ウィンドサーフィン
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ウィンドサーフィン(Windsurfing)とは、セイルボード(以降、略してボード)とセイルを接続した専用の道具を使用して、風を受けたセイルに発生する揚力と重力により波の斜面を滑り降りる推進力を主な動力源として水面を滑走するウォータースポーツである。ヨットサーフィンを融合・発展させたスポーツである。ウィンドサーフィンをする人のことをウィンドサーファー(Windsurfer)という。 プレーニングで水面を滑走するウィンドサーフィン ウィンドサーフィンでの空中回転技(フォワードループ)
目次

1 歴史

2 概要

3 道具の構成

3.1 ボード部

3.2 リグ部

3.3 装具


4 種目及び道具分類

5 道具の購入費用及び保管・運搬方法

6 段階ごとの習得過程

6.1 入門段階

6.2 初級段階

6.3 中級段階

6.4 上級段階


7 水上のルールと安全確保

7.1 ルール

7.2 安全

7.3 場所


8 ゲレンデ

8.1 ワールドカップ開催等で世界的に知られているゲレンデ

8.2 日本の主なゲレンデ


9 ワールドカップ優勝等で世界的に名の知られているウィンドサーファー

10 ワールドカップ等で活躍の日本人ウィンドサーファー

11 脚注

11.1 注釈

11.2 出典


12 関連項目

13 関連書

14 外部リンク

歴史メディアを再生する 初期のウィンドサーフィンメディアを再生する ウィンドサーフィンのプレーニング映像

ウィンドサーフィンは、1967年アメリカのカリフォルニアでジム・ドレイク(Jim Drake)とホイル・シュワイツァー(Hoyle Schweitzer)により発案され、1968年11月に初めて試乗がなされた。当初は「ボードセイリング」というのがスポーツの名称であったが、2005年にこのスポーツの中心的組織となるPWA(Professional Windsurfers Association)が発足し、その以降は「ウィンドサーフィン」が正式名称となっている。

ウィンドサーフィンの道具(詳細は後述の「道具の構成」以下を参照)は、開発当初には長さが360cmでサーフィンのロングボードと似た形状のダガーボードが付属されたセイルボードと専用リグが一体となった一種類のみで、開発時のプロトタイプは「SK8」、1969年2月には「WINDSURFER」(以下「サーファー艇」)という名称があたえられ、同年9月には販売が開始された。これが現在の「ロングボード」の原形となっている。

ウィンドサーフィンの人気は、発祥地アメリカ本土から1971年1月にはハワイオアフ島で後に「カイルア・キッド」と呼ばれる青年団を中心として、また、ヨーロッパでは1972年2月にスウェーデンを皮切りとして広がりを見せ、同年の9月にはドイツのズィルト島でレースが開催されるまでとなる。1974年には日本の鎌倉海岸、ハワイのカイルア(英語版)で大会が開催されている。

1980年にはハワイ・オアフ島ダイアモンドヘッドで、ラリー・スタンレーLarry Stanley とマイク・ホーガン Mike Horgan がサーファー艇を改良した波を利用してウェイブ・ライド(波乗り)とジャンプが行える後にファンボードと呼称されるボードの原形を創作し試乗に成功する。これが現在の「ショートボード」の原形となっている。

その後においてファンボード開発は革新的に進み、サーフボードと似た外形へと転向していくとともに軽量化が推進していく。また、セイルもボードの軽量短小化による運動性の向上に適応するよう改良され、ヨット同様の風を孕ませる形状で柔らかいダクロン製から、ウィンドサーフィン独自のバテンを配した形状で型崩れが少なく硬いフィルム製へと構造変更がなされていった。

ウィンドサーフィンはこのショートボードという型式が開発されたことにより、水面を滑走する「プレーニング」(詳細は後述)が行えるものとなり、走行速度も格段に向上していった。プレーニングの高速性を利用して能動的に波をとらえる動作幅も拡がり、スピード系統と併せてアクション系統の道具も開発されてゆくこととなる。この後数年間はスピード系統のファンボードはカイルア(英語版)で、アクション系統のファンボードはダイアモンドヘッドを中心として開発が進められた。

現在においてセイルボードを中心とした道具類は、世界各国で開催されるワールドカップや国際大会の競技種目に準拠して開発されているが、ショートボードの誕生から現在に至るまで、ロングボードとショートボードは別のカテゴリとして住み分けがされており、各々で組織形成がなされている。

