ウィズコロナ
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ウィズコロナ(またはWithコロナ、:With corona、Coexist with the coronavirus、Coexist with COVID-19)とは、COVID-19流行後の新型コロナウイルス感染対策と社会経済活動の両立を図る政策[1][2]英語では「Coexist with the coronavirus」「Coexist with COVID-19」などと略さずに表記される[3][4]対義語として中国などが推し進めた「ゼロコロナ」がある。

日本では、2022年9月に内閣官房から「Withコロナに向けた政策の考え方」が示され、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図る方針に転換した[5]
概要新型コロナウィルスの流行により、人通りが途絶えた街(アルメリア)2020-4-2

新型コロナウイルスは、長期間にわたり変異を繰り返し、収束までにはさらに大規模な感染拡大が生ずることも懸念される可能性が高いと考えられ[5]、人々の暮らし方や価値観、他者との交流、また企業での対応などに大きな変化をもたらすと予想されたことで、「ウィズコロナ」という言葉は、メディアなどで盛んに用いられ、流行語ともなり議論されるようになった[4][6]。「新しい生活様式」や「新しい日常」といった言葉が誕生し、「ソーシャルディスタンス」、「3密を避ける」、「テレワーク」や「在宅勤務」といったコロナとの共生の時代が始まった。一方で、在宅勤務で、家族と過ごす時間が増えたり、家の環境がテレワークに向いていない、休校期間中の子どもの世話が大変だったという声も聞こえた。総じてコロナ禍は人々の行動範囲を狭めたが、一方で、人々が自分居場所と地域社会への関心や繋がりを深める機会となった[7]

世界規模での新型コロナウィルスの流行により、人は社会生活の大きな変化を否応なく受け入れざるを得ない状況に置かれた。新型コロナウイルスのワクチン治療薬はすぐには開発できない可能性を視野に入れた生活へのスタイルの変化を余儀なくされ、新型コロナウィルスと共生していくことが求められる“ウィズ・コロナ時代”を迎えた。世界の人々が「stay at home」という制約のもとに置かれたのは、世界の歴史の中でも類を見ない異常事態であった。パンデミック宣言から約2か月後には、世界経済は再始動を開始するが、経済へのダメージは大きく、繰り返す感染の波や米中対立など不確実な要素が多く、世界は不安定な環境に置かれることとなった。アメリカでは、2020年4月の失業率は14.7%と世界恐慌以来最悪の水準となり、この一ヶ月だけで2000万人以上の雇用が失われた。中国で第1波が収束したタイミングで欧米での需要が激減し、中国経済の回復を鈍化させた。その後、中南米に感染が拡大したことで北米の製造業にも影響が波及。近年強まっていた保護主義が一段と強まる懸念が指摘された[8][9][10][4]

米中対立は感染拡大でさらに加速、製造業のみならず、テクノロジーの開発や利用、ビッグデータの構築でも米中対立が激化し、結果的にアメリカ経済と中国経済のデカップリング、米中断絶を促進した。株式市場では暴落が起こったが、FRBによる大胆な金融緩和策とそれに追随する世界中の中央銀行による金融緩和により、一層の下落を防いだものの、ハーバード大学教授 ローレンス・サマーズは根本的な解決にはならないどころか、経済回復の妨げになる可能性さえあると指摘した[8][4][9]



中国SNS上で「ウイルスとの共存」論を唱えた張文宏

中国では当初「世界で最も厳格」と誇る強権的手法で、「ゼロコロナ政策」がとられ、封じ込めを図った結果、感染拡大が止まらなかった欧米などとの比較で、習近平政権に、「中国の体制の優位性を示した」とまで言わしめるほど、効果をもたらせ政権のアピールに使われた。中国で著名な感染症専門家の上海復旦大学の張文宏主任が、SNS上で「ウイルスとの共存」論を唱えるなど、転換論が出たが、政府側はこうした動きに強い警戒感を見せた[11]。しかし、国民による抗議デモなどが各地で巻き起こり、2022年12月7日、「新10条」と称される通知により、ゼロコロナ政策の転換を図った。これは、「世界の工場」としての地位を失いかねないという不安が高まったことや国民の習近平政権への信頼著しい低下などが原因とされる[12][13]
日本

日本では、当初、インバウンドの減少による地域経済への影響で観光業を筆頭に、サービス業全体で需要低下が長期化する懸念が強まった[8][4][9]西村康稔経済再生担当大臣オンライン化、デジタル化を一気に進めるべきと発言した[9]厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議からの提言を踏まえ、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」として、今後、日常生活の中で取り入れるべき実践例を示した[14]

文化庁は「ウィズコロナ・ポストコロナ時代においては、富裕層など上質な観光サービスを求める旅行者の滞在・消費の促進を図るための環境整備が急務であり、日本の文化施設や文化資源は、こうした旅行者に好まれるコンテンツとしてのポテンシャルを有していることを踏まえ、同旅行者の長期滞在及び消費拡大に向け、文化施設や文化資源の高付加価値化を促進し、「文化振興・観光振興・地域活性化」の好循環を創出する」と発表した[15]。また、2021年2月から3月に、「文化庁シンポジウム「ウィズコロナ・アフターコロナにおける文化芸術フェスティバルの国際発信とインバウンド拡大に向けた展望」について」と題するシンポジウムを行った[16]

その後、新型コロナウイルス対策については、ウイルスの特性の変化やワクチン接種の進捗に応じて、感染者全員入院からの転換、国民の行動制限や経済活動の制限の見直しを行うなど、感染状況に即した政策がとられた。しかし、2022年9月には内閣官房から「Withコロナに向けた政策の考え方」が示され、その中でオミクロン株については、若者の重症化リスクは低く、大部分の人は感染しても軽症で入院を要せず、感染の中心が飲食の場から学校保育所高齢者施設等の施設や家庭内感染へと変化してきたことなどを鑑み、新たな行動制限をとらず、重症化リスクのある高齢者等を守ることに重点を置きながら、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図る方針(ウィズコロナ)に転換した。この背景には、約5万の病床・ベッド数の全面的稼働や約4万か所の発熱外来の拡充、入院対象者の調整、オミクロン株に対応した発熱外来自己検査体制の整備、高齢者施設の医療支援、3?4回にわたるワクチンの接種、治療薬の活用促進などがあった。これらの対策により新型コロナウイルス感染症そのものの重症化は抑制することができたと日本政府が考えたことにある[5]

内閣総理大臣岸田文雄は、2023年1月20日の記者会見と1月23日開会の通常国会の施政方針演説にて、新型コロナウイルス感染症について感染症法上の「新型インフルエンザ等感染症」から5類感染症とする方向で議論を進めることを表明し、ウィズコロナに向けて円滑な移行を円滑に行うべく、自民党では議論が始まった[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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