ウスバキトンボ
Pantala flavescens(メス)
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉)、学名 Pantala flavescens は、トンボ科ウスバキトンボ属に分類されるトンボの一種。全世界の熱帯・温帯地域に広く分布する汎存種の一つである。
日本のほとんどの地域では、毎年春から秋にかけて個体数を大きく増加させるが、冬には姿を消す[3][4]。お盆の頃に成虫がたくさん発生することから、「精霊とんぼ」「盆とんぼ」などとも呼ばれる。「ご先祖様の使い」として、捕獲しないよう言い伝える地方もある。分類上ではいわゆる「赤とんぼ」ではないが、混称で「赤とんぼ」と呼ぶ人もいる。 成虫の体長は5cmほど、翅の長さは4cmほどの中型のトンボである。和名のとおり、翅は薄く透明で、体のわりに大きい。全身が淡黄褐色で、腹部の背中側に黒い縦線があり、それを横切って細い横しまが多数走る。また、成熟したオス成虫は背中側にやや赤みがかるものもいる。 全世界の熱帯・温帯に広く分布する。日本では、夏から秋にかけて全国でみられる[2]。 トンボの多くは成虫になっても水辺にとどまるが、ウスバキトンボの成虫は水辺から遠く離れて飛び回るので、都市部でも目にする機会が多い。日中はほとんどの個体が地上に降りず飛び回るが、夜は草木に止まって休む。朝夕にも休んでいる個体が多い。 あまり羽ばたかず、広い翅で風を捉え、グライダーのように飛ぶことができ、長時間・長距離の飛行ができる[3]。ウスバキトンボの体はシオカラトンボやオニヤンマのように筋肉質ではなく、捕虫網で捕獲した拍子につぶれてしまうほど脆いが、これも体や翅の強度を犠牲にして軽量化し、飛行に適応した結果と考えられる。 食性は肉食性で、カなどの小昆虫を空中で捕食する。メス成虫で1日に約14mg(体重の約14%、小昆虫に換算し約185匹分)を捕食しており、小昆虫の有力な捕食者と考えられる[5]。敵は鳥類、シオヤアブなどの他、シオカラトンボ、ギンヤンマなど大型のトンボにも捕食される。 交尾したメスは単独で水田などに向かい、水面を腹の先で叩くように産卵する。産卵先は水田だけでなく、都市部の大きな水たまりや屋外プールなどにも産卵にやってくるので、このような場所で捕獲される幼虫(ヤゴ)はウスバキトンボの割合が高い[3]。中には水面と勘違いしてか、自動車の塗装面などで産卵行動を始める個体もいる。卵はごく小さいので車が目立って汚れることはないが、この場合卵はもちろん死滅してしまう。 なお、ウスバキトンボのメス成虫の蔵卵数約29,000は、ほぼ同体長のノシメトンボの蔵卵数約8,800の3倍以上である。また十分に摂食しているメス成虫が1日に生産できる成熟卵は約840個で、産卵数の多さが日本における数か月での個体数急増を可能にすると考えられている[4][6]。 卵は数日のうちに孵化し、薄い皮をかぶった前幼虫はすぐに最初の脱皮をして幼虫となる。幼虫はミジンコやボウフラ(カの幼虫)など小動物を捕食して急速に成長し、早ければ1か月ほどで羽化する[3]。
形態
成虫(オス)
成虫(メス)
分布
生態
生活史交尾中のウスバキトンボ
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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