ウシ
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「うし、牛」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「牛 (曖昧さ回避)」をご覧ください。

ウシ
ホルスタイン
分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:哺乳綱 Mammalia
:鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
亜目:ウシ亜目(反芻亜目) Ruminantia
:ウシ科 Bovidae
亜科:ウシ亜科 Bovinae
:ウシ族 Bovini
:ウシ属 Bos
:オーロックス B. primigenius
亜種:ウシ B. p. taurus

学名
Bos taurus
英名
Cattle
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ウシ(牛)は、哺乳綱鯨偶蹄目ウシ科ウシ亜科動物である。野生のオーロックスが、人類によって家畜化されて生まれた。但し、アメリカ哺乳類学会では、ウシ、オーロックス、コブウシをそれぞれ独立した種として分類している。

「ウシ」は、狭義では特に(種レベルで)家畜種のウシ(学名:Bos taurus)を指す。一方、やや広義では、ウシ属 (genus Bos) を指し、そこにはバンテンなどの野生牛が含まれる。さらに広義では、ウシ亜科 (subfamilia Bovinae) の総称である。すなわち、アフリカスイギュウ属アジアスイギュウ属ウシ属バイソン属などを指す。これらは牛と認められる共通の体形と特徴を持つ。大きな胴体、短い首と一対の角、胴体と比べて短めで前後にだけしか動けない脚、軽快さの乏しい比較的鈍重な動き、などが特徴である。ウシと比較的近縁の動物としては、同じウシ亜目(反芻亜目)にキリン類やシカ類、また、同じウシ科の仲間としてヤギヒツジレイヨウなどがあるが、これらが牛と混同されることはまずない。

以下ではこのうち、上記の狭義である「家畜ウシ」について解説する。
名称

ウシは、伝統的には牛肉食文化が存在しなかった地域においては、例えば漢字文化圏における「牛」ないし十二支の配分である「丑(うし)」のように、単一語で総称されてきた。これに対し、古くから牛肉食や酪農を目的とする家畜としての飼育文化や放牧が長く行われてきた西洋地域(例えば、主に英語圏など商業的牛肉畜産業が盛んな地域)においては、ウシの諸条件(性別、避妊・去勢の有無、食肉用、乳牛、等)によって多種多様な呼称をもつ傾向がある。

近代以降欧米由来の食文化のグローバル化が進展し、宗教的理由から牛肉食がタブーとされている地域を除いては、牛肉食文化の世界的拡散が顕著である。特に商業畜産的要因から、現代の畜産・肥育・流通現場においては世界各地で細分化された名称が用いられる傾向がある。
性別による名称
牡の牛

牡(オス)の牛。日本語では、牡牛/雄牛(おうし、おすうし、古
:『をうじ』とも)[1]、牡牛(ぼぎゅう)[1]という。「雄牛(ゆうぎゅう)」という読みも考えられるが、用例は確認できず、しかし種雄牛(しゅゆうぎゅう、雄の種牛〈しゅぎゅう、たねうし〉)[2]という語形に限ってはよく用いられている。古語としては「男牛(おうし、古訓:をうじ、をうじ)」もあるものの、現代語として見ることは無い。英語では、"bull"、"ox"、方言で "nowt"という。ラテン語では "taurus"(タウルス)といい、"bos"と同じく性別の問わない「牛」の意もある。
牝の牛
牝(メス)の牛。日本語では、牝牛/雌牛(めうし、めすうし、古訓:めうじ、をなめ、をんなめ
[3]、うなめ等)[4][3]、牝牛(ひんぎゅう)[3]という。「雌牛(しぎゅう)」という読みも考えられるが、用例は確認できず、雄と違って種雌牛も「しゅしぎゅう」ではなく「たねめすうし」と訓読みする[5]。古語としては「女牛[6]」「?牛[4]」の表記もあるものの、現代語として見ることは無い。英語では "cow"、ラテン語では "vacca"という。

なお、牡、牝はウマにも用いられる特殊な字である。
年齢による名称

日本語における年齢を基準とした呼び分けは牛においても一般的用法と変わりなく、つまり、人間や他の動植物と同じく[年少:幼牛─若牛─成牛─老牛:年長]という呼び分けがあるが、体系的に用いられるわけではない。一方、畜養・医療・加工・流通・管理・研究等々諸分野の専門用語として、通用語と全く異なる語が用いられていることもある。また、親牛・仔牛という本来は親と子の関係を表していた名称は、一般・専門ともによく用いられる。
未成熟な牛

