ウナギ科
ニホンウナギ Anguilla japonica
分類
ウナギ科(学名:Anguillidae)は、ウナギ目に所属する魚類の分類群の一つ。ニホンウナギ・ヨーロッパウナギなど降河性の回遊魚を中心に、少なくとも1属15種が含まれる[1]。
分布ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)。ヨーロッパに分布する唯一のウナギで、非常に古くから知られる魚類の一種である
ウナギ科の魚類は東部太平洋と南部大西洋を除く、世界の熱帯・温帯域に広く分布する[1]。ウナギ属 Anguilla に含まれるほぼすべての種類が降河性の回遊魚で、海で生まれた後に淡水域に遡上し、成長後に再び海に降りて産卵するという生活史をもつ[1]。 大西洋に生息するのはヨーロッパウナギ(A. anguilla インド洋から西部太平洋にかけての熱帯・温帯域がウナギ科魚類の分布の中心であり、特にインドネシア周辺での多様性が顕著である[2]。西部太平洋にはフィリピン・インドネシア・オーストラリア・ニューギニア島およびニューカレドニアを中心に約14種が知られ、ルソン島(フィリピン)・ニュージーランド・ニューギニア島東部にはそれぞれ固有種が存在する[3]。また、A. breviceps
大西洋
インド太平洋
インド洋にはパキスタン・インドなど南アジアに分布する A. bengalensis bengalensis、ケニアから南アフリカに至るアフリカ東岸(特にザンベジ川水系)を中心に分布する A. bengalensis labiata など、およそ5種が生息する[3]。このうちの数種は、マダガスカル東方沖の深海で産卵していると推定されている[4]。
日本)、オオウナギ(A. marmorata)およびニューギニアウナギ(A. bicolor pacifica)、およびウグマウナギ(A.luzonensis)の4種が生息する[5][6]。ニホンウナギは朝鮮半島・中国大陸・フィリピンなど東アジアを中心に分布し、マリアナ海溝付近で産卵していることが近年の調査で明らかにされている[7]。オオウナギの分布はより広範囲で、アフリカ東岸からフランス領ポリネシアに至り、産卵場はフィリピン南部の深海と推測されている[3]。
ニューギニアウナギは環境省の汽水・淡水魚類レッドリストにおいて、ニホンウナギとともに「情報不足」のカテゴリーに収載されていたが、日本に実際に分布しているかどうかは不明なままであった[8]。しかし2000年代に屋久島で稚魚が、さらに八重山列島で成魚が発見されたことにより、日本での自然分布が確かめられた[6]。
ウグマウナギは2009年にフィリピンのルソン島から記載され[9]、日本国内においては、沖縄本島における2018?2019年の調査で得られた稚魚に基づき、2021年にその自然分布が公式に記録された[5]。
生態
淡水域ウナギ類の一般的な生活環アメリカウナギ(Anguilla rostrata)。在来の淡水魚として最も広範な生息域をもつ種類の一つ。雄はアメリカ合衆国南東部の河口域に限局するのに対し、雌は北アメリカ大西洋岸の河川全域に分布する[10]
ウナギ科魚類は生涯の多くの時間を河川・湖沼をはじめとする淡水、あるいは河口などの汽水域で生活する[1]。一般に夜行性で、昼間は物陰に潜み、夜間に活発に遊泳して小魚や甲殻類・貝類・節足動物を捕食する。通常は単独で行動するが、数十尾の群れを作って越冬する例も知られている[11]。定住性・帰巣性はともに高く、ねぐらと定めた場所から大きく移動することはせず、数十km離れた場所に放流されても正確に戻ってくることができる[11]。
一般に雄は早期に成熟し(3-6年)、サイズは比較的小さいのに対し、雌の性成熟は遅い(4-13年、高緯度地帯では6-43年)[10]。雌は時間をかけて成長することで大型化し、より多数の卵を作り出すことを可能としている[10]。ウナギ類は魚類としては長い寿命をもち、耳石による年齢推定でニホンウナギでは22歳の雌が、ヨーロッパウナギでは33歳の雄と57歳の雌が報告されている[11]。
淡水域で成長し、性成熟に達したウナギ類は体色が銀色ないしブロンズ色になるとともに、眼の大型化・消化管および胸鰭の退縮、摂餌の停止といったさまざまな形態および行動の変化が生じる[12]。「銀ウナギ:Silver eel」とも呼ばれるこれらの成熟個体は川を降り、河口域で再び海水への適応をはかる[13]。