エナンティオルニス類
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反鳥類
Enantiornithes
エナンティオルニス
分類

:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
階級なし:尾端骨類 Pygostylia
階級なし:反鳥類 Enantiornithes

学名
Enantiornithes
Walker, 1981
和名
反鳥類
異鳥類
サカアシチョウ類
英名
Opposite birds
下位分類群


イベロメソルニス形類

アレクソルニス形類

プロトプテリクス形類

ロンギプテリクス形類

カタイオルニス形類

ゴビプテリクス形類

反鳥形類

エナンティオルニス類(エナンティオルニスるい、学名: Enantiornithes)もしくは反鳥類 (はんちょうるい)、異鳥類 (いちょうるい)、サカアシチョウ類は、尾端骨類に属する恐竜の一群である。
概要

白亜紀に繁栄した原始的な鳥翼類のグループである。

エナンティオルニス類の多くはを持ち、前足にはを残していた。50種類以上のエナンティオルニス類が記載されているが、そのいくつかはきわめて断片的な化石にもとづいている。エナンティオルニス類はK-Pg境界大量絶滅において、ヘスペロルニス類やその他の非鳥類恐竜とともに直接の子孫を残すことなく絶滅した。

現在の通説では、エナンティオルニス類は現生の鳥類を含む真鳥亜綱と並列する姉妹群であり、独自の亜綱として鳥綱の中に含められるのが一般的である。このことは、エナンティオルニス類が鳥類の進化史においてある程度成功したグループであり、現生鳥類の系統とは別個に分化した外群であることを意味している[1][2]。エナンティオルニス類は始祖鳥孔子鳥よりは進歩的であったが、現生の鳥類(真鳥類)よりははるかに原始的な特徴を残していた。このことから、彼らは鳥類の進化において過渡的な存在であるとされている。
発見と命名

1970年代に見つかった最初のエナンティオルニス類の化石は、当初は真鳥類として記載された。1981年にシリル・ウォーカーによって、アルゼンチンから見つかった部分的な化石をもとに、エナンティオルニス類は現生の鳥類とはまったく別の系統であることが示された。1990年代以降、より完全な形をしたエナンティオルニス類の骨格が発見され、単に「白亜紀の原始的な鳥類」とされてきた標本のいくつか(イベロメソルニス(英語版)、カタイオルニス(英語版)、シノルニス(英語版)など)がエナンティオルニス類に属することが判明した。Enantiornithesとは古代ギリシャ語のenantios(?ναντ?ο?)「逆の、反対の」とornis(?ρνι?)「鳥類」からなる造語で、逆の鳥類を意味する。この語はエナンティオルニス類を再発見したウォーカーの論文の中で定義された[3]。この論文の中で彼は「エナンティオルニス類と現生鳥類の最も根本的・特徴的な違いは肩甲骨烏口骨の間にある関節面の形状にある」と述べている[3]。この記述はエナンティオルニス類の一つの特徴?肩甲骨と烏口骨の関節面において烏口骨側が瘤状に突出し、肩甲骨側が皿状に窪んでいることーを指している。現生の鳥類ではこの凹凸の組み合わせが逆になっている[4]

ウォーカー自身はこの論文のEtymologyの部分においてなぜこのような名前をつけたのかはっきりと説明していない。この点は後続の研究者たちを混乱させている。例えば、アラン・フェドゥーシアは1996年の著書の中で「“逆の鳥類”と命名されたのは、中足骨が現生の鳥類とは逆に近位から遠位に向かって融合していくことに由来する」と述べている[5] (和名の“サカアシチョウ類”はこの記述に由来する)[6]。フェドゥーシアの「中足骨の融合」についての指摘は正しいが、ウォーカー自身は何の理由づけをしていない。ウォーカー自身はエナンティオルニス類の中足骨の融合が現生鳥類と逆であることについて何も触れていない。また化石の保存状態が悪いため、エナンティオルニス類が本当に三骨間孔(Triosseal canal)(肩甲骨・烏口骨・叉骨が集まる箇所にできる孔。そこを烏口上筋からの腱が通る)を持っていたかどうかは不確実である[1]
特徴

