エニューオー(古希: ?νυ?, En??, 「恐怖」の意)は、ギリシア神話における女神またはダイモーンで、長母音を省略してエニュオとも表記される。
主に2人が知られており、以下に説明する。 殺戮および戦闘の女神で、エニューアリオス(戦いの神アレースの別名)の女性形である[1]。ギリシア神話の争いの女神エリスと同一視されている。またローマ神話のベローナと同一視されている[2]。
殺戮の女神エニューオー
パウサニアース『ギリシア案内記』1巻8章4節では、アテーナイのケラメイコスにはアレースの神殿があり、祭神アレース像、アプロディーテー像、アテーナー像と並び、プラクシテレースの息子たちが制作したエニューオー像があったとされる。 ポルキュースとケートーの娘であるグライアイ姉妹の1人で、ゴルゴーンの姉妹でもある。 ヘーシオドスの『神統記』ではグライアイはペンプレードーとエニューオーの姉妹であり、頬美しい老女で灰色の髪をしており、エニューオーはサフラン色の衣を纏っている[5]。 ヒュギーヌス『神話集』序文ではペンプレードー、エニューオー、ペルシス(またはデイノーン)の姉妹、アポロドーロス『ビブリオテーケー』ではペンプレードー、デイノー、エニューオーの3人の姉妹をグライアイと呼び、生まれながらに老婆で、3人は一つの目と一つの歯を持ち、互いに共有していたが、ゴルゴーン退治のため英雄ペルセウスは「翼のあるサンダル・キビシス(ゴルゴーンの首を入れるための袋)ハーデースの兜を持つニュンペーの居場所」を尋ねるため、彼女たちの目と歯を奪い、道を示すまで返さなかった[6]。 詳しくはグライアイの項を参照。
グライアイのエニューオー
脚注^ 呉茂一『ギリシア神話(上)』新潮文庫、247頁。
^ a b 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.69a。
^ ホメーロス『イーリアス』5巻333。
^ ホメーロス『イーリアス』5巻590-595。
^ ヘーシオドス、270行-273行。
^ アポロドーロス『ビブリオテーケー』2巻4・2。
参考文献
アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
ヘシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波文庫(1984年)
ホメロス『イリアス(上)』松平千秋訳、岩波文庫(1992年)
パウサニアス『ギリシア案内記』 馬場恵二
ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』 松田治・青山照男 訳 講談社学術文庫
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)
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