イージスシステム
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イージスシステムのCIC(戦闘情報センター)配席図

イージスシステム(英語: Aegis System)は、アメリカ海軍によって、防空戦闘を重視して開発された艦載武器システム。正式名称はイージス武器システムMk.7(AEGIS Weapon System Mk.7)であり、頭文字をとってAWSと通称される[1]防衛省ではイージス・システム、イージスシステムの両方の表記を使用している[2][3]

イージス(Aegis)とは、ギリシャ神話の中で最高神ゼウスが娘アテナに与えたというであるアイギス(Aigis)のこと。この盾はあらゆる邪悪を払うとされている(胸当てとの異説もある)[4]
概要

イージスシステムは、アメリカ海軍のウィシントン提督、マイヤー提督の指導のもと、RCA社のレーダー部門(現ロッキード・マーティン)が開発した艦載武器システムである[5]

従来、空の脅威から艦隊を守ってきた各種の艦対空ミサイル・システム(ターター・システムなど)は、いずれもせいぜい1?2個の空中目標に対処するのが精一杯であり、また意思決定を全面的に人に依存していたことから、応答時間も長かった。こういった問題を解決するため、1950年代末よりアメリカ海軍は新しい防空システムの開発を試みたものの、計画は難航した。その後、慎重に洞察を重ね、また新しい技術を適用することで、1960年代末から1970年代にかけて開発されたのがイージス・システムである[4][6]

イージスシステムは、従来のような単なる防空システムという枠にとどまらない、極めて先進的かつ総合的な戦闘システムとして完成された。イージスシステムにおいては、レーダーなどのセンサー・システム、コンピュータデータ・リンクによる情報システムミサイルとその発射機などの攻撃システムなどが連結されている。これによって、防空に限らず、戦闘のあらゆる局面において、目標の捜索から識別、判断から攻撃に至るまでを、迅速に行なうことができる。本システムが同時に捕捉・追跡可能な目標は128以上といわれ、その内の脅威度が高いと判定された10個以上の目標[注 1]を同時迎撃できる。このように、きわめて優秀な情報能力をもっていることから、情勢をはるかにすばやく分析できるほか、レーダーの特性上、電子攻撃への耐性も強いという特長もある[4]

高性能ゆえに高価であり、イージスシステム全体としての価格は500億円と言われている。ただ、開発が1969年に始まったため技術としては既に成熟域に達しており、欧州諸国が独自に開発・採用している同種のシステム[注 2]よりは相対的に価格がこなれている。スペインがドイツ・オランダとの防空システム(NAAWS)共同開発から脱退し「イージス」を採用した(アルバロ・デ・バサン級フリゲート)のもそれが理由である。
開発
タイフォンの挑戦と挫折イージスシステムの試験に従事する実験艦「ノートン・サウンド」詳細は「タイフォン・システム」を参照

アメリカ海軍は、第二次世界大戦末期より、全く新しい艦隊防空火力として艦対空ミサイル(SAM)の開発に着手していた。1944年4月の開発要請に応じ、ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所(JHU/APL)が同年12月に提出した案に基づいて開始されたのがバンブルビー計画であった[7]。まもなく日本軍が開始した特別攻撃(特攻)の脅威を受けて開発は加速、また戦後ジェット機の発達に伴う経空脅威の増大を受けて更に拡大され、1956年にはテリア、1959年にタロス、そして1962年にターターが艦隊配備された。これらは3Tと通称され、タロスはミサイル巡洋艦、テリアはミサイルフリゲート(DLG)、そしてターターはミサイル駆逐艦(DDG)に搭載されて広く配備された[4]

しかし、3Tファミリーのうち、もっとも早く開発が進行したテリアミサイルがようやく就役しつつあった1950年代後半の時点で、既にこれらのミサイル・システムには、設計による宿命的な限界が内包されていることが指摘されていた。具体的には、

攻撃に際しては、同じ目標を捕捉レーダー火器管制レーダーが重複して追尾することになる

ミサイルの発射から命中まで、1つの目標に対して1基の射撃指揮装置が占有されてしまう

という問題が指摘されていた。このために、同時に対処できる目標は射撃指揮装置の基数と同数(2?4目標)に制約されていた上に、自動化の遅れから、即応性にも問題があった[4]


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