成熟していない牛全般は、未成熟牛という。生まれたての牛も成熟間近の牛も該当する。
幼い牛

幼牛(ようぎゅう)。成熟に程遠い年齢の未成熟牛、あるいは未成熟牛全般をいう。専門的には、生後およそ120日以内から360日以内までの牛を指すことが多い。先述のとおり、子供(※動物に当てる用字としては『仔
』であるが、常用漢字の縛りの下では『子』で代用する)の牛という意味から発した仔牛/子牛(こうし)は、幼牛より定義の緩い語ながらむしろ多く用いられる。英語では "calf"が同義といえ、日本語でもこれが外来語化した「カーフ」がある。なお、これらの語は未成熟牛もしくは幼牛の生体を指し、屠殺後の食品とは別義である。肉牛の場合、この段階から業者が品質を高め始めることになるため、ベーシックな状態の牛という意味合いで素牛(もとうし)、育て上げる牛という意味で育成牛(いくせいぎゅう)という[7]。素牛は繁殖用育成と肥育(出荷するために肉質を高めつつ肉量を増やす飼育)のいずれかに回すことになり[8]、行く末が決まり次第、それぞれに繁殖素牛・肥育素牛(ひいく-)という。幼い牛の肉は特に区別されていて、月齢によって「ヴィール」「カーフ」と呼び分ける。生後6か月以内の仔牛の皮革(原皮となめし革)は[9][10]、「カーフ」の名で呼ばれるほか[11]、その原皮を「カーフスキン (calfskin)」[9]、その皮革を一般に「カーフレザー (calf leather)」[10]と呼び、前者は原義を離れて「仔牛の革」の意でも用いられる[12]。後者は牛革の中でも最高級とされ[10]、よく馴染むしなやかさが特徴で、鞄・手帳・財布・靴など多様な革製品に好んで用いられる。
若い牛
若牛(わかうし)。成熟が近い未成熟牛をいう。ただしあくまで古来の日本語において通用する語であって、各専門分野の用語としては、確認し得る限り、「仔牛(幼牛)」の段階を過ぎた牛は「成牛」である。
成熟した牛

成牛(せいぎゅう)という。
老いた牛

老牛(ろうぎゅう)という。現代都市文明社会においては、年老いて利用価値が低下した牛は、市場価値が極めて低く、ほぼ全ての老齢個体は廃用牛(はいようぎゅう)として処分される。例えば
乳牛は、自然界では到底あり得ない頻度で生涯に亘って搾乳され続けるため、採算が取れないほど乳の出が悪くなった頃には、体が極度に不健康な状態になっている。
飼育条件による名称

畜産業界ないし肥育業界、ないし牛肉産品を流通・販売する業界などにおいては、さらに多様に表現されている。
畜牛(ちくぎゅう、英:cattle
畜産用途に肥育されるウシ全般のこと。家畜牛。
去勢牛[きょせいぎゅう]
人工的に去勢されたウシのこと。食肉を目的として肥育されるにあたっては、雌雄とも去勢されることが多い。荷車牽引などの用務牛用途を目的として牡牛を用いる場合にも、精神的な荒さや発情を削ぐために去勢されるケースがよく見られる。英語では特にオスの去勢牛を"ox
"、メスを"steer"と呼んで区別する。
乳牛(にゅうぎゅう、英:dairy cattle)
搾乳して得られる牛乳やその加工品を得ることを主目的として飼養されるウシのこと。
未経産牛(みけいさんぎゅう、英:heifer
妊娠ないし出産を経験していない牝牛のこと。乳牛用途・肉牛用途ともに高価で取引される。
経産牛(けいさんぎゅう、英:delivered cow)
すでに出産経験のある牝牛のこと。肉牛として出荷する場合には、未経産牛に比較して安価で取引される。
日本語の方言・民俗

日本の東北地方では牛をべこと呼ぶ。牛の鳴き声(べー)に、「こ」をつけたことによる。地方によっては「べご」「べごっこ」とも呼ぶ。

柳田國男によれば、日本語では牡牛が「ことひ」、牝牛が「おなめ」であった。また、九州の一部ではシシすなわち食肉とされていたらしく、「タジシ(田鹿)」と呼ばれていた[13]
形質