多くのエナンティオルニス類の化石はきわめて断片的なもので、種によっては骨一本のみしか知られていないというものもある。一方、完全な全身骨格と軟体部まで保存された標本がスペインクエンカ県のラス・オヤスと中国遼寧省の義県層から知られている。ラス・オヤスの化石は海成層から、遼寧の化石は内陸の陸成層から見つかっており、このグループの生息域は内陸部から海辺まで広がっていたことがわかる。エナンティオルニス類の生活様式は渉禽類のように水辺に生息するものやウミスズメのように潜水するもの、アジサシのような魚食性のものから猛禽類のような肉食性と、さまざまなバリエーションに広がっていたことが判明している。最小のエナンティオルニス類はスズメほどの大きさであった。アヴィサウルスなどはこれよりも大きく、翼開長は1.2m(カモメとほぼ同じ大きさ)と推定されている。
頭骨カタイオルニス(英語版)の頭骨

エナンティオルニス類の多様な生活様式は頭骨の形に反映されている。エナンティオルニス類の頭骨は原始的な特徴と進歩した特徴が共存している、きわめてユニークなものとなっている。始祖鳥のような祖先的な鳥類は、後眼窩骨と前上顎骨を保有しており、にはを残している場合が多い。ゴビプテリクス(英語版)のようなエナンティオルニス類のいくつかの種では完全に歯が残っていた[7]

エナンティオルニス類は食性と生活様式にあわせて多様な体型に進化した。エナンティオルニス類のは祖先的な鳥類に比べれば進歩的である。例えば、エオアルラヴィス(英語版)は空中での操縦性を増すための小翼を持っていた。あるエナンティオルニス類の化石は後足に翼のような羽毛の房を持っていた[8]。後足の羽毛は四翼の恐竜・ミクロラプトルを連想させるが、エナンティオルニス類のそれはより短くバラバラで、にわずかに生えているに過ぎない。

クラークほか(2006)は全てのエナンティオルニス類の化石を調査し、そのどれもが現世の鳥類のような揚力を発生させる扇型のを持っていなかったことを明らかにした。また、真鳥類の全ての外群では尾部の羽毛には短い雨覆羽と一対の長く伸びた飾り羽しか持っていないことを発見した。このように彼らは、エナンティオルニス類における尾端骨の発達は必ずしも現生鳥類のような尾羽の発達を意味しているのではなく、単に尾を縮小させただけであったとしている。真鳥類の一種であるイシアノルニス(英語版)は扇形の尾羽をもった最初期の鳥類として報告された[9]。しかし2009年になり、現生鳥類に似た扇形の長い尾羽をもったシャンウェイニアオ(英語版)と呼ばれるエナンティオルニス類が報告された[10]。エナンティオルニス類の尾部の形状がどのようなものであったか、いまだに議論されている。
起源と生息年代

エナンティオルニス類は北アメリカ南アメリカヨーロッパアジアオーストラリアから見つかっている。このグループは白亜紀に生息し、K-Pg境界において非鳥類恐竜とともに絶滅したと考えられている。1990年代の生物地理の研究では、エナンティオルニス類の地理的分布からジュラ紀中期に出現したものとされていたが、この学説は古生物学者にはひろく受け入れられなかった。むしろ多数の古生物学者は化石記録などからして、エナンティオルニス類はジュラ紀後期?白亜紀前期にかけて出現したものだと考えている。最初期のエナンティオルニス類は白亜紀前期のスペイン (ノグエオルニス(英語版)。祖先的な種)と中国 (プロトプテリクス(英語版))から知られている。最後のエナンティオルニス類は白亜紀後期の北アメリカと南アメリカから知られている(アヴィサウルス)。汎世界的な分布は、エナンティオルニス類はすでに大洋を渡るだけの飛翔力を身につけていたことを意味する。彼らは汎世界的に分布した最初の鳥類でもある。

もしかするとエナンティオルニス類は渡りを行っていたかもしれない。しかし、中生代は現在よりもはるかに温暖な気候であり、彼らの生息していた地域は熱帯ないし亜熱帯であったと考えられるため、現生の鳥類のように渡りを行う必要性はなかったかもしれない。ロンギプテリクス(英語版)の化石。香港科学博物館蔵。


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