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エアロゲル(英: aerogel)は、ゲル中に含まれる溶媒を超臨界乾燥により気体に置換した多孔性の物質である。
エアロゲルのうち、よく知られているシリカエアロゲルは非常に低密度の固体で、高い断熱性など際だった特性をもつ。半透明な外見から「凍った煙」や「固体の煙」などと呼ばれることもある。 一般的なシリカエアロゲルは二酸化ケイ素の骨格と90 - 98 %の空気で構成され、密度は10 - 150 mg/cm3のものが多い。もっとも低密度の固体として記録されているのはアメリカのローレンス・リバモア国立研究所により作られたシリカエアロゲルで、1.9 mg/cm3の密度、水の1 / 530の比重を記録した。触ると発泡スチロールのような感触がある。一軸方向にやさしく押しただけでは跡を残さないが、強く押すと元に戻らないへこみを生じる。十分に強く押すとガラスのように粉々に崩壊する。壊れるときは粉々になる一方で、自重の2,000倍もの重さを支える強度をもつものもある。曲げに対しては非常に脆く、すぐに折れる。 内部は網目状の微細構造となっており、透明なものでは数2 - 20 nmの球状体が結合したクラスター構造をしている。このクラスターにより形成される骨格間には、100 nmに満たない細孔があり、三次元的の微細な多孔性の構造をしている。密度と平均的な細孔の大きさは作製時に制御できる。 シリカエアロゲルは非常に低い熱伝導率(およそ0.017 W/(m・K))を持ち、優れた断熱性を示す。融点は1,200 ℃。この高い断熱性は、熱が伝わる方法である対流、伝導、放射の3方法のほとんどを遮断することにより実現している。対流による伝熱は、細孔径が空気の平均自由行程より小さく、対流できないことにより抑制され、伝導による伝熱は、シリカエアロゲルの場合、原料である二酸化ケイ素の熱伝導性が低いことにより抑制される(金属エアロゲルの場合、固相の伝熱により熱伝導抑制効果はシリカエアロゲルに劣る。)。シリカエアロゲルは赤外線を良く吸収する。建築物に使えば、太陽熱の入射を抑えたまま採光することができる。カーボンなどを混ぜればよりよく赤外線を吸収するため、カーボンファイバーを加えたシリカエアロゲルなども研究されている。 シリカエアロゲルは表面のヒドロキシ基により親水性が高く、強力な乾燥剤としての特性ももつ。化学処理を施すことにより疎水性にすることもできる[3]。水分を吸着すると収縮など構造変化を起こして透明度が劣化するが、疎水性にすることで劣化を防ぐことができる。内部まで疎水性のあるエアロゲルは表面だけを疎水性に処理したものに比べ、表面より深い傷がついても劣化を防止できる。また、ウォータージェットを使用できるため、加工が容易になる。 近年は、二酸化ケイ素の分子ネットワークにメチル基などの有機鎖を導入し、処理なしでも高い疎水性をもつ有機?無機ハイブリッドエアロゲルも研究されている。これらのエアロゲルは純粋な二酸化ケイ素からなるものとは異なった物性を示す。高い柔軟性をもち、超臨界乾燥を使わずに乾燥させることができるものも作られている[4]。また、エポキシ樹脂などの有機ポリマー分子レベルで複合化させれば曲げに対しても強くなる[5]。 シリカエアロゲルはほとんど空気からできているため、外見は半透明状である。見かけの色は、可視光の短波長部がナノサイズの格子構造によりレイリー散乱することにより決まる。
概要の課題に挑戦した、スティーブン・キスラー(英語版)により1931年に発明され、ネイチャーで発表された[1]。最初に置換に成功した物質はシリカゲルだったが、同じ論文の中でケイ素、アルミナ、酸化クロム、酸化スズも報告されている。その後、さまざまな物質で作製されるようになった。カーボンエアロゲルは1989年に発明された[2]。
特徴エアロゲルの断熱特性の実演。
シリカエアロゲル