エアパワー
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エアパワー(: Air power)とは、一般に官民における航空機、航空要員、研究開発などを含めた航空に関する国家の総体的な能力である[1]。訳語は航空権力、航空力、空軍力など。

「エアーパワー」「エア・パワー」の日本語表記の揺れがあるほか、1959年頃以降は宇宙を含め「エアロ=スペースパワー(Aero-Space Power)」(訳例:航空宇宙権力)の概念について議論がある[2]
概説

エアパワーは国家が保有する潜在的、顕在的な航空に関する力の総称である。

第1次世界大戦後、米陸軍准将ウィリアム・ミッチェル (William Michel) によって初めて概念として提唱され、ランドパワーシーパワーと並ぶ第三の力としてエアパワーと名づけた。

その内容は純粋に軍事的な能力である航空戦力、空軍力だけではなく、航空関連の企業や組織、空港航空機の研究開発、航空機の生産能力、パイロットや技術者の能力、国家の航空関係の政策、国民の理解と支援などを包括するものである。また人工衛星ミサイル技術の発展により近年で宇宙にまでその範囲を拡大しつつあるために航空宇宙力とも呼ばれる[1]
特性
長所

エアパワーは空中において運用される能力であるため、陸海における権力とは本質的に特性が異なっており、地形の制約を殆ど受けないために世界中どこへでも迅速に展開することが可能である。つまりエアパワーはランドパワーやシーパワーと比較して速度、範囲、機動性、突破・打撃能力が圧倒的であり、現代の軍事力の主要な構成要素であると考えられている[3]。また強力なエアパワーは航空産業、ひいては工業へのスピンオフによる国力全体への派生効果が期待できる[4]

長所を整理すると、下記のようになる[5]
即応性
必要な時期及び場所における、迅速な戦力発揮
機動性
速やかな集散離合
柔軟性
様々な用途に対応
行動範囲の広さ、打撃力
核兵器を含む搭載兵器による強大な破壊力
突破力
地形や地物に影響されず、敵の防護を突破可能
短所

エアパワーには欠点も認められる。これは航空機というエアパワーの根幹である航空機が空中に存在するものであるために、隠密行動が困難であり、また金属素材で製造されるためにレーダーに発見され易く、また極めて高価な兵器であるために調達や維持管理の上でも保有機体数が制限される。しかもミサイルなどを被弾すればダメージコントロールをすることも出来ず、また被弾しなくても航空戦で激しい運動による燃料切れなどで、墜落する危険性がある。さらに離着陸には滑走路や航空管制施設などの大規模な支援施設が必要であり、これを担う人材の教育訓練も一朝一夕に達成できるものではない[6]

短所を整理すると、下記のようになる[5]
物理的脆弱性
地上において戦力発揮ができない無力な存在であり、基地依存性が高い
地域占有力の欠落
滞空時間への制約により、ランドパワー(陸上戦力)のような地域の常続的占有が不可能

上記のうち、地域占有力欠落の特性が、「航空優勢(air superiority)」の概念への影響を与えた[5]
脚注[脚注の使い方]^ a b 小川、2000年、p.195.
^ 高橋 2019 p.59
^ 小川、2000年、p.196-197.
^ 石津、マーレー、2006年、p.22-23.
^ a b c 高橋 2019 p.210
^ 石津、マーレー、2006年、p.21.

参考文献

小川修「現代の航空作戦」防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』かや書房、2000年、pp.195-212.

石津朋之ウィリアムソン・マーレー編『21世紀のエア・パワー 日本の安全保障を考える』芙蓉書房出版、2006年

石津朋之・山下愛仁編 編『エア・パワー 空と宇宙の戦略原論』日本経済新聞出版社、2019年5月。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4532176600


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