エメラルドドラゴン
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この項目では、コンピュータRPGについて説明しています。その他の用法については「エメラルドドラゴン (曖昧さ回避)」をご覧ください。

『エメラルドドラゴン』 (EMERALD DRAGON) は、バショウハウスとグローディアが開発したコンピュータRPG

まず、パソコン用として1989年にPC-8801mkIISR (PC88) 版とPC-9801VM/UV以降 (PC98) 版が、後年にはX68000 (X68k) 版やMSX2版、そしてFM TOWNS (TOWNS) 版が発売された。その後、メディアワークスの主導によってPCエンジン (PCE) やスーパーファミコン (SFC) などの家庭用ゲーム機にも移植された。

劇中に登場するキャラクターや地方などの名称のほとんどは、ゾロアスター教に関連している[1]
ゲームシステム

グローディアでの前作に当たる『サバッシュ』のシステムを受け継いでいる。160平方メートルを越える[2]広大かつ複雑なマップと、ハードの限界に挑んだ滑らかな画面スクロール処理、AIを使ったタクティカルコンバット風の戦闘システムといった当時のパソコンゲームの先端を行く技術が投入された点に加え、味方が1人倒されただけで即ゲームオーバーとなる、AIの思考パターンについてもタムリンがレベルが上がると回復魔法をピンチ時に唱えてくれない、ハスラムが無謀な特攻をする、サオシュヤントの矢が全然当たらないなど、後々の他社作品ではまず考えられないような作り込みの甘い部分も特徴であった[3]。その後、このシステムは『ヴェインドリーム』や、ライトスタッフの『アルシャーク』へ改良を重ねながら受け継がれることとなる。なお、普通にプレイしていればクリア時のレベルは100を越える。

また、アイテム次第でマップが表示できたり、次の謎解きのヒントが出る「相談」コマンドがあるほか、PC88版ではセーブデータをユーザーディスクに8か所・ゲームディスクにも1か所保存できるなど、当時としてはユーザーフレンドリーなシステムになっている。条件を満たすと入れる3つのサブシナリオや、機種限定でシューティングゲームなどのサブゲームが楽しめたりするオマケ要素もある。

ビジュアルシーンと呼ばれるアニメ絵がオープニングだけでなく本編中にも何回か入るほか、ストーリー重視のために攻略の自由度は高くなく、ノベル調のテキストをひたすら読ませる傾向にある。

PC88版とPC98版には致命的なバグ(後述)があり、回避方法を知らずにプレイすると行き詰まってしまうこともあった。

なお、『サバッシュ』の原作者である三遊亭圓丈によると、本作は『サバッシュ』以上に売れたとのことだが、同作に存在するとあるダンジョンとまったく同じデザインのダンジョンが、本作にも存在するそうである[4]
パーティーの成長

アトルシャンとタムリン以外のキャラクターは装備の変更こそ彼らと同様に可能だがEXP(経験値)の概念がなく、イベントで発生する入れ替わりによってパーティー全体の強さが向上していく(パーティーから一旦外れたキャラクターは、再び加わるまでの間に強くなっている)。そのため、長期参加しているキャラクターはイベントなどで強化されない限り、相対的に弱くなってしまう傾向にある。特に、ハスラムについてはアトルシャンのような成長がないことに加え、AIの思考パターンによって接近戦に出てはダメージを受けるために中盤以降はこの影響が大きく、後期バージョン(PC98版以降)ではワラムルの薬による強化イベントが追加された。

入れ替わりの推移時期3人目
(近・中距離戦士)4人目
(中距離戦士、魔法使い、弓使い)5人目
(魔法使い、弓使い)
フラワルドの屋敷攻略までバルソム-バギン
ザーマの砦攻略までハスラムファルナバギン
魔軍前線司令部攻略までハスラムファルナ-
ゴーメズの巣攻略まで-ファルナヤマン
オストラコンの脅迫までホスロウ(強化)ファルナ-
ミスラ・ミフルの砦攻略までホスロウファルナ(強化)ヤマン
フシュルヌムの館までカルシュワル-サオシュヤント
ドゥルグワント城攻略までカルシュワル(強化)ホスロウサオシュヤント
(メリルの章)メリルホスロウサオシュヤント
魔王殿まで(強化)ハスラムホスロウサオシュヤント
(ミスティーナの章、サギーの章)(強化)ハスラムミスティーナ、サギー(強化)サオシュヤント
最終決戦ハスラム(強化)ファルナサオシュヤント

発売機種

諸般の事情により、X68000版以前の作品は版権がバショウハウス(元の発売元)、グローディア(開発元)、ライトスタッフ(グローディアから独立した一部のスタッフが立ち上げた新会社)の3社に分断される、という複雑な状況になっている。PCエンジン版以降の作品はメディアワークスに統括されている(メディアワークスから小説版(後述)を出した篠崎砂美によると、PC-98版の地形に準じた内容の口絵にPC-98版の地図画像を使いたかったが、使えなかったためにPCエンジン版のものが使われたという[1])。

3社への働きかけは当初、角川書店の角川メディアオフィス (KMO) で進められていた(当時の『マル勝PCエンジン』ではその一環として『Ga-Ryu[牙龍]』を連載しており、終盤のファンページ後半には移植決定を匂わせる一文まで掲載した)。※ メディアワークス・角川書店は現在KADOKAWAに吸収され、ブランドとしてのみ存在している。これ以降は発売当時の企業名で記載し、“ 現・”の記述は省略した(なお、KMO社はKADOKAWAグループのマーケティング企業に特化しており、製作事業は行っていない)。
PC-8801mkIISR以降版

