ウマ
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「馬」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「馬 (曖昧さ回避)」をご覧ください。

ウマ
尾花栗毛のウマ(ハフリンガー種)
分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:哺乳綱 Mammalia
:奇蹄目 Perissodactyla
:ウマ科 Equidae
:ウマ属 Equus
:ウマ E. caballus / ノウマ E. ferus
亜種:なし / ウマ E. f. caballus(※ノウマの亜種とする場合)

学名
Equus caballus Linnaeus1758[1]
シノニム
Equus ferus caballus
和名
ウマ[2]
英名
Domestic horse[3]

ウマ(馬、英: Horse, 学名: Equus caballus)は、哺乳綱奇蹄目ウマ科ウマ属に分類される家畜動物

社会性が強く群れで生活する。古くから中央アジア中東、北アフリカなどで家畜として飼われた歴史がある[注 1]

運搬用(荷役馬)、農耕(農耕馬)、乗用(乗用馬)、軍用(軍用馬騎馬)、競技用(競技馬競走馬)などに使われ、乳用、食用にもなる。

学名は、equus も caballus ともにラテン語で「馬」の意[注 2]

独立した種ではなく野生種であるノウマ(Equus ferus、野馬)から分かれた亜種Equus ferus caballusとする説もある。

ノウマは、北アメリカ大陸原産で進化し、その後、ユーラシア大陸へも広がった。ただし北アメリカ大陸では、数千年前に絶滅した。
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生物学的特徴

体長は2.4?3m程度。体重は300?800kg程度だが、後述の重種のように1トンを超えるものもある。

首と頭が長く、長い四肢をもつ。角はない。各脚とも第3指を残し他の指は退化している。よく発達した(ひづめ)を持ち、硬い土の上を走ることができる。尾と、頭から首の上部にかけての(たてがみ)だけは長いが、全身の毛は短い。

本来寒冷地に生息する動物であるため、比較的寒さに強い反面、基礎体温が37?38度と高く筋肉量も多いため、高温多湿な気候では熱中症になりやすい[4]

草食性であり、よく発達した門歯臼歯で食べ物を噛み切り、擂り潰す。ウマは後腸発酵動物(英語版)であり、反芻動物とは異なり胃は一つしか持たない。しかし大腸のうち盲腸が極めて長く(約1.2 m)、結腸も発達している。これらの消化管において、微生物が繊維質を発酵分解する。胆嚢が無いことも草食に適している。 硬くて甘味の強い食物全般を好むとされている。なお、英語でロバや馬などを鼻先に釣った人参で誘導する様子を carrot and stick と言うように、英語圏や日本等では通俗的には「ウマはニンジンが好物」だと語られるが、国によって「リンゴが好物」や「角砂糖が好物」(トルコ)など、様々に言われている。実際には硬くなくても甘いものを好む個体の例もある。

優れた嗅覚を持つが、毒草や血の匂いなどを嗅ぎ分けることはできない。顔の両側に目が位置するため視野が広く350度ほどあるともされている[5]が、反面、両眼視出来る範囲は狭いため、距離感を掴むことは苦手とするなど、ヒトとはやや異なった視覚認知を持つ[6]

走る際に背中が彎曲しないため乗用にできるが、鞍やなどの馬具無しで乗りこなすには相当の修練が必要となる。

一般に、立ったまま寝ることができることでも知られる(ヒトやサルと違い、膝関節を靭帯で固定できるので膝折れがない)が、本当に安全な場所であればリラックスし横になって休むこともある。

寿命は約25年、稀に40年を超えることもある。繁殖可能な年齢は3-15/18歳。繁殖期は春で、妊娠期間は335日。単子であること(一回の妊娠で宿す子が一頭であること)が多い。
体毛
毛色
詳細は「
馬の毛色」を参照

馬の特徴の中でも、一見して最初に目につくのが毛色である。日本馬事協会は、栗毛栃栗毛鹿毛黒鹿毛青鹿毛青毛芦毛粕毛駁毛(ぶちげ)、月毛河原毛佐目毛薄墨毛白毛の14種を定めている。

