エブロ川
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エブロ川
中流域のサラゴサ市街地を流れるエブロ川
水系エブロ川水系
延長930[1] km
平均流量426 m³/s
流域面積80,093 km²
水源カンタブリア州フォンティブレ(スペイン語版)、トゥレスマレス山
水源の標高1,980 m
河口・合流先地中海
流域 スペイン

エブロ川水系の河川とその集水域(黄色)
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エブロ川(エブロがわ、スペイン語: Ebro, [?eβ?o])は、イベリア半島北東部を流れる河川。カタルーニャ語ではエブラ川(カタルーニャ語: Ebre, カタルーニャ語: [?eβ??, ?eβ?e])。
特徴

全長は930kmであり、イベリア半島ではタホ川(テージョ川)に次いで2番目に長い河川である[2]。流量は426km3、流域面積は80,093km2であり、それぞれイベリア半島ではドゥエロ川(ドウロ川)に次いで2番目に大きな河川である[1]。タホ川とドゥエロ川はスペインとポルトガルを流れる国際河川であり、スペイン国内のみを流れる河川としては最も流量が多い[1]

エブロ川本流の水源はカンタブリア州フォンティブレ(スペイン語版)にある。カンタブリア州、カスティーリャ・イ・レオン州ナバーラ州アラゴン州カタルーニャ州の5自治州を流れた後にエブロ・デルタ(英語版)で地中海に注いでおり、支流はバスク州にも流れている。エブロ川本流沿岸の主要都市にはログローニョサラゴサなどがあり、支流沿岸の主要都市にはビトリア=ガステイスパンプローナリェイダなどがある。上流に向かって外来種であるカワホトトギスガイ(英語版)の生息域が広がっている。
名称

古代ギリシア人はこの河川を ?βηρ (Ib?r)と呼び、古代ローマ人は Hiber、Iber、Iberus Flumen などと呼んだ。ローマ人による名称が今日のエブロ川の語源である。イベリア半島イベリア人という名称はこの河川より後に名づけられた名称である[3]。ギリシア人がこの河川に対して地元住民の名称を使用していたかどうかは定かではなく、Iber や Hiber という単語の意味も定かではない。現代バスク語で ibar は「谷」または「水生湿地」を意味し、ibai は「河川」を意味するが、これらのバスク語の単語がエブロ川の語源に関連する証拠は存在しない。
流路フォンティブレにあるエブロ川の水源

エブロ川の水源はカンタブリア州フォンティブレ(スペイン語版)にあり、この町の名称はラテン語の「Fontes Iberis」という単語に由来している。水源の近くには河川を堰き止めて形成された巨大な人造湖であるエブロ貯水池(スペイン語版)がある。エブロ川上流部はカスティーリャ・イ・レオン州ブルゴス県の岩がちな峡谷を通って東に向かって流れる。ラ・リオハ州ナバーラ州に達すると、北方のピレネー山脈や南方のイベリコ山系から多くの支流を集め、石灰岩でできた幅の広い川谷を形成する。ログローニョ付近にあるラムサール条約登録地の「ラス・カニャス貯水池」と塩湖の「ラグアルディア湖群(英語版)」にはゴイサギムラサキサギサンカノゴイブロンズトキカイツブリカンムリカイツブリなどの鳥類が生息している[4][5]

アラゴン州に入り、谷の幅が拡大して水量が増すと、エブロ川の流れは遅くなる。ピレネー山脈中央部やイベリコ山系から大きな支流を集めるが、特に山脈に積もった雪が解ける季節である春季には大量の水がエブロ川に流れ込み、流域最大の都市であるサラゴサではかなりの水量となっている。サラゴサ市街地にはエブロ川に面してヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂が建っている。サラゴサの下流部の流域一帯にはラムサール条約登録地の「サスタゴ=ブハラロス塩類平原(スペイン語版)」と「チプラナ塩湖(スペイン語版)」がある[6][7]

カタルーニャ州に入るとエブロ川の谷は狭くなり、山地の存在によって蛇行することを強いられる。この地域にはメキネンサ・ダム、リバ・ロハ・ダム、フリシュ・ダムなど大規模なダムがいくつも建設されている。流路の最後の部分に近づくと南に向きを変え、壮大な峡谷の中を流れる。カルボー山地にある巨大な石灰質の崖の中を流れ、この峡谷はエブロ川の谷と地中海岸地域を分離している。峡谷を抜けるとトルトーサ付近で東に向きを変え、アンポスタでエブロ・デルタに入る。海に向かって突き出したエブロ・デルタを数十キロメートル流れた後、トルトーサ岬で地中海に注ぐ。
エブロ・デルタ鳥趾状三角州であるエブロ・デルタの衛星写真

カタルーニャ州タラゴナ県の河口部にはエブロ・デルタ(英語版)と呼ばれる三角州が形成されており、その面積は340km2、地中海西部地域最大規模の湿地の1つを形成している。行政区画はバッシ・エブラ(カタルーニャ語版)、ムンシアーテーラ・アルタの3つのコマルカを跨ぎ、テレス・デ・レブレ(カタルーニャ語版)という地域をなしている[8]。4世紀の湊は現在のエブロ川河口からかなり内陸に遡った位置にあった。デルタは下流にむかって急速に拡大しているが、それは現在では河口から数十キロメートル内陸にあるアンポスタの町がかつて港町だったことで明らかである。デルタの丸みを帯びた形状は、エブロ川の流れによる土砂の堆積が波の浸食による土砂の後退より多いことで形成されている。先端部はブダ島(スペイン語版)と呼ばれている。

今日のデルタでは集約的農業が行われており、コメ、特に柑橘類などの果物、野菜を栽培している。リモニアストルム属(英語版)、ジゴフィルム属(英語版)などが生える数多くの砂浜、湿地、塩沼があり、300種以上の鳥類の生息地となっている。1983年、スペイン政府は自然資源を保護するために、エブロ・デルタの大部分をエブロ・デルタ自然公園(英語版)に指定した[9]。また、1993年にラムサール条約登録地となり[10]、2013年にカロ山(カタルーニャ語版)を含む、ヨーロッパアカマツ、イチゲイチヤクソウ(英語版)、ヒメハナワラビ(英語版)、コトネアステル・インテリガーリムス(英語版)などが生える周辺のイベリコ山系、ポルツ・デ・トルトーサ=ベセイト山脈(カタルーニャ語版)、カルドー山脈(カタルーニャ語版)、ティビッサ山脈(カタルーニャ語版)、セニア川(スペイン語版)流域、サン・ジョルディ湾(カタルーニャ語版)、ムンシアー山脈(カタルーニャ語版)などと共にユネスコ生物圏保護区に指定された[8]。農業団体と保全団体によって建設された運河と灌漑水路のネットワークは、エブロ・デルタの生態系保護や経済的資源の維持を支えている。
地理
地質

カルスト地形の地質学的形成過程は、古代の海底で形成された大規模な石灰岩の岩盤の可溶性炭酸塩岩の層という景観を形作った。アラゴン地方に因んで命名された鉱物のアラゴナイトは、エブロ川流域中央部に炭酸塩が豊富にあることを証明している。流域の大部分の土壌は元来やせており、石灰質で小石や石が多く、しばしば塩分濃度の高い内陸湖の存在で塩分を有している。
気候

ラ・リオハ州ナバーラ州などの上中流部は大西洋からも地中海からも遠い場所にあり、海風は周囲の山地によって隔てられるため、気候はだんだんと大陸性気候となる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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