開発:グローディア / 発売:バショウハウス / 発売日:1989年12月12日

フロッピーディスク (FD) 6枚組。サウンドボードII対応。アナログRGB8色対応だが、デジタルRGBでもプレイは可能。8MHzでは、後に発売されたPC98版をV30CPU搭載機種でプレイした時よりもスクロールが速い。ジェルメスの洞窟でドラゴンゾンビを倒した後はアヴェスタを「1歩前に出て」取る必要があり、これに気づかずに外へ出てしまうとクリア不能になるバグがある(PC98版以降では、自動的に取るように変更された)。製品とは別に、BGMと未使用CGを収録したスペシャルディスクが存在する。
PC-9801VM/UV以降版

開発:グローディア / 発売:バショウハウス / 発売日:1989年12月22日

FD3枚組。内容はPC88版とほぼ同等だが、サウンドはPC-9801-26Kのみの対応(当時はSB2に相当する73/86音源は未発表)。PC88版と発生条件は異なるものの、これにもクリア不能になるバグ(3つあるサブシナリオのうち「サギーの章」で手に入る「粒子カッター」をファルナに装備させると、ボス戦2か所でバグが発生してホルスの街へ入れなくなり、「E・JUNの責任」と表示される)がある。また、厳密にはバグではないが、PC-9801DAなどのNEC製PC-9800シリーズ後期の一部機種では、電源投入前に本体動作クロック周波数をPC-9801VM同等の8MHzに落としておかないとBGMが鳴らないばかりか、ゲームディスク起動直後にアトルシャンが祈りの丘へ降り立つと同時にフリーズしてしまう。最初から始めるにしろ途中から始めるにしろ、起動直後は必ずここから始まるので、電源投入前にクロックを落としておかない限り、この不具合を回避する術はない。なお、PC88版同様、BGMと未使用CGを収録したスペシャルディスクが存在する。
X68000版

開発・発売:グローディア / 発売日:1990年12月6日

FD6枚組。上記にある諸般の事情と木村明広のライトスタッフへの移籍により、ビジュアル関連は別人による全面描き直しが行われた。移植の際にプログラムが見直され、ほぼノーバグとなっている。
MSX2版

開発・発売:グローディア / 発売日:1990年12月26日

FD5枚組。機種性能(SCREEN7:高解像度モードだが描画速度は遅い)に起因してスクロールが他機種より非常に遅いが、作中で削られた要素はサブゲームのシューティング程度であり、MSXturboRの発表直後かつMSX2/2+シリーズの末期に発売されたため、ユーザーからはそれなりに支持を得る[要出典]。画面の横解像度が横512ドットとPC88版やPC98版の640ドットやX68k版の768ドットより低いため、レベル表示がメイン画面からは削除されている(パッケージ裏の開発版の画面では表示されている)。またマップ表示も細かい部分が潰れており、大まかな現在位置を知ることができる程度で、迷路の道順確認ができなくなっている。MSX-MUSICのみに対応しており、標準音源であるPSGには未対応のため、MSX2+以前のMSX-MUSICを内蔵していない機種では、MSX-MUSICカートリッジのFM-PACを装着しておかないとBGMが再生されない。ビジュアルシーンの絵柄はX68k版と同じ。ビジュアルシーン以外での顔の一枚絵はPC88版と同じだが、16色で着色し直されている。オープニングは横256ドットの256色表示モード(SCREEN8)に対応。漢字ROMが不要な反面ひらがなも多い。松下電器のワープロ内蔵機FS-4600Fではゲーム開始直後のタムリンの家に行くシーンでフリーズして正常に動作せず、後に不具合を修正した「FS-4600F専用版」が作成され、希望するユーザーには無償で交換が行われた。なお「専用版」と銘打たれてはいるが、実際には他のMSX本体でも動作する(一応、ユーザーが他の本体に買い換えた場合には、再度通常版との交換で対応とされていた)。
FM TOWNS版

開発・発売:グローディア / 発売日:1992年5月28日

FD1枚組+CD-ROM1枚組。FDとは比べ物にならないCD-ROMの大容量を生かし、アーツビジョン所属の声優を起用したボイスが追加された。ビジュアルについては、グローディアに保管されていた木村明広によるPC88版&PC98版原画をフルカラーで取り込み、着色したものが用いられた。マニュアルでのキャラクター写真や画面紹介写真はX68k版と同じ。
PCエンジン版

移植開発:アルファ・システム[5] / 発売:NECホームエレクトロニクス / 発売日:1994年1月28日

CD-ROM1枚組。上記にある諸般の事情をメディアワークスが統括する形で解決、移植開発をアルファ・システムに発注する形で制作された。また、ライトスタッフから木村明広が出向し、キャラクターデザインに復帰。タイトルロゴも一新(ただし、オープニングで表示される分だけはTOWNS版パッケージやマニュアル準拠のフォント)され、SUPER CD-ROM2の機能を活かしたビジュアルシーンは全面描き下ろしである。プログラムを担当した岩崎啓眞や監修を担当した桝田省治によって、パソコン版にあったシステム周りやAIの思考パターンなどの問題点が改善されているため、ボリュームがやや増加しているにもかかわらず難易度はそれほど高くなく、快適にプレイできる。こちらも声優によるボイスあり(声優の面々はTOWNS版と異なる)。


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