エリドゥ
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エリドゥ (シュメール語: ?? 翻字: eriduki、Eridu[1]、「遠くに建てられた家」の意)は古代メソポタミアの都市、又はその都市を拠点とした国家。ウルから南東方向に約10キロメートルの距離にある。シュメールおよび南部メソポタミアの都市国家郡の南端に位置し、数多くの寺院がある。

シュメール王名表では人類最初の王権が成立した都市とされている。1,000年以上にわたる神殿の拡張工事の跡が考古学的に発見されていることでも有名である。
遺跡と歴史
エリドゥ期詳細は「ウバイド文化」を参照

シュメール神話によると、大洪水が起こる以前に5つの都市が建設された。エリドゥはBC4,900年頃建設されたとみられ、これら都市の中でも最古のものである。実際にエリドゥは大きな力を持った都市であったと考えられるが、その時代は歴史資料が多く得られる時代より遥か過去のことであり、具体的な政治史は殆ど何も分からない。シュメール初期王朝時代以降も宗教的に重要な都市ではあったが、エリドゥに拠点を置く国家が大勢力となることはなかった。ウル第三王朝時代には巨大なジッグラトが建設されている。
遺跡

現代のイラク南部のテル・アブ・シャハライン(Tell Abu Shahrain)遺跡がエリドゥに同定されている。建設当時は、ユーフラテス河の河口近くのペルシア湾近くに位置していた。海退と1,000年以上にわたるシルトの堆積により、エリドゥの遺跡は現在のペルシア湾岸から離れたところにある。

イラクのバスラ近郊のテル・アブ・シャハライン遺跡は、まず1855年にJ.E.テイラー(J.E.Taylor)によって、続いて1917年にR.キャンベル・トンプソン(R. Campbell Thompson)、1919年にH.R.ホール(H.R. Hall)によって発掘された。[2][3][4]発掘は1946年から1949年にかけて、イラク古代遺産総局(Iraqi Directorate General of Antiquites and Heritage)のファド・サファール(Fuad Safar)とセートン・ロイド(Seton Lloyd)によって再開された。[5][6]以来、都市神エンキ(ヌディンムドゥ)を祀るための神殿跡が少なくても1000年にわたり連続して発見されており、ウバイド文化シュメール文化の連続性を示す証拠としてよく挙げられる。
成立期のエリドゥ

グウェンドリン・レイク(Gwendolyn Leick)によれば、エリドゥ市は、もともとは3つの異なる生活様式をもった集団が相互に交流し、合流することによって形成されていったという。

それら集団の第一のものは、農村集落であり、起源は最も古い。これらの集落は北方からきたサーマッラー文化に由来する灌漑農業が基盤になっていると考えられる。彼らは運河を建設し、日干し煉瓦による建築を行った。第二のものは、ペルシア湾沿岸の漁労・狩猟文化の集団である。これら集団の存在は、海岸沿いに貝塚が広く分布していることに裏付けられている。彼らは葦の小屋に居住していたとみられる。第三のものは、山羊を放牧していた遊牧民の一群であり、エリドゥの建設に貢献した。彼らは半砂漠地域にテントを張って居住していた。これら3つの集団は、エリドゥ市建設の最初期において、相互に交流関係が見られた。また、市の郊外においては、導水設備を伴った小さな窪地の中に日干し煉瓦で建設された大寺院を中心に、上記三者とは別に宗教的な集団が拠点を持っていた。
エリドゥの衰退

ケイト・フィールデン(Kate Fielden)は、次のように報告している。

「エリドゥは、紀元前5000年ごろ最初期の村落が形成され、紀元前2900年までには、広さ8?10ヘクタール(20?25エーカー)の都市に成長した。その頃の都市の建物は、壁がレンガ造りで屋根は萱葺きとなっていた。そして、紀元前2050年までには、都市は衰退した(外部から侵略された形跡がないため、「衰退」と考えられえる。)。


今日、ウル第三王朝の王アマル・シンが建設したジッグラトの下には、レンガ造りの寺院が18にも重なっていることが確認されており、今後さらに発掘が進む可能性もある。エリドゥの考古学調査は1940年代に行われた。ユダヤ系ドイツ人の歴史家マックス・フォン・オッペンハイム(Max von Oppenheim)によれば、一連の調査から、「メソポタミア南部のシュメールの都市国家群が結果として停滞に陥ったことにより、政治的主導権を北部のアッカドの都市国家群に支配権を明け渡した」ことが明らかになった。これらの南部の都市は紀元前2047年から2039頃に放棄されたが、居住と宗教儀式の痕跡によって、エリドゥの地においてシュメール文明が固有の起源を持つことが示されている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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