家畜馬では、鹿毛、栗毛が特に多い。家畜化以前は薄墨毛が多かったと考えられている。
白斑

毛色の他に個体の識別に使われるものとして白斑がある。白斑は主に頭部、脚部などに見られる白い毛のことで、毛色やその他の特徴(旋毛等)と合わせると無数の組み合わせがあり、個体識別に利用することができる。そのため血統登録の際記載が義務づけられている。代表的なものに、頭部では星・曲星・流星・環星・乱星・唇白・白面・鼻白・鼻梁白・作、肢部では白・半白・小白・微白・長白・細長白・長半白等がある。なお、白斑に至らない程度のものを刺毛という。
旋毛

馬のつむじのことを旋毛(せんもう)という。位置に個体差があることから、白斑と同じく個体識別に利用することが出来る。位置によって「珠目」、「華粧」といった名称がある。白斑・旋毛の詳細については馬のマーキング参照のこと。
冬毛と毛刈り

冬になるにつれて長い毛に生え変わる。そのままだと、汗をかいた時に乾燥が長くなり、体を冷やし体調を崩す原因となるほか、ブラッシングも大変となる。そのため、馬を管理している飼い主は毛刈り(クリップ)を行う。毛刈りの仕方は作業量と目的により様々な物がある。

たてがみと尻尾以外の全身の毛を刈るフルクリップ(ショークリップ)、泥がかかりやすい足と鞍が乗る背中以外を剃るハンタークリップ、足と汗をかきにくい背中全体を残すブランケットクリップ、日中も外に出す場合は首の後ろも残すチェイサークリップ、外出をよくする馬の場合は首の前側-腹-尻にかけて剃るトレースクリップ、軽作業馬や若い馬の場合は手軽に行え発汗の多い首周辺と腹だけを剃るアイリッシュクリップが行われる。
身体の各部の名称

図に基づき説明する。

英語名日本語名備考
forelock前髪
poll項(うなじ)
withers?甲(きこう)
back背
loin腰
croup尻
dock尾根
point of shoulder肩先
shoulder肩
forearm前膊(ぜんはく)
elbow肘
knee手根関節(前膝)人間の手首に相当
fetlock(ankle)球節人間の手で言うところの指の付け根の部分の関節に相当
flank?(ひばら)、脇腹
stifle後膝
quarter後躯
gaskin脛(けい)
hock飛節人間の足首に相当
cannon管人間の手で言うところの掌部分に相当
pastern繋(つなぎ)
coronet (coronary band)蹄冠
hoof(foot)蹄

骨格

図に基づき説明する。

英語名日本語名備考
cervical(neck) vertebrae頚椎
coccygeal(tail) vertebrae尾椎
scapla (shoulder blade)肩甲骨
ulna尺骨
radius橈骨
carpus (knee)副手根骨
metacarpal Bone中手骨
patella (knee cap)膝蓋骨
tibia脛骨
fibula腓骨
long pastern bone繋骨基節骨、第1指骨
short pastern bone冠骨基節骨、第2指骨
coffin bone(pedal bone)蹄骨末節骨、第3指骨
cannon bone管骨第3中手骨および第3中足骨

馬歯(英語版)(ばし)は一生を通じて硬い草を食べ続けるため上下に長い形状をしている[7]。考古学においては馬歯は遺跡においても遺存しやすく、馬歯の摩耗具合から個体の年齢を推定する手法も確立している[7]。また、乗用馬に使用する馬具であるハミ奥歯の第二前臼歯と接し続けるために摩耗する。このため野生馬と家畜馬、もしくは乗用馬と駄馬農耕馬を区別するための指標としても活用されている[8]

ウマの前肢の構造を見ると、体の外側にあるのは肘から先の前腕のみで、上腕は体の内側にある(躯幹に密着している)。前腕を構成するのは橈骨と尺骨で、主に橈骨によって形成されている(尺骨の下半分は退化しており、橈骨と癒合している)。前腕の先には手根関節(前膝)がある。手根関節は7つの手根骨からなる。手根関節の先には中手骨がある。このうち最大のものが第3中手骨で、第2・第4中手骨は小さく退化している。第1・第5中手骨は退化して消滅している。第3中手骨の一部はその先にある繋骨(基節骨、第1指骨)とともに球節と呼ばれる関節を形成する。球節の後ろ側には種子骨がある。球節の先には指骨がある。指骨は繋骨(基節骨、第1指骨)・冠骨(基節骨、第2指骨)・蹄骨(末節骨、第3指骨)の3つの骨からなる。なお、ウマの指は第3指(ヒトの中指に相当)のみ存在する[9]。つまり、人間に当てはめるとウマは手足の中指の指先だけで歩いているということになる。

