インボイス制度
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インボイス制度(インボイスせいど、英語: Invoice reporting)とは、消費税付加価値税)の仕入税額控除の方式の一つで、課税事業者が発行するインボイス(売手が買手に正確な適用税率や消費税額等を伝えるために発行する請求書納品書など[1])に記載された税額のみを仕入税額控除することができる制度のことである[2]

2023年1月時点で、OECD加盟国でインボイス制度が導入されていないのは、日本と消費税(付加価値税)の存在しないアメリカ合衆国のみであった[3]

2023年令和5年)10月1日から日本でインボイス制度が導入・開始されることになった。これは「平成28年度税制改正法案」(2015年12月16日、自由民主党公明党により策定された「平成28年度税制改正大綱」に基づく)を受けたもので、法人税減税と軽減税率に並行したものの、これにより、売上税制度のアメリカ以外の全OECD加盟国がインボイス制度を導入することになった[4][5][6][7][8][9]

ただし、日本もアメリカも国外取引(海外への送付・輸出時)には既にインボイス又は電子インボイス(英語版)を導入している。電子インボイスは2012年9月1日に欧州連合のプロジェクトで制定された国際規格「PEPPOL(英語版)(ペポル、汎欧州オンライン公的調達、Pan-European Public Procurement OnLine)」に従ったモノを使用している[10][11][12][13][14]
概要

付加価値税(消費税)導入しているOECD38カ国中の37カ国[15]の中で日本は唯一、2023年9月30日迄はインボイス方式(適格請求書等保存方式)ではなく帳簿方式(帳簿及び請求書等の保存要件)を採用していた。

帳簿方式は、事業者自身の帳簿上記載に基づいた納付税額算出方式であるのに対し、インボイス方式は、売り手側の事業者が発行するインボイスに基づいた納付税額を算出する仕組みとなっている[5][16]

インボイス制度は正確な納税が出来る一方で、どちらかがデジタル化しておらず、アナログのままだと、デジタル化している側に業務負担が発生する。逆に、取引の双方がデジタル化していると、業務負担軽減の恩恵を受けられる。そのため、既にインボイス制度を導入している日本以外のOECD諸国では、事業者負担軽減のためにインボイスのデジタル化とその義務化範囲の拡大を行っている[5][17]

台湾(中華民国)では、日本の消費税のような付加価値税を「営業税」呼び、1951年1月1日から「統一発票」という名でインボイス制度が導入されている[18][19][20]

中華人民共和国(中国)では1993年12月13日以降、「中華人民共和国増値税暫定条例」の実施により、増値税発票制度(インボイス制度)が導入された[21]

韓国は付加価値税(消費税)の税率は1977年の制度導入以来、10%という単一税率なもののインボイス制度を導入した[22]。2010年にはデジタルインボイス制度が導入され、2011年に全法人事業者にデジタルインボイス発行を義務化した。2012年には税抜き年間売上高が10億ウォン(約1億円)以上の個人事業者も義務化し、その後も最終的に全事業者のインボイスをデジタル化させるために、義務化の範囲を年々拡大させている[5]

古くから国境を越える取引が盛んに行われてきたヨーロッパでは、インボイス方式が商取引の慣行として定着した。商取引の情報を書面及び電子的形式で表現し発行するものである[4]

EU加盟各国の法的整合・欧州経済を活性化する目的で制定される各国共通の指令(ルール)であるEC指令[23]で「付加価値税消費税)におけるインボイス制度」が定められている[4]。EU加盟国には、インボイス保存が要件・インボイス記載の税額のみ控除・発行義務者を事業者とすること・免税業者は税額の記載不可とすること・などの8つの記載事項が決められている。そのため、EU加盟国のフランスドイツだけでなく、2016年6月23日の国民投票でEU離脱以降のイギリスも引き続き、EC指令に沿った国内法を制定・維持している[4]

EUでは2019年4月以降、全EU加盟国の行政機関で欧州標準電子インボイス制度が義務化されている[24]

2022年にはEU域内で「統一的運用電子インボイス制度」を構築すると発表した。これによって、各取引における必要情報が税務当局に集約されるため、時間差利用の不正行為防止することで当局目線では徴税機会の損失減少、企業目線では申告不要となるメリットがある[25]

日本でのインボイス制度導入については、システム導入コストの事務負担は導入時のみであり、一旦導入してしまえば、その後は軽減税率導入に伴う複数税率下での事務負担の減少につながるとの意見が一部で言われている。一方で、取引停止や減少のリスク、事務負担の増加、税負担増(小規模・免税事業者の収入減、廃業)、煩雑な税務処理、書類管理や電子化の負担、逆進性、個人情報保護などの観点から日本経済へ悪影響の可能性が指摘されている[26][27][28][29][30][31][26]。詳細は「#議論」を参照


日本はデジタルトランスフォーメーション(DX)が世界各国より遅れており、混同されやすいが電子化とデジタル化は異なる。

インボイス制度において、保存義務化とされる「請求に係る電子データ」が電子インボイスと呼ばれる。発行側が「電子化」しかしてない場合は「デジタル」だった電子データを「紙」「単なる画像データとしてのPDF」へ変換(アナログ化)する無駄を行うために、受け手側がデジタルへ請求記録を再変換する負担が発生する[32]。そのため、インボイス制度では、双方がデジタル化している必要がある。そして、その場合には、業務負担軽減の恩恵がある[5]
日本のインボイス制度

日本では、2023年(令和5年)10月1日から適格請求書等保存方式という名でインボイス制度が導入[33]。適格請求書等保存方式においては、消費税の仕入税額控除の要件の一つとして適格請求書発行事業者が交付する「適格請求書」の保存が必要となる[33][注釈 1]。この適格請求書発行事業者となるには、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録を受ける必要がある[33][注釈 2]


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