ウェールズ語の正書法(ウェールズごのせいしょほう)は、ウェールズ語の単語や定着した借用語を書くために29種類のラテン文字の字母(8種類の二重音字を含む)を使用する[1][2]。
マジャスキュール体(大文字)
ABCChDDdEFFfGNgHIJLLlMNOPPhRRhSTThUWY
ミニュスキュール体(小文字)
abcchdddefffgnghijlllmnopphrrhstthuwy
アキュート・アクセント(ウェールズ語: acen ddyrchafedig)、グレイヴ・アクセント(ウェールズ語: acen ddisgynedig)、サーカムフレックス(ウェールズ語: acen grom、to bach、hirnod)、およびトレマ(ウェールズ語: didolnod)も母音に対して使われるが、アクセント記号付きの文字はアルファベットの一部とは見なされない。
字母jは比較的つい最近、ウェールズ語の正書法に受け入れられた。これは、/d?/ 音がウェールズ語でも保持されている英語からの借用語で使用するためであるが、この音は英語の綴りではjで表わされてはいない。例えば garej ("garage") や ffrij ("fridge") などである。より古い英語からの /d?/ を含む借用語は、他の様々なやり方で発音され、綴られており、時折SiapanとJapan("日本")のような二重語が生じる結果となった。
字母k、q、v、x、およびzは専門用語(kilogram、volt、zeroなど)で使われることがあるが、全ての場合でウェールズ語の字母によって置き換えることができ、多くの場合そうされる(それぞれcilogram、folt、sero)[3]。
歴史ウェールズ語で印刷された19世紀のウェールズ語アルファベット
ウェールズ語の最古の文字資料は6世紀に書かれたもので、ラテン語アルファベット(英語版)で書かれている(古ウェールズ語を参照)。この正書法は現代のウェールズ語のものとは異なっている。特に、単語の中間と終わりの有声破裂音 /b, d, ?/ を表わすためにp、t、cが使われている点が異なる。同様に、 有声摩擦音 /v, d/ はbとdを使って書かれていた[4]。
中期ウェールズ語期までに、これは多くのバリエーションを持つようになった。現在では、/b, d, ?/ を表すのにb、d、gが使われているものの、これらの音は古ウェールズ語のように書かれることも多かった。また、/v/ はu、v、f、またはwによって表記されることもあった。また、初期の写本では、摩擦音が破裂音と区別されないことが多かった(例えば、/θ/ は現在ではthと表記されるが、tで表わされていた)[5]。現代のアルファベットとは異なり、書記素kも、特に前舌母音の前で使われた[4]。この字母が使われなくなったのは、少くとも部分的にはウィリアム・セイルズベリー(英語版)のウェールズ語新約聖書とウィリアム・モーガン(英語版)のウェールズ語訳聖書の出版が原因である。これらの聖書の印刷業者が持っていたのは英語とラテン語のための活字セットであったため、全ての /k/ 音をkと綴るにはkの活字の量が十分でなく、Kの位置でCが使われることになった[6]。これは当時好まれなかったが、標準的な用法となっていった。
この時期、d(大文字はD)も、ddの代用となる字母として使われた。例えば1567年の新約聖書中の一節「A Dyw y sych ymaith yr oll deigre oddiwrth y llygeid」はdとddの両方を含む。他の場所では、同じ単語が異なる綴られ方をしている例もある(newydd と newyd)[7]。
印刷業者・出版者のルイス・ジョーンズ(英語版)(Y Wladfa(英語版)の共同創業者の1人、パタゴニアのウェールズ語圏の住民)は、ウェールズ語fとff(/v/ と /f/ を表わす)を(英語と同じように)vとfで置き換えた制限のある綴り字改革を好んだ。