イージス弾道ミサイル防衛システム
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アメリカ海軍タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦レイク・エリーから発射されるRIM-161スタンダード・ミサイル(SM-3)

イージス弾道ミサイル防衛システム(イージスBMDシステム、英語: Aegis Ballistic Missile Defense System)は、イージス艦を用いた弾道ミサイル防衛(Ballistic Missile Defence, BMD)システムである。
来歴

艦隊への経空脅威の増大に対抗するため、アメリカ海軍冷戦下の1960年代末よりイージス武器システム(AEGIS Weapon System、AWS)の開発に着手し、1983年よりタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦、また1991年からはアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦にも搭載して、艦隊に配備した[1]。このAWSは、有人の攻撃機爆撃機や、これらの航空機または艦艇から発射される対艦ミサイルの排除を目的とする究極の艦載防空システムとして位置付けられていた。当時、ソビエト連邦軍SS-20中距離弾道ミサイルスカッド短距離弾道ミサイルを配備していたものの、西側諸国からは、SS-20は準戦略兵器として、またスカッドは欧州の地上戦での長距離砲兵として捉えられており、これらの迎撃を目的とした防衛は重視されなかった[2]

しかし、イラン・イラク戦争湾岸戦争でスカッドが大量に使用されたほか、ソビエト連邦の崩壊によって弾道ミサイルと関連技術・技術者が第三世界に拡散したことで、戦術弾道ミサイルへの対策が求められるようになった。まず応急的な施策が行われたのち、1993年に成立したクリントン政権において、アメリカ合衆国本土防衛のための国家ミサイル防衛(National Missile Defence, NMD)と、同盟国および海外展開米軍部隊の防衛のための戦域ミサイル防衛(Theater Missile Defense, TMD)の二本柱として再編成された。新しいBMD体制では、先行する戦略防衛構想で検討されていたような宇宙配備システムは棄却され、地上配備システムと海上配備システムに注力することになり、海上配備システムのプラットフォームとして、イージス艦が期待されるようになった[2]

続くブッシュ政権では、大量破壊兵器や弾道ミサイルの世界的な拡散に対処するため、BMDをさらに推進した。これに伴ってNMDとTMDの区別を廃止して単にMDと称することになり、弾道ミサイルの飛翔過程をブースト、ミッドコース、ターミナルの3段階に区分して、それぞれに対処するBMDシステムを整備する縦深的な防御態勢が志向された。イージスBMDは、まずミッドコース迎撃を担当する海上配備システムとして整備されていくことになった[2]

なお、イージスBMDシステムの開発はアメリカ合衆国国防総省ミサイル防衛局アメリカ海軍の主導下で行われているが、日本も開発に参加しており、アメリカ海軍と海上自衛隊が導入している。
構成
イージスBMDシステム

BMD機能は、従来のAWSの機能とは大きく異なることから、イージスBMD(AEGIS Ballistic Missile Defense, ABMD)として独自のバージョン管理がなされている[3]。開発にあたってはスパイラルモデルが採択されている[4]
イージスBMD 3.0シリーズ

第一段階としてのイージスBMD 3.0シリーズでは、短距離弾道ミサイル(short-range ballistic missile, SRBM)および準中距離弾道ミサイル(medium-range ballistic missile, MRBM)への迎撃能力が整備された[5]

2004年9月、交戦機能を省いて、遠距離の捜索と追跡(Long range surveillance & track)機能だけを実装したバージョンとしてBMD 3.0Eが先行して実用化された。これにより、コンピュータ・プログラムの改良によって、レーダー・エネルギーを集中させて弾道ミサイルを追尾することができるようになったほか、IBS(Integrated Broadcast Service、統合同軸報送信サービス)に接続するための端末装置であるJTT(Joint Tactical Terminal)が搭載された[6]

2005年春、SM-3ブロックIによる交戦機能を追加したBMD 3.0が実用化された。この時点では、BMD 3.0を搭載したのはいずれもタイコンデロガ級であり、アーレイ・バーク級の改修内容は、BMD 3.0Eによる捜索・追跡機能に限られた[3]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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