エアボーン
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ロックバンドについては「エアボーン (バンド)」を、イギリスのダービー馬については「ハリーオン系#エアボーン」をご覧ください。
1944年9月、マーケット・ガーデン作戦における空挺降下

エアボーン(英語: airborne)は、航空機により部隊を機動・展開させる戦術輸送機軍用グライダーを使って直接着陸する方法と、パラシュートによる降・投下による方法がある。またヘリコプターを使用するものはヘリボーンとして区別される。

日本語では日本陸軍の造語である「空中挺進(くうちゅうていしん)」または「空輸挺進(くうゆていしん)」を略した「空挺(くうてい)」と称され、陸上自衛隊では「空挺」と言う語をそのまま用いている。「挺進」を「挺身」と書く場合があるが、挺身には「身を捨てる」という意味があり、危険を顧みず自身の身を捨てて敵陣中に降下する姿を形容した語である。
方法
降着地帯

エアボーン戦術において、降着地帯 (Drop zone) を選ぶ際には、接近しやすさや位置、障害物の有無が考慮される[1]。空挺部隊を降下させる輸送機が接近しやすいよう、敵の対空兵器を極力避けるとともに、降着地帯そのものはパイロットからはっきりと視認できる必要がある[1]。このため、地形のほか、特に低高度からの降下の場合は、テレビのアンテナや大きな建物などの人工物も考慮される[1]

降着地帯の位置については任務の指令内容によって決まるが、通常は戦闘の最前線から適度に離れて、敵の間接照準射撃をできるだけ受けない場所に設定される[1]。ごく稀に戦闘地帯に直接降りる場合もあるが、その際には、十分な火力支援によって一帯を制圧しておかねばならない[1]

降着地帯は、着地の際に空挺兵が負傷したり行動を制限されるような障害物がない場所がよい[1]。地面は平らで、窪地や溝、水路、岩石地域がない場所がよい[1]。また1,000メートル以内に水深1.2メートル以上の河川がなく、できれば高さ11メートル以上の樹木もないことが望ましい[1]。頭上の電線は、事前に空爆や妨害工作で破壊しておくか、少なくとも電気が流れないようにしておかねばならない[1]
空挺降下詳細は「空挺兵#空挺降下」を参照

空挺部隊の降下に先立って、小規模な部隊が敵地に潜入し、情報収集や、主力部隊による降下を誘導・援助するための活動を行う[2]。これを行うのがパスファインダー部隊(英語版)で[1]陸上自衛隊第1空挺団の場合は団本部中隊の降下誘導小隊がこれにあたる[2]。少人数で隠密潜入を行うという性格上、降下技術としては高高度からの自由降下を採用する場合が多い[2]。装備にも特殊なものがあり、航空機と連絡するための通信機のほか、T字形の表示で航空機の進入場所を示す対空布板や、上空からでも場所を見つけやすくするための発煙筒、上空の風向・風速を確認するためのバルーンとそれを膨らませるための小型ボンベなどがある[2]

降下誘導部隊の後、空挺部隊の本隊に先駆けて、先遣隊が敵地の後方に空挺降下したのち、地上を徒歩で移動し、防御の要地を占領する場合もある[2]。これに続いて本隊が降下するが、大部隊が降下する場合、降着範囲は1,000?2,000メートルと広範囲に散らばるため、隊員たちは指定された集結場所に向けて移動する[2]。この時点では徒歩での移動が主になるが、順次、別途に投下・降着した車両などの重物料を回収し、戦力を強化していく[2]

自由降下を行うイギリス陸軍パスファインダー小隊

降着地帯を確保したパスファインダー小隊

上空の状態確認用のバルーンの準備

演習において大規模降下を行うアメリカ陸軍部隊

強行着陸マーケット・ガーデン作戦におけるグライダー部隊

第二次世界大戦の時点では、パラシュートによって投下できる兵器は機関銃や軽迫撃砲程度が限度であり、野砲対戦車砲などの重装備を使用するためには、軍用グライダーや、あるいは輸送機強行着陸させて持ち込む必要があった[3]。このような着地方法を採用すれば、重装備を持ち込める他にも、パラシュートによる戦闘降下で生じる降下・着地の際の危険や部隊の分散といった問題をある程度回避できるというメリットもあった[4]。例えば1940年ドイツ国防軍ヴェーザー演習作戦を行った際には、スタヴァンゲルではパラシュート降下した部隊、オスロでは強行着陸した部隊によって飛行場を確保したのち、輸送機によって後続部隊を空輸した[5]。また、その翌月、ベルギーの戦いの開戦劈頭に行われたエバン・エマール要塞の戦いでは、グライダーを要塞上に着陸させて部隊を投入するという作戦も行われた[5]

しかしグライダー部隊は、1機でも撃墜されると大きな損失となり、パラシュート部隊よりはまとまって降着できるとはいってもある程度の分散は避けられない上に、多数のグライダーを着陸させるためには広く平坦な土地が必要であるという制約がある[4]。またグライダー自体が動力を持たないため、曳航機から切り離されて滑空に入ると機動性が乏しく、しかも機体は使い捨てとなるため不経済でもある[4]。このような問題のため、グライダーを使っての空挺作戦は第二次世界大戦のみで終了し[4]、大戦後にはグライダーにエンジンを装着したような強行着陸機が用いられるようになった[3]

その後、下記のように重量物の投下技術が発達すると、グライダーや輸送機を着陸させずとも重装備を投入できるようになった[3]。またヘリコプターの発達によってヘリボーン戦術が実用化されると、兵力の分散や機体の使い捨てなどといった問題も解消された[4]。しかし現在の戦術輸送機の多くは、必要であれば強行着陸機として使うことも可能な設計となっている[3]1976年イスラエル国防軍エンテベ空港奇襲作戦を行った際には、C-130輸送機を隠密・強行着陸させて、特殊部隊とともに装甲車、そしてテロリストに庇護を与えていたアミン大統領の専用車と同じ色に塗装したメルセデス・ベンツ600を降ろして、人質救出作戦を展開した[6]
物料投下詳細は「空中投下#物料投下」を参照


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