なお、国際大会は、2018年現在ではPWAIOC(国際オリンピック委員会)の他にIWA(国際ウインドサーフィン協会)・ISAF(国際セーリング連盟)の主催で世界各地を転戦するワールドツアー形式により開催されている。日本における国際大会は、PWAの前身組織であるPBA(Professional Boardsailers Association)の主催で1984年から1993年の間にワールドカップの名称にて静岡県榛原郡御前崎町(現御前崎市)の白羽海岸で開催された。その後、2017年からPWAの主催により神奈川県三浦市横須賀市の津久井浜にてワールドカップが再開されている。



概要 1970年1月のジム・ドレイクとホイル・シュワイツァーによる特許申請図
進行原理

ウィンドサーフィンはセイルにを受けて進む[1]。飛行機の翼は水平だから垂直方向に揚力が働くが、ウィンドサーフィンはセイルを立てているので水平方向に揚力が働く[1]。その水平方向の揚力で走り始めると、ウィンドサーフィンをしている人から見ると進行風が前方から吹いてくるように感じられる[1]。ウィンドサーフィンは走っている時、実際の風と進行風が合わさった風である見かけの風をセイルに受け、その揚力によって進む[1]。ただしそれだけだとその揚力の向きは横向きにずれていて横流れが起きる[1]。そこで必要なのが横流れを防ぐであり、ダガーボードやフィンを使ってその力を生み出す[1]
直進と方向転換

ウィンドサーフィンの方向転換はヨットのような操作ではなく、リグとボードを操作することにより行う。

直進時の操作方法:セイルの風圧中心(CENTER OF EFFORT(以降CE))とボードの側圧中心(CENTER OF LATERAL RESISTANCE(以降CLR))の相対位置を垂直に保つことで、セイルに受けた風圧がボード全体へ均一に加圧されることでボード前方向へと直進する仕組みとなっている。

方向転換時の操作方法:直進状態からリグの前後操作及びボードへの加踏圧でCEとCLRの位置関係に変化を与え、ボードの前方または後方にかかる加圧配分が高くなった部位を起点として風下方向へと変向する。具体的には、ボードのユニバーサルジョイント接続位置より前方への加圧が高いと風下方向、後方への加圧が高いと風上方向へと方向転換が行われる。
走行可能な範囲

中上級者の走行可能範囲は、ヨットに比して若干狭くなるものの、風向きとの直交線上から風上方向に約30?40度を想定した線より風上を除く全ての方向に進むことができる[2]。ヨットは、船体に対して大きな比率のキールを備えられるため抗力が大きく、風上方向45度に走行できるのに対して、ウィンドサーフィンはフィンが小さくボードも(軽くて)横から見た水中の面積が小さいため抗力が小さく、横流れする割合[注 1]が大きいため、風上方向への上限角度は小さくなる傾向がある。風上方向への上限角度は、技量、使用する道具、風波の状態などの様々な条件に影響を受けるが、初心者?中級者向けの教科書ではおよそ15?30度程度が目安との解説がなされている。入門者は風に対して90度方向に走行することも困難な場面もあるので、風下方向へ漂流してしまうことへの注意が必要である。

進行方向に対しての名称:風に対して垂直方向「ウィンド・アビーム」、風上方向45度「クローズ・ホールド」、風下方向45度「クウォーター・リー」、風下方向「ランニング」、風上から45度「デッドゾーン」→詳細はen:Points of sailを参照。 ウィンドサーフィンの最速記録の推移(水色)
ウインドサーフィンの走行性

ウィンドサーフィンは、ある程度以上のスピード(約25km/h)に達するとボード全体が浮上し滑走するプレーニングができる。中級者以上になると容易に50km/h以上のスピードで滑走する高速感を体験できるのがこのスポーツの最大の魅力となっている。

なお、プレーニング時における世界トッププロの最速記録は、500m間では2015年にフランスのアントワン・アルボー(Antoine Albeau)が53.27kts(98.66km/h)、1海里間では2006年にスイスビヨン・ダンカーベックが41.14kts(76.19km/h)を記録し、World Sailing Speed Record Council(WSSRC)による公式記録として認定登録されている。
オリンピックでのウィンドサーフィン

オリンピックでは、競技者全員が「One Design」と呼ばれる認定登録された共通の道具を使用して競技が行われる。オリンピックでは、1984年第23回ロサンゼルス大会からセーリング競技の一種目として登録されており、2008年第29回北京大会では「RS:X-Windsurfer」という名称で競技が行われ、第30回ロンドン大会では、Neil Pryde社製のRS:X艇が使用された。
道具の構成

ウィンドサーフィンに使用する道具は、ユニバーサルジョイントにより接合させるボード部とリグ部、身体に装着する装具の3つに分類される。詳細は以下のとおり。 ウィンドサーフィンの構造
ボード部

