ウィンザーの陽気な女房たち
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この項目では、シェイクスピアの戯曲について説明しています。オットー・ニコライ作曲のオペラについては「ウィンザーの陽気な女房たち (オペラ)」をご覧ください。
ファースト・フォリオ1623年)の『ウィンザーの陽気な女房たち』のタイトルページ.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ポータル 文学ポータル 舞台芸術

『ウィンザーの陽気な女房たち』(ウィンザーのようきなにょうぼうたち、The Merry Wives of Windsor)は、ウィリアム・シェイクスピア作の喜劇である。
概説

出版は1602年だが、書かれたのは1597年より前だと考えられている。

太っちょ騎士フォルスタッフが主人公で、フォルスタッフは既に『ヘンリー四世 第1部』と『ヘンリー四世 第2部』に登場している。

タイトルに含まれている「ウィンザー」はイングランドバークシャーにあるウィンザー城への言及である。

ヘンリー4世の治世頃を扱っているはずであるが、一切辻褄合わせなどはせずに同時代のエリザベス朝イングランドの中流階級の生活を扱っており、シェイクスピアとしては唯一の「現代劇」である。

ヴェルディファルスタッフ』(1893年)、オットー・ニコライウィンザーの陽気な女房たち』(1849年)など、たびたびオペラ化されている。
登場人物フォルスタッフ(Eduard von Grutzner画)

サー・ジョン・フォルスタッフ(Sir John Falstaff)

フェントン(Fenton) - 若い紳士。

シャロウ(Shallow) - 治安判事。

スレンダー(Slender) - シャロウの従兄弟。

フォード(Ford) - ウィンザーに住む紳士。

ペイジ(Page) - ウィンザーに住む紳士。

ウィリアム・ペイジ(William Page) - 少年。ペイジの息子。

サー・ヒュー・エヴァンズ(Sir Hugh Evans) - ウェールズ人牧師。

キーズ(カイアス)医師(Doctor Caius) - フランス人医師。

ガーター亭の主人(The Host of the Garter Inn)

フォルスタッフの子分たち

バードルフ(Bardolph)

ピストル(Pistol)

ニム(Nym)


ロビン(Robin) - フォルスタッフの小姓。

シンプル(Simple) - スレンダーの召使い。

ラグビー(Rugby) - キーズ医師の召使い。

フォード夫人(Mistress Ford)

ペイジ夫人(Mistress Page)

アン・ペイジ(Mistress Anne Page) - その娘。フェントンに恋する。

クィックリー夫人(Mistress Quickly) - キーズ医師の使用人。

ペイジ、フォードの召使いたち

あらすじ

この劇では、中世(1400年頃)が舞台の『ヘンリー四世』の登場人物だったサー・ジョン・フォルスタッフを、執筆当時(1600年頃)に登場させている。

ウィンザーにやってきたフォルスタッフは金に困っている。そこで、ウィンザーの裕福な女房たち、フォード夫人とペイジ夫人に言い寄ることにする。フォルスタッフは名前だけ変えて内容はまったく同じラブレターを送ることにし、子分のピストルとニムに届けさせようとしたが、2人がそれを拒んだので首にする。ピストルとニムはフォルスタッフの企みを夫のフォードとペイジにばらす。ペイジはさほど心配しないが、嫉妬深いフォードは気にする。そこでフォードは「ブルック」と偽って、フォルスタッフに紹介してくれるようガーター亭の主人に頼む。

ペイジ夫妻の娘アン・ペイジを得ようとする3人の男(フェントン、スレンダー、キーズ医師)がいる。ペイジ夫人はフランス人のキーズ医師との結婚を望むが、ペイジはスレンダーがいいと思っている。しかし、アン本人が好きなのはフェントンである。ペイジは財産を食いつぶしたことでフェントンが気に入らない。

ウェールズ人牧師のヒュー・エヴァンズはスレンダーのために、アンと親しいキーズ博士の使用人クィックリー夫人に協力を求めるが、それをキーズ医師に知られる。キーズ医師はエヴァンズに決闘を申し込む。しかし、ガーター亭の主人がエヴァンズに違う場所を告げ、決闘はなんとか回避される。ヨハン・ハインリヒ・フュースリー画『洗濯籠のフォルスタッフ』(1792年)