後ろ脚の構造を見ると、大腿骨があり、その先に膝関節(ヒトの膝に相当)がある。膝関節の中には膝蓋骨がある。その先にあるのが下腿で、脛骨と腓骨からなるが、腓骨は前脚における尺骨と同様下半分は退化して脛骨に癒合している。その先にあるのが飛節と呼ばれる大きく屈曲した関節で、ヒトの足首に相当する。その先は前脚とまったく同様の構造をしており、第3中足骨が大きく発達した中足骨、球節、指骨(趾骨)と続く[10]
進化詳細は「ウマの進化」を参照

ウマ類は化石資料が豊富であり、進化の過程を鮮明に残している。その理由として環境の順応能力が高かったことや、草原で群体を成していたことが挙げられている[11]

ウマ類の最古とされる化石は、6,500万年前(始新世)の地層から発見されたヒラコテリウムである[12]。ヒラコテリウムは北アメリカ大陸やヨーロッパの森林に生息し、若芽や草の実など柔らかい植物を摂取していたとされる[12]。ヒラコテリウムはキツネほどの大きさで、前肢は第1指がなく、後肢は第1と第5指が退化している。

その後、始新世のオロヒップスエピヒップス、漸新世のメソヒップスミオヒップス、中新世のパラヒップスメリキップスという系統進化が明らかになっている[11]。約1,000万年前(中新世前-中期)のメリキップスは、真の草食性を示す高冠歯を獲得したことと、より高速での走行を可能にした下肢骨(尺骨と橈骨、脛骨と腓骨)の癒合の2点で画期的であった。当時は乾燥気候が広がるとともに大草原が拡大しつつあり、メリキップスの出現は、草原への進出の結果だった。

約400万年前(中新世中?後期)のプリオヒップスは、第2・第4指を完全に消失させることで指が1本になり、現在のウマに近い形態をしていた。ウマの仲間は、更新世氷期ベーリング海を渡り、ユーラシア大陸やアフリカ大陸に到達し、現在のウマであるエクウス(ウマ属)に分化する。

南北アメリカ大陸に残ったウマ科の動物は、氷期に絶滅した。ミオヒップスやメリキップスからも多様な種分化が起こり、ウマ類は一時、大きな発展を示したが、系統の大半は既に絶滅し、現存する子孫が、ウマ、シマウマ、ロバの仲間のみとなっている現状は、反芻類の繁栄と対照的である。

ウマ類は反芻類に比べ、植物を消化してタンパク質に再構成する能力が劣っているため、反芻類に駆逐されたものと考えられているが、ウマは高い運動能力を獲得することで生き残った。野生のウマはほとんど絶滅に近いが、内燃機関が発明されるまでの長い間、人類にとって最も一般的な陸上の移動・運搬手段となることで、家畜動物として繁栄した。
ゲノム

馬は31対の常染色体と、XYの性染色体、計32対64本の染色体を持つ。この他に細胞小器官ミトコンドリアに小さな環状(約1万7千塩基対)のデオキシリボ核酸を持っている。馬ゲノムプロジェクトは、犬や牛など他の主要な家畜に比べれば若干遅れたが、2006年に開始された。このプロジェクトでは、日本の競走馬総合研究所も参加している。

約18億円の巨費を賭けたこのプロジェクトでは、2007年2月にまず雌のサラブレッドについて全塩基配列の解読を完了した。総配列は約27億塩基対、遺伝子の総数は約21000個と考えられている。現在読まれているゲノムは全て雌のものであり、Y染色体の配列は決定されていない。