ボード部は道具を水面に浮かべた状態においての下位部分のことで、セイルボード、フィン、ユニバーサルジョイントによって構成される。中・上級者はボード部のことを通称で「ボード」と呼ぶこともある。
セイルボード
水上における唯一の浮体物であり走行時の移動主体となるもの。サーフボードと似た形状の合成板であるが、より強度の高い構造設計でデッキ部の中央にはジョイントボックス、後方にはフットストラップが付帯される。形成された発砲素材にグラスメッシュ、カーボンメッシュを貼りつけたものをエポキシポリエステル素材で覆っている。ボードはダガーボード付属の有無によりロングボードとショートボードの2種に区分され、ダガーボードが付属されるエントリーボード、ロングレースボード、オールラウンドボードはロングボードにそれ以外はショートボードに属する。ダガーボードを使用すると横流れが少なくなるため、風上方向(アップウィンド)への走行性能が向上するが、水面抵抗が大きくなるため旋回性能と直進スピードは低下する。ボードは原則として自身の体重およびリグ重量を支えるのに必要な浮力を計算し、その浮力を確保できる体積リットルL=船舶での「排水量」にあたる。)ものを選択するが、入門段階ではより浮力が大きく安定性の高いものを、中級者以上では体重とリグ重量の条件に加えて風況・海面状況と乗る目的に応じたものを選択する。ボードは様々な体積と使用用途に対応させるため、幅50?110cm、長さ220?390cmのものが製造販売されている。
フィン 
ボードのボトム部後方に接続するひれ状のもの。水中で水との抵抗となり横滑りを抑制することで直進性を保持し、自体に揚力を発生させてボードの推進力を促すもの。サーフィンと同様の固定する型式で船やヨットのような可動して舵を取る機能はない。G-10(エポキシ樹脂)、ポリエステル素材のものが主流となっている。真っ直ぐな形状のものは直進安定性に湾曲した形状のものは回転運動性が優れる。レースボード、スラロームボード用のものは真っ直ぐで長く、ウェイブボード用のものは湾曲して短い。フリースタイルボード用のものはその中間的な形状となっている。フィンはボードに内蔵されるフィンボックスの数により、シングルフィン(1本)からクアッドフィン(4本)(例:ツインフィン(2本)、トライフィン(3本))まで存在するが、ウェイブボード以外のボードはシングルフィンのみとなっている。ウェイブボードは波のコンディションに合わせたボードの運動性能が求められることから、ボードの特性を好みに応じて選択できるよう多種のものが開発されている。特徴はシングルフィンは直進安定性と高速性が優れ、ツインフィンは回転運動性に優れる。トライフィンやクアッドフィンはその中間的な運動性能である。
ユニバーサルジョイント 
リグ部とボード部を接続するためのものであるが、ただのつなぎではなく、セイルが受けたパワーをボードに伝える部分である[3]。ボードのデッキ部に取り付けウレタン、ラバー部分が360°曲がることでリグ部を動かしたい方向に自由に操作できる構造になっている。ユニバーサルジョイントとジョイントベースで構成され、接続と取り外しがワンタッチで簡単に行える。以前は金属製でメカニカルな構造であったが、近年ではウレタンラバー素材の簡素な構造のものが主流となっている。このユニバーサルジョイントの存在がウィンドサーフィン独自のもので、ヨットと区別される所以となっている。
リグ部

リグ部は道具を水面に浮かべた状態においての上位部分のことで、セイル、ブーム、マスト、マストエクステンション、ハーネスラインで構成される。中・上級者はリグ部のことを通称で「セイル」と呼ぶこともある。 風速と体重からセイルサイズを選択するための算出例 ブーム。手前の黒い部分が「ブームジョー」、反対端が「ブームエンド」 画面中央のU字ライン状物体がハーネスライン
セイル 
風の力を推進力に変える部分[4]。風を受ける主要部分(パネル)はフィルム素材、マストとバテンを通す部分(スリーブ)はクロス素材による複合設計で構成されている。近年のものはセイルが風を受ける力を効率よく推進力とするために空気力学を取り入れた飛行機の翼と似た形状設計(バテン、キャンバー・インデュサーの内蔵等)が施されており、風の強弱に対応して常に安定した推進力が得られるよう微風時には風を全面で受け止め、中・強風時にはセイル上部にねじれを生じさせて過分な風を逃がす調節機能の向上が図られている。中級者以上では複数の面積のものを所持した上で、プレーニング走行を前提とするその風況に適応する面積(m2)のものを選択するが、入門段階ではより面積が小さく軽いものを使用することが望ましい。セイルは様々な風速に対応させるため、数々の面積のものが製造・販売されており、小さいものでは子供用の1.0m2から、大きいものは大人用の9m2以上のものまで[4]ある。


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