エアガン
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この項目では、実銃としてのエアガンについて説明しています。遊戯銃としてのエアガンについては「エアソフトガン」をご覧ください。
国友一貫斎の空気銃(英語版)。1820?1830年頃の製造

空気銃(くうきじゅう)とは、空気または不燃ガスを用いて弾丸を発射するの総称。子供向けの玩具から、射撃狩猟に用いるものまで、そのバリエーションは幅広い。日本では一般に「空気銃」と呼ぶ場合、公安委員会の所持許可が必要な「実銃」をさすことが多い。この項ではこの実銃としての空気銃を扱う。

英語圏では、一般に空気銃をairgun(エアガン)と称するが、日本で「エアガン」と呼ぶ場合は「エアソフトガン(遊戯銃)」をさすことが多い。
基本的な構造

空気銃の基本的な構造は、空気または不燃性のガスの圧力を用いて弾丸を発射する点においては玩具から実銃まで共通であるが、その圧力を得るための構造において以下のような方式に分類される。
ポンプ式 シングルポンプ(シングルストローク)式の競技用エアライフル、ワルサー LGR(英語版)

ポンプ式は、銃本体に装備されたポンプを用いて蓄気を行い、その圧縮空気を用いて弾丸を発射する構造である。ポンピング(英語版)は本体に装備されたレバーを用いて行う。その装着位置により、主にアンダーレバー、サイドレバーに分類され、一般にサイドレバーは競技用に、アンダーレバーは狩猟用に用いられる。競技用では主に一回のストロークで蓄気を行い、空気圧はレギュレータで一定に制御され、安定した初速を得る構造が一般的である。狩猟用では特にレギュレータは持たず、ポンピング回数を増減することで、使用ペレット(弾丸)の種類や猟場、獲物に応じた初速/威力を選択でき、これをマルチポンプと称する。

一般にポンプ銃は、撃発時に大きな可動部を持たないことから、反動も少なく高い命中精度を持つ。反面、発射ごとにポンピングという大きな動作を要するため速射性に劣る。また狩猟用ポンプ銃では、必要とされる空気圧、空気量ともに大きく、ポンピングには相応の筋力を要求される。日本ではかつて、シャープ(後にシャープ・チバ)製の狩猟用マルチポンプ銃が多く普及した経緯があり、プリチャージ全盛の現在でも愛用者が多い。

プリチャージが主流となったことで、この方式の空気充填に伴うボンベ、ハンドポンプ等の補器類が不要であったり、構造的に壊れにくく丈夫であるというメリットが再評価されることとなり、競技用、狩猟用ともに一定の人気と需要がある。

またこの方式特有のポンピング操作とは別に、撃発のためのハンマー/ストライカーのコッキング操作が必要なもの、ポンピングに連動して行われるもの、コッキング自体不要なものがある。国産のシャープ製エースシリーズおよびイノバはハンマー/ストライカーを持たず、蓄気の圧力で開こうとする排気バルブを直接シアで押さえるという独特の構造を持ち、コッキングは不要である[1]
スプリング式 アンダーレバー型のスプリング式狩猟用エアライフル、Weihrauch(バイラーク) HW97K

スプリング式は、空気銃全体ではもっとも代表的かつ普及した方式であり、シリンダー内に組み込まれたピストンを圧縮したスプリングの反力で前進させ、シリンダー内の空気を圧縮して弾丸を発射する構造である。同様の仕組みを持つ玩具に比べ格段に強いスプリングを使用するため、その圧縮(コッキング)にはテコの原理を応用する。このテコの方式によって、銃身そのものをコッキングレバーとして用いる中折式(ブレークバレル)、独立したコッキングレバーによる方式(サイドレバー/アンダーレバー)に分類される。構造がシンプルで丈夫であり、比較的安価なことから、海外ではプリンキング(気軽な射撃)から狩猟まで広く普及している方式だが、構造上反動や振動が大きく、他の方式と比べると射撃精度の面では劣るとされる。さらに日本ではプリンキングが法制上不可能なこと、優れた国産ポンプ銃が存在したことなどにより、現在はあまり普及していない。 中折スプリング式狩猟用エアライフル、Weihrauch(バイラーク) HW50S

競技用としてもかつては主流の方式であった。撃発時にバレルドアクション全体を後退させることで反動を減殺する構造を持ったファインベルクバウ150/300(ドイツ語版)が競技用エアライフルの世界を席巻したが、ポンプ式競技銃(ファインベルクバウ600)の登場で射撃精度は大幅に向上し、競技におけるスプリング銃の時代は終焉を迎えた。 中折スプリング式エアライフルのコッキング。写真の銃はガスラム方式のベンジャミン トレイルNP/XL。

なお、近年では従来の中折れスプリング方式をベースに、内部にガス圧力で駆動するショックアブソーバー(ガスラム)を内蔵し、スプリングの圧力とガスラムの反発力を併用する事で、音速を超える銃口初速を実現したものも登場しているが、発射の際のピストン作動に伴う衝撃の大きさは変わらないため[2]、ほかの形式とは異なる特性を射手が正しく理解した上で運用しなければ良好な命中精度を得ることは難しいとされる[3]
ガス(CO2)式

ガス(CO2)式は、空気の代わりに圧縮された炭酸ガス(CO2)を用いて弾を発射する方式で、使い捨ての(CO2)カートリッジ(パワーレット(英語版))を銃に装填して使用するものと、親ボンベから専用のシリンダーに充填して使用するものに分類される。前者は主に狩猟用に、後者は競技用に用いられる。