2009年、同定された遺伝子は2万322個であることが発表され、このうち約4分の3に当たる1万5027個についてヒトの遺伝子と一致することが判明した。
動き

馬は駆けたり、ジャンプすることが得意である。訓練次第ではさまざまな歩法で歩いたり駆けたり、ジャンプすることができる。また、群れで生活する動物であることから、複数の馬が同じ方向へ一団となって駆けるのが、乗馬等で指示しない場合は、通常である。
歩法

英語:Walk、日本語:なみあし(漢字表記:常歩) 5?8 km/h (3.1?5.0 mph)

英:Trot、日:はやあし(速歩) 8?13 km/h (5.0?8.1 mph)

英:Pace、日:側対歩 8?13 km/h (5.0?8.1 mph)。ただしこの動画はスローモーションで再現している。実際の動きはもっと速い。

英:Canter、日:かけあし(駈歩) 16?27 km/h (9.9?16.8 mph)

英:Gallop、日:しゅうほ(襲歩) 40?48 km/h (25?30 mph), record: 70.76 km/h (43.97 mph)。ただしこの動画はスローモーションで再現している。実際の動きはこれよりはるかに速い。
疾走するサラブレッドを連続撮影し、それをスローモーションぎみに再現した動画。(マイブリッジ撮影『動く馬』)
疾走中の馬の脚の動きは速すぎて人の目では理解できず、高速連続撮影が発明されるまで解明されなかった。















ジャンプ

1920年の障害レース

ジャンプ

World cup competition at the 2011 Helsinki Horse Showにて、ウマの Untouchableとドイツ人騎手Daniel Deuserが見せた見事なジャンプ

空中での一瞬の姿勢

ジャンプの前半と後半

ジャンプの分解写真

ジャンプの動画

リアリング

「後脚立ち」すること、つまり後ろ脚だけを地につけて前脚を宙に向かって上げることを英語では「rearing リアリング」と言う。ウマはさまざまな時にこのリアリングを行うが、たとえば驚いた時、興奮した時、攻撃的になっている時、人間に従いたくない時、背中に乗っている人間を振り落としたい時などに行う。野生のウマ(家畜でないウマ)で、自由に行動しているウマもこれをすることがある。飼われている馬では、訓練次第でこれを意図的にさせることができる。だが乗り手が望まないのに乗馬中に突然この動作をされると、落馬や大怪我などの結果になりがちである。

人が背に乗らない状態でリアリングするウマ

騎乗状態での普通のリアリング

よく訓練されたリアリング

コントロールできなくなったリアリング。こうなると乗り手は落馬してしまう。

リアリングしたウマの骨格

後ろ蹴り

ウマが攻撃しようとする時にとりうる行動のひとつが「うしろげり」を食らわせることである。まず後脚で地面を蹴り尻を上げ気味の姿勢になると同時に後脚をやや引き付け、足先を鋭く後方に突き出す。ウマの目は頭部の側面についていて、単眼視野は350度ほどある[13]、と言われており後方もほぼ視野に入っており[14]、後方にいる対象がほぼ見えた状態で狙いをつけてかなり正確に蹴りを繰り出す。ウマどうしの喧嘩でも、しばしば互いに後ろ蹴りを食らわせる。人間が不用意にウマの後方から近づくと(ウマの機嫌が悪い時などは特に)ウマは突然後ろ蹴りをすることがあり、これを食らうとしばしば死亡事故に至る。そもそも馬の脚力は猛烈で、動作も素早くて避け難い上に、馬の足裏には金属性の硬い蹄鉄がつけられているので、人が頭部に食らえばしばしば頭蓋骨骨折の即死という結果となりがちなのである[要出典]。胸部・肩・鎖骨などに受けても骨折するほどの大怪我となりがちである。馬の調教本の多くでも「ウマの後方に立たないように」との注意がなされており、「ウマの後ろ(尻側)に立たないこと」は乗馬クラブなどでも乗馬初心者に対してまず最初に指導されることのひとつである。

片足での後ろ蹴り(動作の前半)

片足での後ろ蹴り(後脚が伸びてゆく途中)

片足での後ろ蹴り(後脚が伸びきったところ)

両足での後ろ蹴り

両足での後ろ蹴り(伸びきったところ)

噛み付く

ウマどうしが喧嘩する時にとるもうひとつ行動が「かみつく」ことである。







食べる

草を食べるウマ

草を食べるウマ

干草を食べるウマ(動画)

