ウェード式
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ウェード式(ウェードしき、Wade)は、中国語ラテン文字によって表記する方法の一つ。19世紀後半にイギリスの中国駐在公使を経てケンブリッジ大学教授となったトーマス・ウェードが使ったローマ字表記法で、その著書『語言自邇集』といった中国語教科書で用いられた。その後ハーバート・ジャイルズが『中英辞書』(1892年上海、1912年ロンドン)の発音表記に用いたことで広く普及した。このため「ウェード・ジャイルズ式 (Wade-Giles)」と称することもある。

ウェードの教科書はもともとイギリスの外交官の通訳教育のためのものであったが、かつては日本を含む世界中で広く用いられ[1]、ウェード式のローマ字は中国国外で広く普及した。1906年の制定から1958年漢語?音方案が制定されるまで中国で地名表記に使われた郵政式は、ウェード・ジャイルズ式を元に有気音の記号や声調表記・ダイアクリティカルマークを除くなど簡略化し、一部既に慣用になっていた綴りや方言音に基づいた綴りを採り入れたものであった。

中華人民共和国では1958年以来?音が用いられ、1980年代からは国外でも?音が主に使われるようになったが、現在でもウェード式は台湾の主要都市の地名表記や、英語新聞の記事、人名のラテン字での表記に使われている(例:高雄 Kaohsiung、丁光訓 K.H. Tingなど)。

?音と比べた場合のウェード式の大きな特徴として、有気音無気音の区別に「?」(シングルクォートの始まりに似た記号、アポストロフィで代用されることが多い)を用いることが挙げられる。
表記方法

ウェード式が定められたのは北京語が標準化される前であり、現在の北京語には存在しない ch?iai(楷)や chio (角)のような音節が存在する。また、ウェードもジャイルズも、ローマ字の表記方法を厳密に記述していない。ここで説明しているのは、ジャイルズの辞典の見出しから帰納した現代北京音の表記方法である。
声母

声母(中国語の音節子音)に使われたアルファベットは、p, t, k(破裂音), f, s, hs, sh, j, h(摩擦音), ts, ch(破擦音), m, n(鼻音), l(流音)であった。さらに有気音と無気音の対立のある破裂音・破擦音では、「?」を用いて有気音を表す (p?, t?, k?, ts?, ch?) 。

両唇音唇歯音歯茎音そり舌音歯茎硬口蓋音軟口蓋音
無声音有声音
鼻音m [m]
? mn [n]
? n
破裂音無気音p [p]
? bt [t]
? dk [k]
? g
有気音p? [p?]
? pt? [t?]
? tk? [k?]
? k
破擦音無気音ts / tz [ts]
? zch [??]
? zhch [t?]
? j
有気音ts? / tz? [ts?]
? cch? [???]
? chch? [t??]
? q
摩擦音f [f]
? fs / ss [s]
? ssh [?]
? shj [?]
? rhs [?]
? xh [x]
? h
接近音l [l]
? l


ch と ch? については、i (ih 以外)または u が後続するときに歯茎硬口蓋音、それ以外のときにそり舌音を表す。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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