ポンピングやスプリング圧縮といった大きく、力を要する操作が不要であり、速射性に優れ、特に狩猟用では携帯や交換が容易なカートリッジによるパワー供給のメリットは大きい。一方で、炭酸ガスは温度による圧力変化が大きく、特に狩猟では猟期が寒冷な時期であることから、外気温による圧力低下がデメリットとされる。

ガス(CO2)式同様のメリットを持ちつつ、しかも外気温による圧力変化の影響が小さいプリチャージ式の登場と、特に競技射撃の分野では欧州の環境意識の高さもあり(温室効果ガスとしての二酸化炭素放出)、この方式は急速に姿を消した。

ただし、炭酸ガスは工場から排出されるはずだったガスを精製利用しているので、カーボンニュートラルであり環境に悪いというのは誤解である。炭酸ガスを使っても使わなくても最終的な排出量に変化はない。[4]
プリチャージ(圧縮空気)式 プリチャージ式競技用エアピストルの一例、ベネリ カイト(英語版)。ISSF射撃競技における10メートルエアピストル(英語版)競技で用いられたもの。 プリチャージ式エアライフルの一例、エアフォース・エアガンズ(英語版) コンドル。パワーソースにはCO2も選択可能で、世界で最も強力な銃口初速を発揮するエアライフルの一つとされる。

プリチャージ(圧縮空気)式は、銃に装備されたシリンダーにおよそ200気圧に及ぶ高圧空気を充填し、弾丸の発射に用いる方式で、ハンマー/ストライカーで排気バルブを打撃し短時間開放することで、一定量の圧縮空気を小出しに使用する。ポンピング動作や大きな力を要するコッキング操作も不要(ハンマー/ストライカーのコッキングのみ)となり、射手は装薬銃のように射撃に集中することができるようになった。ポンプ式同様、撃発時に大きな可動部を持たない構造は高い射撃精度を持つ。競技用ではストライカーの打撃力だけではなく、レギュレータを装備し発射に使用する空気圧を一定に保つことで、一度の空気充填で多くの弾数を安定した初速で発射できる構造が一般的である。狩猟用では競技用に比べ弾数より威力に重点が置かれることから、レギュレータは装備しないのが一般的で、精密な射撃を行う場合には充填圧の管理が重要となる。

空気の充填には、自転車用空気入れに似た形状のハンドポンプ、あるいは潜水等に用いるボンベに充填した呼吸用の圧縮空気を用いる。ハンドポンプは手軽ではあるが、200気圧に及ぶ高圧空気の充填には相応の労力を必要とする他、充填時に圧縮され高温高圧になった空気から水分が分離することで生じる結露(ドレン)が、シリンダーや銃内部の腐蝕や劣化を招くことがあり、一般的には水分や不純物等を取り除いた呼吸用の圧縮空気の使用が推奨される。

この方式は、非常に高圧の空気を使用するため、気密のためのOリングやパッキン類が多用されている。これらは消耗品であり、たった一つのパッキンの損傷で発射不可能になるなど、デリケートな構造でもある。そのため使用頻度にもよるが、数年ごとのオーバーホールが必要となり、維持管理に手間がかかる方式でもある。

プリチャージには、充填に伴う補器類が必要であったり、構造的にデリケートであったりという欠点は持つものの、その射撃精度や利便性などのメリットは欠点を補って余りあるものであり、現在は競技用、狩猟用ともに主流の方式となっている。 ダイビングタンクにエアライフルのシリンダーを接続した状態 K-DIN変換コネクタ



種類

空気銃の種類はエアライフルとエアピストル(空気拳銃)に大別され、日本独自の銃種としてハンドライフルがある。通常、競技用の口径は4.5mm(英語版)で、狩猟用の口径は4.5mm(177口径)、5.0mm(英語版)、5.5mm(英語版)(22口径)、6.35mm(英語版)(25口径)、7.62mm(英語版)、7.69mmがある。(30口径)

銃砲刀剣類所持等取締法で許可されていない口径は12.7mm(50口径)がある。8mm以上の口径は許可が降りない。
エアライフル

空気または不燃性のガスにより弾丸を発射するライフル銃である。装薬ライフル銃(火薬で弾丸を発射するライフル銃)と同様に銃身にライフル(施条)が切られており、射撃精度が高い。狩猟用・競技用に使用される。海外では無許可で所持できるケースが多いが、日本では厳しい銃刀法の規制下にあり、実技面の教習等が免除となるものの、他の手続きは装薬銃(散弾銃)と同じである。現在は、狩猟用、競技用エアライフル共に、プリチャージ式(圧縮空気式)が主流である。
エアピストル(空気拳銃)

空気または不燃性のガスにより弾丸を発射する拳銃である。方式や構造はエアライフルに準ずる。日本では口径4.5mmの競技用で、日本ライフル射撃協会(以下「日ラ」)が認めた銃のみ使用できる。所持には日ラの推薦が要求され、日ラに所属し、エアライフルもしくはハンドライフルによる一定の実績と段級を取得することが必要になる。許可される総枠が500名と定められており、通常の所持許可とは異なり許可の更新は行われず、2年ごとに新規に推薦を得て所持許可申請をする必要がある。この際、競技参加の実績と所持年数に応じた一定の成績向上が要求され、その条件を満たしていない場合推薦はなされず、したがって所持許可申請もできない。このため500名の枠ではあるが、入れ替わりは激しい。
ハンドライフル


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