ウシの胃と腸。国立科学博物館の展示。牡牛の解剖図。1. Rectum 2. Prostate 3. Glandes de Cowper 4. Muscle ischio-caverneux 5. Muscle bulbo-caverneux 6. Cremaster 7. Epididyme 8. Testicule 9. Vesicule seminale 10. Canal deferent 11. Vessie 12. Panse 13. Flexure sigmoide 14. Penis 15. Gland 16. Bourse牝牛の解剖図。1. Rectum 2. Vulve 3. Clitoris 4. Vagin 5. Os 6. Glande mammaire 7. Trayon 8. Col de l'uterus 9. Vessie 10. Pavillon 11. Ovaire 12. Corne uterine 13. Oviducte 14. Pis

ウシは反芻動物である。反芻動物とは反芻(はんすう)する動物のことであるが、そもそも「反芻」とは、一度呑み下して消化器系に送り込んだ食物を口の中に戻して咀嚼し直し、再び呑み込むことをいう。このような食物摂取の方法を取ることで栄養の吸収効率を格段に上げる方向へ進化し、その有利性から生態系の中で大成功を収めて世界中に拡散した動物群が、反芻動物であった。多様に見えて、その実、単系統群である。そのような反芻動物の中でも、ウシが属するウシ科はとりわけ進化の度合いが深まった分類群(タクソン)の一つであり、ウシの仲間(※少し範囲を広げてウシ族と言ってもよい)は勢力的にも代表格と言える。彼らは、ヒトに飼われて殖えたのも確かではあるが、もともと自然の状態で生態上(種数と生物量の両面で)の大勢力であった。反芻動物の進化がウシ科のレベルまで深まる以前に勢力を誇っていたのはウマに代表される奇蹄類であり、ウシ科は栄養吸収効率の大きな差を活かして奇蹄類を隅に押しやり分布を広めた。そのことは地質学的知見で証明可能である。家畜としても比較されることの多いウシとウマであるが、同じ質と量の餌を与えた場合、栄養面で報いが大きいのは間違いなくウシであるということもできる。

反芻動物の具える胃を「反芻胃(はんすうい)」といい、マメジカのような原始的な種を除き、ウシを含むほとんどの反芻動物が4つの胃を具える。ただし実際には、胃液を分泌する本来の意味での胃は第4胃の「皺胃(しゅうい)・ギアラ」のみであり[14]、それより口腔に近い「前胃(ぜんい)」と総称される消化器系、第1胃「瘤胃(りゅうい)・ミノ」・第2胃「蜂巣胃(ほうそうい)・ハチノス」・第3胃「重弁胃(じゅうべんい)・センマイ」は[14]食道が変化したものである。ここを共生微生物の住まう植物繊維発酵槽に変えることで、反芻は極めて効果的な消化吸収システムになった。ウシの場合、この前胃に、の繊維(セルロースなど)を分解(化学分解)する細菌類(バクテリア)および繊毛虫類(インフゾリア)を始めとする微生物を大量に常在させ[14]、繊維を吸収可能な状態に変えさせ[14]、収穫するようにそれを吸収するという方法で草を食べている[14]。前胃の微生物を総じて胃内常在微生物叢などというが、ウシはこれら微生物の殖えすぎた分も動物性蛋白質として消化・吸収し、栄養に変えている[14]

ウシの味蕾は25,000個で味蕾が5000個のヒトの5倍を有する。ウシは毒物で反芻胃の微生物が死なないように味覚で食べる草をより分けている[15]

ウシの歯は、牡牛の場合は上顎に12本、下顎に20本で、上顎の切歯(前歯)は無い。そのため、草を食べる時には長い舌で巻き取って口に運ぶ。

鼻には、個体ごとに異なる鼻紋があり、個体の識別に利用される。
家畜としてのウシの利用
食用

肉は牛肉として、また乳は牛乳として、それぞれ食用となる。食用は牛の最も重要な用途であり、肉・乳ともに人類の重要な食料供給源の一つとなってきた。牛乳も牛肉も、そのまま食用とされるだけでなく、乳製品や各種食品などに加工される原料となることも多い。

家畜であるウシは、畜牛(ちくぎゅう)といい、その身体を食用や工業用などと多岐にわたって利用される。肉を得ることを主目的として飼養される牛を肉牛(にくぎゅう)というが、肉牛ばかりが食用になるわけでもない。牛の肉を、日本語では牛肉(ぎゅうにく)という。仔牛肉以外は外来語でビーフともいう。

牛の内臓は、畜産副産物の一つという扱いになる。日本では「もつ」あるいは「ホルモン」と呼んで食用にする。世界には食用でなくとも、内臓を様々に利用する文化がある。

仔牛肉/子牛肉(こうしにく)は、英語では"veal"(ヴィール)、フランス語では "veau"(ヴォー)と呼ばれる。


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