WomanRay Charles and Renald Richard2:23
4.1956年1月30日ワン・サイデッド・ラヴ・アフェアOne-Sided Love AffairBill Campbell2:09
5.1954年7月5日アイ・ラヴ・ユー・ビコーズI Love You BecauseLeon Payne2:42
6.1954年9月10日ジャスト・ビコーズJust BecauseSydney Robin, Bob Shelton, Joe Shelton2:32

B面

Track録音日邦題曲名作曲者時間
1.1956年1月31日トゥッティ・フルッティTutti FruttiDorothy LaBostrie and
Little Richard1:59
2.1955年7月11日お前が欲しくてTrying to Get to YouRose Marie McCoy and Margie Singleton2:33
3.1956年1月31日座って泣きたいI'm Gonna Sit Right Down and Cry (Over You)Howard Biggs and Joe Thomas2:05
4.1954年9月10日あなたを離さないI'll Never Let You Go (Lil' Darlin')Jimmy Wakely2:25
5.1954年8月19日ブルー・ムーンBlue MoonRichard Rodgers and Lorenz Hart2:43
6.1956年1月10日マネー・ハニーMoney HoneyJesse Stone2:36

ボーナス・トラック

Track録音日邦題チャート・ランク曲名作曲者時間
1.1956年1月10日
ハートブレイク・ホテル#1Heartbreak HotelMae Axton, Tommy Durden, Elvis Presley2:08
2.1956年1月11日ただひとりの男#19I Was the OneAaron Schroeder, Claude DeMetrius, Hal Blair, Bill Peppers2:34
3.1956年2月3日シェイク・ラトル・アンド・ロールShake, Rattle & RollJesse Stone (as Charles Calhoun)2:37
4.1956年1月30日マイ・ベイビー・レフト・ミー#31My Baby Left MeArthur Crudup2:12
5.1956年2月3日ローディ・ミス・クローディLawdy Miss ClawdyLloyd Price2:08
6.1956年4月14日アイ・ウォント・ユー、アイ・ニード・ユー、アイ・ラヴ・ユー#1I Want You, I Need You, I Love YouLou Kosloff and George Mysels2:40

レガシー・エディション
ディスク1

Track録音日邦題曲名作曲者時間
1.1956年1月30日
ブルー・スエード・シューズBlue Suede ShoesCarl Perkins1:58
2.1956年1月11日当てにしてるぜI'm Counting on YouDon Robertson2:24
3.1956年1月10日アイ・ガット・ア・ウーマンI Got a WomanRay Charles and Renald Richard2:23
4.1956年1月30日ワン・サイデッド・ラヴ・アフェアOne-Sided Love AffairBill Campbell2:09
5.1954年7月5日アイ・ラヴ・ユー・ビコーズI Love You BecauseLeon Payne2:42
6.1954年9月10日ジャスト・ビコーズJust BecauseSydney Robin, Bob Shelton, Joe Shelton2:32
7.1956年1月31日トゥッティ・フルッティTutti FruttiDorothy LaBostrie and Little Richard1:59
8.1955年7月11日お前が欲しくてTrying to Get to YouRose Marie McCoy and Margie Singleton2:33
9.1956年1月31日座って泣きたいI'm Gonna Sit Right Down and Cry (Over You)Howard Biggs and Joe Thomas2:05
10.1954年9月10日あなたを離さないI'll Never Let You Go (Lil' Darlin')Jimmy Wakely2:25
11.1954年8月19日ブルー・ムーンBlue MoonRichard Rodgers and Lorenz Hart2:43
12.1956年1月10日マネー・ハニーMoney HoneyJesse Stone2:36
13.1956年1月10日ハートブレイク・ホテルHeartbreak HotelMae Axton, Tommy Durden, Elvis Presley2:08
14.1956年1月11日ただひとりの男I Was the OneAaron Schroeder, Claude DeMetrius, Hal Blair, Bill Peppers2:34
15.1956年1月30日マイ・ベイビー・レフト・ミーMy Baby Left MeArthur Crudup2:12
16.1956年2月3日ローディ・ミス・クローディLawdy Miss ClawdyLloyd Price2:08
17.1956年2月3日シェイク・ラトル・アンド・ロールShake, Rattle & RollJesse Stone (as Charles Calhoun)2:37

ディスク2

Track録音日邦題曲名作曲者時間
1.1956年9月3日
陽気に行こうぜRip It UpRobert Blackwell and John Marascalco1:50
2.1956年9月1日ラヴ・ミーLove MeJerry Leiber and Mike Stoller2:41
3.1956年9月2日ブルー・ムーンがまた輝けばWhen My Blue Moon Turns to Gold AgainGene Sullivan and Wiley Walker2:18
4.1956年9月2日のっぽのサリーLong Tall SallyRobert Blackwell, Enotris Johnson, Little Richard1:51
5.1956年9月3日ファースト・イン・ラインFirst in LineAaron Schroeder and Ben Weisman3:21


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