外積代数(がいせきだいすう、独: ausere Algebra、英: exterior algebra)は、ヘルマン・グラスマンによって導入された代数。グラスマンに因みグラスマン代数(独: Grasmann-Algebra、英: Grassmann algebra)[注 1]とも呼ばれる。
以下、特に断らない限り外国語表記はドイツ語、英語の順に記す。 ベクトルの外積(がいせき、auseres Produkt, exterior product)や楔積(くさびせき、英: wedge product)は、クロス積をある特定の性質に着目して、より高次元の場合へ一般化する代数的な構成である。 クロス積やスカラー三重積のようにベクトル同士の外積はユークリッド幾何学において面積や体積およびそれらの高次元における類似物の研究に用いられる。線型代数学において外積は、線型変換の行列式や小行列式を記述する基底の取り方に依存しない抽象代数的な仕方を提供し、階数や線型独立性といった概念に根本的に関係してくる。 外積代数(グラスマン代数)は、与えられた体 K 上のベクトル空間 V 上の外積によって生成される多元環である。多重線型代数やその関連分野と同様に、微分形式の成す多元環を通じて現代幾何学、特に微分幾何学と代数幾何学において広く用いられる。 形式的には、外積代数は ⋀(V) あるいは ?*(V) で表され、V を線型部分空間として含む、外積あるいは楔積と呼ばれる ∧ で表される乗法を持つ、体 K 上の単位的結合代数である。外積は結合的で双線型な乗法 ∧ : ⋀ ( V ) × ⋀ ( V ) → ⋀ ( V ) ; ( α , β ) ↦ α ∧ β {\displaystyle \textstyle \wedge \colon \bigwedge (V)\times \bigwedge (V)\to \bigwedge (V);\;(\alpha ,\beta )\mapsto \alpha \wedge \beta } であり、V 上の交代性(1) 任意の v ∈ V {\displaystyle v\in V} に対して v ∧ v = 0 {\displaystyle v\wedge v=0} を持つものである。これは以下の性質(2) 任意の u , v ∈ V {\displaystyle u,v\in V} に対して u ∧ v = − v ∧ u {\displaystyle u\wedge v=-v\wedge u} (3) v 1 , … , v k ∈ V {\displaystyle v_{1},\ldots ,v_{k}\in V} が一次従属ならば v 1 ∧ v 2 ∧ ⋯ ∧ v k = 0 {\displaystyle v_{1}\wedge v_{2}\wedge \cdots \wedge v_{k}=0} を特別の場合として含む[注 2]。 圏論の言葉で言えば、外積代数は普遍構成によって与えられる、ベクトル空間の圏上の函手の典型である。この普遍構成によって、体上のベクトル空間だけに限らず、可換環上の加群やもっとほかの興味ある構造にたいしても外積代数を定義することができる。外積代数は双代数のひとつの例である。つまり、外積代数の(ベクトル空間としての)双対空間にも乗法が定義され、その双対的な乗法が楔積と両立する。この双対代数は特に V 上の重線型形式全体の成す多元環で、外積代数とその双対代数との双対性は内積によって与えられる。 平面 R2 はベクトル空間であり、 e 1 = ( 1 , 0 ) , e 2 = ( 0 , 1 ) {\displaystyle {\boldsymbol {e}}_{1}=(1,0),\quad {\boldsymbol {e}}_{2}=(0,1)} という 2 つの単位ベクトルの組はその基底となっている。ここで、 v = v 1 e 1 + v 2 e 2 , w = w 1 e 1 + w 2 e 2 {\displaystyle {\boldsymbol {v}}=v_{1}{\boldsymbol {e}}_{1}+v_{2}{\boldsymbol {e}}_{2},\quad {\boldsymbol {w}}=w_{1}{\boldsymbol {e}}_{1}+w_{2}{\boldsymbol {e}}_{2}} という 2 つの成分表示された R2 のベクトルが与えられたとすると、v, w を 2 つの辺とする平行四辺形が一意に存在する。この平行四辺形の面積は、行列式を用いて A = 。 det ( v w ) 。 = 。 v 1 w 2 − v 2 w 1 。 {\displaystyle A=\left|\det {\begin{pmatrix}{\boldsymbol {v}}&{\boldsymbol {w}}\end{pmatrix}}\right|=|v_{1}w_{2}-v_{2}w_{1}|} と表される。いま、v, w の外積を v ∧ w = ( v 1 e 1 + v 2 e 2 ) ∧ ( w 1 e 1 + w 2 e 2 ) = v 1 w 1 ( e 1 ∧ e 1 ) + v 1 w 2 ( e 1 ∧ e 2 ) + v 2 w 1 ( e 2 ∧ e 1 ) + v 2 w 2 ( e 2 ∧ e 2 ) = ( v 1 w 2 − v 2 w 1 ) ( e 1 ∧ e 2 ) {\displaystyle {\begin{aligned}\\{\boldsymbol {v}}\wedge {\boldsymbol {w}}&=(v_{1}{\boldsymbol {e}}_{1}+v_{2}{\boldsymbol {e}}_{2})\wedge (w_{1}{\boldsymbol {e}}_{1}+w_{2}{\boldsymbol {e}}_{2})\\&=v_{1}w_{1}({\boldsymbol {e}}_{1}\wedge {\boldsymbol {e}}_{1})+v_{1}w_{2}({\boldsymbol {e}}_{1}\wedge {\boldsymbol {e}}_{2})+v_{2}w_{1}({\boldsymbol {e}}_{2}\wedge {\boldsymbol {e}}_{1})+v_{2}w_{2}({\boldsymbol {e}}_{2}\wedge {\boldsymbol {e}}_{2})\\&=(v_{1}w_{2}-v_{2}w_{1})({\boldsymbol {e}}_{1}\wedge {\boldsymbol {e}}_{2})\end{aligned}}}
概要
動機付けとなる例
平面における面積平行四辺形の面積は2つの頂点の座標を成分とする行列の行列式で表される。