ウワミズザクラ
分類
ウワミズザクラ(上溝桜[4]・上不見桜[5]、学名: Padus grayana)は、バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木。別名ハハカ[4]、コンゴウザクラ[4][6]、アンニンゴ[5]、ウワミゾ[5]。サクラの仲間であるが、サクラらしからぬ白い小さな花が房状にたくさんつくのが特徴[5]。よく似たイヌザクラとは、花序枝に葉がつく事などで区別できる。 和名「ウワミズザクラ」は、古代の亀卜(亀甲占い)で上面に溝を彫った板(波波迦)に使われた事に由来する[4][注 1]。また、葉がサクラに似ていることから「上溝桜」となり転訛したとされる[6]。中国名は「灰葉稠李」[1]。 日本と中国(湖北省・四川省・広西省)に分布し[7]、日本では北海道西南部と本州、四国、九州の低地や山地に分布する[8][4][9]。暖地の山野に自生し[7][6]、日当たりのよい谷間、沢の斜面、小川沿い、雑木林など湿潤した環境を好む[5]。 落葉広葉樹の高木で、樹高は約20メートル (m) [4]。樹皮は暗紫褐色でイヌザクラに比べて黒っぽい色をしており、横向きに長い皮目がある[4][9]。老木になると茶褐色を帯び、縦方向にもひび割れて網目状に裂ける[9]。小枝は紫褐色で皮目が多く[9]、側枝の多くは秋の落葉後に落る[9]。樹皮を傷つけると、桜餅のようなクマリンの強い香りがある[5]。 葉は互生し、長さ5 - 12センチメートル (cm) 、幅3 - 5 cm、卵形から卵状長楕円形で先が急に細くなり、縁にはとげ状の鋸歯がある[7][4]。葉柄は長さ1 cmほどで短く、サクラ類の葉柄にある蜜腺は目立たない[8]。秋に黄葉し、黄色から明るい橙色に色づく[8][10]。 花期は4 - 6月[4]。葉が芽吹いて展開したあとに[7]、本年枝の先から長さ6 - 10 cmほどの白い総状花序がでて、多数の雄蘂が目立ちブラシのように見える[4]。花は5弁花で花序に多数つく[4]。 果期は9月[4]。花が終わるとできる緑色の果実は、直径約6 - 7ミリメートル (mm) の卵円形の核果で、初夏から初秋にかけて熟すにしたがって、黄色・橙色・赤色・黒色と変化していく[7][4][5]。 冬芽は二年枝の脱落した側枝痕の横に側芽が互生し、こぶが突き出ているような様が特徴的である[9]。落枝痕は茶褐色で円形をしており、一年枝には落枝痕はない[9]。枝先には仮頂芽がつく[9]。形は卵形や円錐状[9]。葉痕は半円形や三角形で、維管束痕が3個みられる[9]。 ウワミズザクラとよく似た植物に、イヌザクラ(Padus buergeriana)、シウリザクラ(Padus ssiori)、エゾノウワミズザクラ(Padus avium)がある[11]。ウワミズザクラは、総状花序の下に葉がつき、葉の腺は葉身の下部にある[11]。花柱は雄蕊よりも長く、花弁は雄蕊より短い[11]。 一方、イヌザクラは総状花序の下部に葉がないことで見分けがつく[11]。また、シウリザクラは総状花序の下に葉がつくが、その葉は心形である[11]。エゾノウワミズザクラは総状花序の下に円形の葉がつき、花弁は雄蕊よりも長い[11]。 植栽もされて庭木に用いられる[7]。材は軽くねばり強い事から建材のほか[7]、彫刻細工、版木、道具の柄などに利用される。樹皮は桜皮細工に使う[7]。 また、完熟前の赤い果実は果実酒に使われる[5]。黒く熟した実を果実酒に使うとする文献もあるが[6]、完熟した黒い実は苦いので果実酒に使わないとする意見もある[5]。実の3倍量のホワイトリカーおよびグラニュー糖と一緒に漬けこんでから、熟成までには3か月以上かかり、半年から1年で実を引き上げる[5]。
名称
分布・生育地
形態・生態
互生の葉 (5月、箱根)
花 (5月、箱根)
未熟な実 (8月)
類似種
イヌザクラ:総状花序の枝に葉がつかない
シウリザクラ:総状花序の下の枝に葉がつく。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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