木の葉を食べるウマ

リラックス時の動作

脚を曲げ、座っているウマ

座っているウマ

すっかり身体を横にし、脚を伸ばしたウマ

すっかりリラックスして仰向けになったウマ

リラックスしたウマたち

フレーメンウマのフレーメン

牡(オス)馬は歯をむき出しにして、あたかも笑っているような表情を見せることがある。これを「フレーメン」と呼び、ウマだけでなく様々な哺乳類に見られる。このフレーメンによって鼻腔の内側にあるヤコプソン器官(鋤鼻器)と呼ばれるフェロモンを感じる嗅覚器官を空気にさらすことで、発情した牝(メス)馬のフェロモンをよく嗅ぎ取れるようにしている。発情した牝馬の生殖器の臭いをかがせるとこの現象を容易に起こせるため、ウマのフレーメンに関する歴史的エピソードがいくつかある。また、ウマはレモンなどのきつい匂いをかいだり、初めて嗅いだにおいのときにもフレーメンをし、牝馬もフレーメンをすることがある。[要出典]
速度モンゴルのウマが疾走している様子。

駆ける速度については、平均60 km/h、ともされ、最高速度は87 km/hともされる。競走用のサラブレッドならば最高87 km/hを出すことができる。また、競走用クォーターホースは、比較的容易に90 km/hを達成する。2005年のアメリカでの調査では、下級戦にもかかわらず302 mのレースのラスト101 mの平均速度が92.6 km/hに達していた[15]。(ただし、馬は速くはあるが、瞬間最高速度ではしばしば「地上最速」(駆ける速度が最速)と形容されるチーターには、さすがにかなわない。チーターのほうは(数秒程度の間は)100 km/h - 110 km/hほどで走ることができる、と言われている。)

速力に優れ、ヒトを乗せてかなり速い速度で走ることができる。実際のレースでの記録としては、クォーターホースの世界レコードで440ヤード(402 m)を20.274秒[16]というものがあり、これは時速に換算すると71.4 km/hとなる。

もう少し長い距離ではサラブレッドが有利となり、1000 mの世界レコードが53.07秒(時速68 km)を記録している。3200 mでも世界レコードは3分12秒5(時速60 km)となっていて、なお速度を維持している。

馬は加速に時間がかかるため、特に短距離戦ではレース中の大部分を上記の速度よりも遥かに速い速度で走っている。2005年のアメリカでの調査では、330ヤード(302 m)のレースのラスト101 mの平均速度が92.6 km/h、440ヤード(402 m)のレースでも、レース中間で時速92.4 kmに達していた[15]。402 mではサラブレッドもレース終盤で時速83.9 kmを記録している[15]。ただし、この2005年の調査は何れも下級戦である。同じ調査で、1006 mのレースでのサラブレッドの速度は、レース中盤でも時速59.6 kmに過ぎなかった。これは、2002年に日本でほぼ同じ距離(1000 m)で記録されたレース中間の200 m区間平均時速75.0 km(9.6秒)[17]よりかなり遅い。

馬術競技のカテゴリーに入るエンデュランス馬術競技は、ヒトにおけるウルトラマラソンに相当する競技であり、30 - 50キロメートルごとに馬体検査(心拍数が規定値を超えると失権)と休憩を挟みつつ最大160キロメートルを走破する。走路は整地されているとは限らず、山や川があったりする。平均速度はこの距離でも時速28 km近くに達することがある。使用するのは中間種でもサラブレッドでも何でもよいが、アラブ種が良く使われる。

競歩に相当する繋駕速歩競走では、Always B Mikiというスタンダードブレッドが、二輪馬車をけん引して側対歩で1マイル(約1609 m)を1分46秒(時速55 km)で完歩した[18]
人の感情を読み取る能力

ウマは(イヌ同様に)人の感情を読み取ってそれに敏感に反応しているということはウマに関係する人々の間ではかなり古くから言われていたものの、それについての科学的な研究はほぼ無かったが、2018年にようやく発表された。

