エフェクター
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この項目では、音響効果機器について説明しています。タンパク質に結合する小分子については「エフェクター (生化学)」をご覧ください。

エフェクターは、日本では何らかの効果(エフェクト、: Effect)を与えるもの、ここでは特に音響効果を与える目的で使用される機器のことを指す。EFXとも略される。和製英語であり、英語では(effects unit (pedal))エフェクツユニット、エフェクツペダル、俗称ではストンプボックス(stomp box)などと呼ばれている。

電気楽器電子楽器など電気信号に変換された、あるいはマイクロフォン(マイク)で集音された音声に対して、スピーカーまたは録音媒体に至るまでの途中に挿入して一定の効果を与え、さまざまな音に変化させる。

効果音」もエフェクトの一種であるが、効果音を作り出す機器はエフェクターとは区別されている。
概要

エフェクト処理の実装には、磁気テープばね、金属板などの機械的機構、アナログ電子回路デジタル電子回路デジタルシグナルプロセッサ)、コンピュータ上で実行するソフトウェアプログラムなどが用いられる。機械的機構やアナログ回路によるエフェクタをデジタル信号処理によって模擬的に再現する例もある(デジタル・スプリング・リバーブ、真空管アンプシミュレータなど)。
単機能エフェクターとマルチエフェクターギター用エフェクト・ボードの例プレイヤーが自分で気に入ったエフェクターを並べて組んだボード。
接続順:チューナ→コンプ→ピッチシフタ→ワウペダルオーバードライブディストーションファズEQ→トレモロギター用マルチエフェクター


エフェクター44種内蔵 (同時13種)

直接いじれるツマミ は アンプ系×7,エフェクト系×7,それ以外の操作はボタンやダイヤルで行う。

外部エフェクト・ボードを併用可能。

形態についても、演奏家が使用する手のひら大の「コンパクトエフェクター」から電気録音PAで汎用的に使用され、規格化された幅のラックに収納する「ラックマウント型」、DAWソフト上で動作させるプラグインミキシング・コンソールシンセサイザーあるいはカラオケに「内蔵」されたものまで多様である。

歴史的には、もともと単機能のエフェクターを必要により複数つなぎ合わせて使用していたが、デジタル回路技術の進歩により複数のエフェクト機能を1つに実装した「マルチエフェクター」も一般的になってきた。単機能エフェクターをつなぎ合わせた場合と比べると、(1)より少ないスペースで済む、(2)複数の機能を組み合わせるのが容易、(3)各種の設定や接続順などが複数通り記憶できそれらが一瞬にして切り替えられる、などのメリットがあるが、単機能エフェクターに比べて操作性に劣る、あるいは要求する音質と違うなどの理由で、単機能エフェクターを複数つなぎ合わせるケースも見られる[1]。また、こうした単機能エフェクターをアンプも含めて自在にパッチングしセッティングを記憶できるラインセレクタやスイッチングシステムと呼ばれるものもある。

現在もギタリストがステージ上でプレイする上で、ノイズが発生するリスクを知りながら、複数のデジタル・エフェクターが一体化したものを避け、古い操作形態の様々なエフェクターを複数台(ボードなどといった形式で)接続している例があるが、これは観客のいないリハーサルやサウンドチェック時と多くの観客の入った本番では会場の反響など聞こえる音の状態が変わる時があり、その時々の他の楽器とのバランス、ギタリスト本人のコンディション、時にはエフェクターへの供給電圧の変化などといったアクシデントに応じて、操作を変える必要が出た際に、プリセット式や順に操作機能やパラメーターを呼び出す従来のデジタル式のエフェクターでは即座に対応しきれないケースがあるからである[1]。またこうした問題に対応するため、デジタル式のエフェクターの中にはステージ上での操作性を重要視した機種もある。
別称

いくつかの別称があり、録音では「アウトボード」と呼ぶこともある。ギターなどの楽器専用のものについては、「アタッチメント」ともいう場合も多い。
分類

中間的なもの、複合的なものなど様々なエフェクターが存在するため分類は困難である。従って本頁の分類は便宜的なものである。また実際の機器ではこの解説の範囲に収まらず様々な工夫が凝らされている場合がある。

入力された音を加工することがエフェクターの主旨なので、「入力された音」を「原音」と表記する。
レベルの制御

原音の音量の最大と最小の差(ダイナミクス)を圧縮するもの。過大な入力による機材へのダメージを防いだり、ほぼ一定の音量へ調整する。
リミッター
音量が予め設定した一定の値(スレッショルド、閾値)を超えた場合、音量を絞ることで過大な信号レベルにならないようにするもの。機器の物理的破壊を避けたり、音の歪みを避けながらなるべく高い平均レベルを出したりするのに用いる。
コンプレッサー
音量の変化幅を圧縮(コンプレッション)し、音量のバラつきを抑えるもの。例えば発音時のレベルの高い部分を潰して全体のレベルを揃えたり、減衰音のレベルを持ち上げることによって伸びのある音にしたりできる。パラメーターの設定によってはリミッター同様の使い方も可能である。エキスパンダーコンプレッサーとは逆に音量の変化幅を大きくする。音の減衰を速くしてキレを良くしたり、強弱を誇張して躍動感を与えたりする。
ボリュームペダル
一般的にオーディオ機器の音量を決めるボリュームと同じ。
特定周波数帯のレベル制御

