Oenanthotoxin
優先IUPAC名(2E,8E,10E,14R)-Heptadeca-2,8,10-triene-4,6-diyne-1,14-diol
別称Enanthotoxin
識別情報
CAS登録番号20311-78-8
86 °C, 359 K, 187 °F
危険性
半数致死量 LD500.58 mg/kg for mice
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
エナントトキシン(英: oenanthotoxin)は、エナントサフラン(Oenanthe crocata)やその他のセリ属(Oenanthe) 植物から抽出される毒素である。中枢神経系の毒で、神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸の非競合アンタゴニストとして作用する[1]。古代サルデーニャでは、当地のセリに含まれるこの毒素が安楽死に用いられていた[2][3]。エナントトキシンは1949年に、Clarkeらによって結晶化された[4]。構造的には、シクトキシン[5]やファルカリノール[6][7]と非常に近い。 植物中のエナントトキシンの濃度は季節の変化や地理的条件に依存するが、冬の終わりから春の初めにかけて最も高くなる[8]。有毒な植物の多くが苦味や灼熱感を伴うのに対し、むしろ甘く心地よい味と匂いを持ち[9]、空気に触れることで色が変わる黄色い液体が特徴的である[1][9]。根が最も毒性が高いが、植物全体が有毒である[8][10]。 エナントトキシンを含む植物の発見と利用はソクラテスやホメロス以前にまでさかのぼり、毒物としての最初の利用は紀元前1800年から紀元前800年の間、ローマ時代以前のサルデーニャで行われたと考えられている[9][11]。古代サルデーニャでは、人道的な安楽死の手段と考えられていた。自分の身の回りの世話ができない高齢者はこの毒を含むセリが投与され、確実に死に至らせるために高い岩から突き落とされた[9][11]。また、ソクラテスの処刑の際にこの植物の摂取が行われたとも言われている[12]。 エナントトキシンの一般的な症状は痙笑 エナントトキシンは比較的よく知られた毒素であるが、その作用機序は完全には理解されていない。その作用機序はシクトキシンのものと類似しているという証拠が存在する。 エナントトキシンはC17共役ポリアセチレンの1つであり、中枢神経系においてγ-アミノ酪酸(GABA)の非競合阻害剤として作用する。GABAは中枢神経系のGABAA受容体のβサブユニットに結合して受容体を活性化し、塩化物イオンの細胞膜を越えた流入を増加させ、神経細胞の活動を阻害する[1]。
産出
歴史と文化
作用機序