2018年6月、北海道大学は、馬は人の表情を関連付けて、人の感情を読み取るという研究成果を発表した[19]
種類・分類、品種

さまざまな分類法がある。たとえば解剖学的分類、用途による分類、運動性能による分類、体高と体長の比率による分類 等々がある。どの分類方法も曖昧さを孕んでいる。

動物分類学的にはこれらすべてがウマ(正確にはイエウマ)という単一の種である。
解剖学的分類

東洋種と西洋種

短頭種と長頭種

用途による分類

乗用馬
[注 3]・輓用馬[注 4]・駄馬[注 5][20] - ウマの使用目的に沿った分類法[20]

外観や能力による分類法 - いずれも個々のウマの外観的特徴に基づく分類ではなく、登録されている品種単位での分類である。

常歩馬[注 6]・速歩馬[注 7]・駈歩馬[注 8][20] - 馬の歩法に着目した分類法[20]。ドイツのミツテンドルフが考案したものでかつては普及していた。


温血種[注 9]・冷血種[注 10][20] - ウマの運動性能に基づく分類法であり、大まかな分類として温血種は軽種、冷血種は重種が該当される[20]。なおイギリスでは温血種をサラブレッドとアラブに限定している[20]

軽種[注 11]・中間種・重種[注 12][20] - 日本で最も一般的に用いられる分類法で[20]、軽種は、サラブレッドやアラブもしくはアングロアラブに限定して適用される[20]。対して重種は、ペルシュロンやブルトンといった大型の種に適用される。なお中間種は、軽種と重種の交雑された種に適用される[20]。この分類法は1937年に馬政局が発令した「馬の種類呼称」という規則が発端となっている[20]

正方形馬・長方形馬・高方形馬 - 体高と体長の比率による分類法。ドイツでつくられた考え方。

純血馬・半血馬 - 純血といっても遺伝的・生物学的な根拠に基づくものではなく、公式な血統管理団体による登録による分類法である。

正常馬・ポニー - 1899年にイギリスの王立農業協会で提唱された分類法で、体高が148センチ以下のものを機械的にポニーと称した[20]。なお現代においては目安としての信頼性しか持ち得ない[20]

競走馬については現在は主に登録された血統に基づいて分類を行うのが主流である。たとえば、サラブレッドとして然るべき団体から登録を受けたウマがサラブレッドであり、サラブレッドであれば軽種である。仮にこれとまったく同一の遺伝子を備えていたとしても登録がなければサラブレッドとは認められない。「馬の品種の一覧」も参照
在来種と改良種

各地にそれぞれ在来種と呼ばれる固有の特徴をもった品種が少数存在する。在来種は古来のウマの特徴を比較的よく残しているが、それらも多かれ少なかれ人間の手によって改良されている。細かくみると約250種類以上確認される。混血も多い。それに対して、改良種は、スピードや耐久力、パワーなどを高めるような品種改良がなされており、ひきかえに不定期の給餌に耐える体質や危険から身を守る本能の一部を失っている。サラブレッドやポニーなど、現代人が乗馬クラブや競馬場で頻繁に目にする馬の多くは後者の「改良種」のほうである。
日本での分類

現在日本では、ウマを軽種とそれ以外に分類している。このうち軽種については、財団法人日本軽種馬登録協会が登録規定を行っている。軽種以外は社団法人日本馬事協会が登録を行っており、登録規定で乗系、輓系(ばんけい)、小格に分類している。ただし日常的には重種、中間種などの表現が用いられることもある。

和種・洋種・雑種

甲種・乙種・丙種・丁種

野生種現存する唯一の野生種、モウコノウマ

現在では、 ノウマ(Equus ferus)の野生種(ターパンなど)は全て絶滅したとされる。
再野生種

アメリカのムスタングやイタリアのジャーラ馬(英語版)、宮崎県都井岬御崎馬などは、半野生状態で生息しているが、いずれも家畜として飼育されていたものが逃げ出し、繁殖したものである。かつては北海道では野生化した馬を狩猟・捕獲し、ばん馬として荷物や馬ソリの牽引をさせることもあった。

モンゴルに生息する「モウコノウマ[注 13]は、従来、世界で唯一とされる真の現生の野生ウマとされていたが、最近の研究で人間によって家畜化された馬の子孫であるという説が唱えられている[21]


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