原音に含まれる任意の周波数帯域の増幅や減衰をおこなうもの。ギター用グラフィックEQの例会場音響のグラフィックEQ
(画面中央右, 30素子×2)
イコライザー
特定の周波数帯域を強調あるいは減衰させる処理。ごく大雑把には、オーディオ・アンプのトーン・コントロールを、より精緻な調整ができるように拡張したものと考えてもよいだろう。イコライザーにはパラメトリック型とグラフィック型があり、用途に応じて使い分けられる。原理的にはフィルターと同じ。パラメトリック型は、周波数帯域のゲインの他、中心周波数及び帯域幅を個別に設定でき、それらを複数並べて複数の周波数帯域に対応する製品が多い。用途としては、余分な帯域のピンポイント・カットから、幅広い帯域のバランス調整まで、豊富なパラメータを生かした柔軟な音作りに活用される。またデジタル処理全盛の今日でも、アナログ機材固有の色づけを好んでマスタリングや録音に積極活用する例もある。グラフィック型は、中心周波数と帯域幅は固定で、ゲイン調整を周波数帯域の数だけ並べた仕様である。現在主流の製品はゲイン調整にスライダーを採用し、設定を視覚的に把握できるので「グラフィック・イコライザー」と命名されている。周波数帯域の数は素子数と呼ばれる。パラメトリック型と比べ自由度が低いので、ざっくりとした調整に使用される。コンパクトな楽器用機材では、倍音調整を目的に約1オクターブ間隔で分割した10素子以下の製品が多い。また会場音響 (PAやSR)では、周波数特性改善(およびハウリング・ポイントやデッド・ポイントの解消)を目的として、1/3オクターブ分割30素子程度の機材が使われる。
フィルター
特定の周波数以上または以下など、一部の帯域を増幅または減衰させる処理。原理的にはイコライザーも複数フィルターの組み合わせであるが、特定の帯域への細かな微調整に向くイコライザーとざっくり全体的な帯域バランスを変更し音作りするためのフィルターという用途の違いで呼び分けられている。操作する帯域に対応して分類される。ハイパス(ローカット)- 設定周波数より高音を残し低音を強く減衰させる。ローパス(ハイカット)- 設定周波数より低音を残し高音を強く減衰させる。ハイシェルフ - 設定周波数より高音を棚(Shelf)状に増幅または減衰する。ローシェルフ - 設定周波数より低音を棚(Shelf)状に増幅または減衰する。ティルト - ハイシェルフとローシェルフを組み合わせて斜面(Tilt)状に片方を増幅させもう片方を減衰させる。バンドパス - 設定周波数周辺を帯(Band)状に残しそれ以外を強く減衰させる。ノッチ(バンドストップ) - 設定周波数周辺だけを刻み目(Notch)状に強く減衰させる。コム - 設定周波数とその奇数倍周波数の周辺を櫛(Comb)状に強く減衰させる。ピーク(ベル) - 設定周波数周辺だけを山(Peak)または鈴(Bell)状に増幅または減衰させる。イコライザーの一般的なフィルター形状であるためピークフィルターと呼ばれることは少ない。
エンハンサー
イコライザーが、原音に含まれる音を直接ブーストしたりカットしたりするのに対し、エンハンサーは音を歪ませ倍音を作り出して、実音にミックスするもの。
ワウペダル
車のアクセルペダルのような筐体に付けられた可変ポットを足で操作する事により、増幅される周波数帯を変えるもの。文字通り「ワウ・ワウ」と聞こえる。
オートワウ
原音の音量に準じ増幅される周波数帯を変えるもの。ペダル動作では不可能な細かくリズミカルな「ワウ」音を得られる。
ディエッサー
高音領域に特化したコンプレッサー。ボーカルのサシスセソやツなど所謂歯擦音は耳障りになりやすいため、フィルターで高音域を分割しそこだけにコンプレッサーをかけ歯擦音を小さくする。原理上はマルチバンドコンプレッサーと同じだが、コンプレッサーの動作トリガーだけ高音域にしてコンプレッサー自体は全帯域にかける事で歯擦音の音質を保ったり、マルチバンドコンプレッサーより高精度な専用の歯擦音検出アルゴリズムを搭載していたりと、動作原理を工夫しているものも見られる。ボーカル用エフェクターであるがそれ以外に使っても耳障りなアタックを軽減できる。
トーキング・モジュレーター


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