エタン
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この項目では、有機化合物について説明しています。競走馬については「エタン (競走馬)」をご覧ください。

エタン

一般情報
IUPAC名Ethane
分子式C2H6
分子量30.07
組成式CH3
形状無色無臭の気体
CAS登録番号74-84-0
SMILESCC
性質
密度1.282 kg/m3, 気体(15 C, 1 atm)
0.5480 g/cm3, 液体(at -90oC,1 atm)[1]
水への溶解度4.7 mg/100 mL ( ℃)
融点-183 °C
沸点-89 °C
pKa50
出典国際化学物質安全性カード

エタン(: ethane)は、アルカン群に属する炭素数が2の有機化合物である。分子式は C2H6、構造式は CH3-CH3 で、メタンに次ぎ2番目に簡単なアルカンであり、異性体は存在しない。水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすいという性質を持つ。可燃性の気体であり、日本では高圧ガス保安法の可燃性気体に指定されている。
歴史

1834年、マイケル・ファラデーによって酢酸カリウム水溶液の電気分解により合成されたのが最初である。しかしこの当時はメタンが合成されたものと考えられていた。1847年から49年にかけ、ヘルマン・コルベエドワード・フランクランドがファラデーの手法を用いて、また有機ラジカル理論を用いてプロピオニトリルヨウ化エチルとを金属カリウムで還元することでエタンを合成した。しかしこの時も生成物がエタンだとは考えられていなかった。この間違いは1864年にCarl Schorlemmerによって発見され、エタンの存在が明らかとなった。

エタンという名前はエーテル(ジエチルエーテル)が起源である。
化学的性質

一般的なアルカンの性質を持つ。すなわち、酸化剤還元剤塩基とはほとんど反応しないが、光の照射による置換反応燃焼などの反応を起こす。詳細はアルカンの項を参照。
燃焼

エタンを完全燃焼させたときの燃焼熱は1561 kJ/molであり、完全燃焼により二酸化炭素を発生する。 C 2 H 6 + 7 2 O 2 ⟶ 2 C O 2 + 3 H 2 O + 1561 k J / m o l {\displaystyle {\rm {C_{2}H_{6}+{\frac {7}{2}}O_{2}\longrightarrow 2CO_{2}+3H_{2}O+1561kJ/mol}}}

燃焼は複雑に連続したラジカル反応により起こる。計算化学反応速度論について計算すると、数百種類の反応経路が考えられるという結果が出た。その中でも重要な連続反応として、エチルラジカルと酸素との結合、それに続く過酸化物の生成、その分解によるエトキシラジカルとヒドロキシルラジカルの生成が挙げられる。 C 2 H 5 ∙ + O 2 ⟶ C 2 H 5 OO ∙ {\displaystyle {\ce {C2H5\bullet +O2->C2H5OO\bullet }}} C 2 H 5 OO ∙ + HR ⟶ C 2 H 5 OOH + ∙ R {\displaystyle {\ce {C2H5OO\bullet +HR->C2H5OOH{}+\bullet R}}} C 2 H 5 OOH ⟶ C 2 H 5 O ∙ + ∙ OH {\displaystyle {\ce {C2H5OOH->C2H5O\bullet +\bullet OH}}}

酸素が不足した際には不完全燃焼が起こり、一酸化炭素ホルムアルデヒドが生成する。このような炭素1つを含む物質を生成するためには、エタンのC-C結合を切る必要がある。これにはエトキシラジカルが分解し、メチルラジカルとホルムアルデヒドを生成するという経路が挙げられる。これらの生成物は更なる酸化により別の化合物へと変化することとなる。 C 2 H 5 O ∙ ⟶ CH 3 ∙ + CH 2 O {\displaystyle {\ce {C2H5O\bullet ->CH3\bullet +CH2O}}}

不完全燃焼では他にアセトアルデヒドメタンメタノールエタノールなどが少量生成する。600–900℃の高温では、エチレンが主な生成物となる。 C 2 H 5 ∙ + O 2 ⟶ C 2 H 4 + ∙ OOH {\displaystyle {\ce {C2H5\bullet +O2->C2H4{}+\bullet OOH}}}

同じような反応がエタンからエチレンを製造する際のクラッキング法として利用されている。
製造

工業的製法については一般的なアルカンと同様、石油分留することで得られる。詳細はアルカンの項を参照。

エタンは天然ガス中でメタンの次に多く含まれる成分である。1960年代の始めには、天然ガスから得られたエタンはメタンと分離されることなく使われていたが、この頃は燃料として燃やされる用途が主であった。しかしそれ以降、エタンは重要な石油化学原料となり、天然ガス中から分離される最も重要な成分の一つとなっている。またエタンは石油ガス中からも、製油の際の副生成物として得られる。

エタンとメタンを分離する際には、極低温にした液体を分留するという手法が用いられる。様々な冷却法が存在するが、混合物を急激に膨張させることで温度を下げるという手法が最も効率的であり、天然ガスから90%以上の割合でエタンを得ることができる。この時は冷却ガスをタービンに通すことで膨張させる。このときの温度は約−100℃である。このときガス状のメタンは液体のエタンから取り除かれ、液体となっている他のアルカン類は分留により分離される。

研究室レベルでは、コルベ電解により得られる。具体的には酢酸塩水溶液を電気分解する。アノードでは酢酸が酸化されて二酸化炭素とメチルラジカルを生成する。このメチルラジカル同士が反応してエタンが生成する。 CH 3 COO − ⟶ CH 3 ∙ + CO 2 + e − {\displaystyle {\ce {CH3COO^{-}->CH3\bullet +CO2{}+{\mathit {e}}^{-}}}} CH 3 ∙ + ∙ CH 3 ⟶ C 2 H 6 {\displaystyle {\ce {CH3\bullet +\bullet CH3->C2H6}}}


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