フォルスタッフから恋文を受け取った女房たちは、そのことをお互いに打ち明ける。そして、名前を除けば手紙がまったく同じものだと知る。女房たちは年老りででぶのフォルスタッフにはなから興味がなかったが、懲らしめてやろうと、フォルスタッフの誘いに乗ったふりをする。フォード夫人は夫の留守中に家に訪ねるよう、クィックリー夫人を通してフォルスタッフに伝える。

「ブルック」に化けたフォードはフォルスタッフに会って、フォード夫人に恋していると嘘を言う。そして、自分とフォード夫人をとりもってくれるよう、大金を渡してフォルスタッフに頼む。女房の浮気を立証するためである。フォルスタッフはフォード夫人から誘われていることをブルック=フォードに打ち明ける。

フォルスタッフはフォード夫人に会いに行く。フォード夫人はフォルスタッフを汚れ物の入った洗濯籠の中に隠し、使用人たちに籠を川に捨てるよう命令する。そこにフォードが帰ってくるが、フォードはフォルスタッフを見つけられなくて悔しがる。

しかし、それにも懲りず、フォルスタッフは再度フォード夫人に会いに行く。そこにまたフォードが来て、フォード夫人は今度はフォルスタッフを太った女性に変装させて逃がす。フォルスタッフにとっては毎回踏んだり蹴ったりである。

女房たちは自分たちのやったことを夫たちに打ち明け、今度は全員でフォルスタッフを懲らしめることにする。

フォード夫人から、「狩人ハーン(Herne the Hunter)」の恰好をして、ウィンザーの森(現在のウインザー・グレート・パーク Windsor Great Park)のオークの木の下で待つように言われ、やってきたフォルスタッフだが、そこにフェアリーに変装したアンや子供たちが現れ、仰天する。この時、ペイジはスレンダーに、ペイジ夫人はキーズ医師に、妖精に扮したアンを連れ出し教会で結婚式を挙げるように言われるが、アンを連れ出したのはフェントンだった。
材源

『ウィンザーの陽気な女房たち』のいくつかの要素はセル・ジョヴァンニ・フィオレンティーノ(Ser Giovanni Fiorentino)の短編集『愚か者(Il Pecorone)』の翻案から取られている。その中の1つは、ウィリアム・ペインター(William Painter)の『快楽の宮殿(The Palace of Pleasure)』の中にも含まれている[1]
創作年代とテキスト

作品が作られた時期はわかっておらず、出版の登録がされた1602年より数年前だったと思われる。劇中でミストレス・クィックリーによるガーター勲章への言及があり、さらに1592年イングランドを訪れ、1597年にガーター勲章を受けたドイツの公爵ヴュルテンベルク公フリードリヒ1世についての言及がある[2]。このため、1790年にエドモンド・マローンはこの芝居はガーター騎士団の叙任式のために書かれ、上演されたのではないかと考えた[3]。ウィリアム・グリーンは、シェイクスピアの一座のパトロンであった宮内大臣ジョージ・ケアリーが1597年4月にガーター勲章を授かった時のために書かれたと考えている[4]。もしそうなら、おそらくこの劇は4月23日の祝宴にエリザベス1世が出席した際に上演されたのであろう。しかし、それは初演でなかったかも知れない。一般の劇場で上演されたことも考えられる。

本作がガーター勲章の式典のために書かれた芝居であるという説は推測でしかないが、1702年にジョン・デニス(John Dennis)が『ウィンザーの陽気な女房たち』を脚色した劇(後述)の序文に書いた記述もそれを裏付けている。さらに最初の現代版シェイクスピア全集を編集したニコラス・ロウ(Nicholas Rowe)によると、『ヘンリー四世』二部作を見て「恋するフォルスタッフ」を見たいと願ったエリザベス1世の依頼でシェイクスピアがこの劇を書いたことになっている。しかし、これは100年後の記述なので疑わしくもある。登場人物の設定における矛盾や、結末のいい加減なところは、エリザベス1世がシェイクスピアに劇を書かせたという説を裏付けるものだが、『ヘンリー五世』以降に書かれたことを意味しているようにも見える。たとえば、登場人物ページのファーストネームは、ある箇所では「トーマス」ある箇所では「ジョージ」と呼ばれている。同様に第5幕でアン・ペイジが着る妖精の衣裳にも「白衣」と「緑衣」がある。韻文の台詞もシェイクスピアにしては出来が良くない。T・W・クレイクは、エリザベス女王に関する逸話はクォート版のタイトルページに御前上演の記述があることから生まれた単なるファンタジーであると考えている[5]


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