インフルエンザの流行(influenza pandemic)は、過去140年間で5回のパンデミックが発生しており、1918年のパンデミック(スペインかぜ)が最も深刻であった。スペインかぜでは、世界で5000万-1億人の死者を出したと推定されている。最近の2009年新型インフルエンザの世界的流行では、100万人弱の死者が出ているが、これは比較的軽度と考えられている。パンデミックは不規則に発生する。
世界保健機関は、ある新型のウイルスが最初の数人に感染し、それが世界中に移動するプロセスを、6つのステージに分類している。これは主に動物に感染するウイルスから始まり、それが動物から人に感染するものであった場合(新型インフルエンザ)、ウイルスが人同士で直接広がり始め、最後には新型ウイルスによる感染が世界中に広がるパンデミックとなるというステップである[1]。目次 WHOは世界的流行(パンデミック)の警戒水準を以下に定めている[2]。 CDCはインフルエンザ・パンデミック重度指数 (Pandemic severity index, PSI) を作成し、以下のカテゴリー分けが行われている。 CDC Pandemic Severity Index chart[3]カテゴリー致命率例 期間感染地域詳細死亡者数出典 鳥インフルエンザの一種と考えられるスペイン風邪は、1918年、アメリカ合衆国の兵士の間で流行しはじめ、人類が遭遇した最初のインフルエンザの大流行(パンデミック)となり、感染者は6億人、死者は最終的には4000万人から5000万人におよんだ。当時の世界人口は12億人程度と推定されるため、全人類の半数もの人びとがスペイン風邪に感染したことになる。この値は、感染症のみならず戦争や災害などすべてのヒトの死因の中でも、もっとも多くのヒトを短期間で死に至らしめた記録的なものである。 死者数は、第一次世界大戦の死者をはるかにうわまわり、日本では当時の人口5500万人に対し39万人が死亡、アメリカでは50万人が死亡した。詩人ギヨーム・アポリネール、社会学者マックス・ヴェーバー、画家エゴン・シーレ、劇作家エドモン・ロスタン、作曲家チャールズ・ヒューバート・パリー、革命家ヤーコフ・スヴェルドロフ、音楽家チャールズ・トムリンソン・グリフスが亡くなっており、日本でも、元内務大臣の末松謙澄、東京駅の設計を担当した辰野金吾、劇作家の島村抱月、大山巌夫人の山川捨松、皇族の竹田宮恒久王、軍人の西郷寅太郎などの著名人がスペイン風邪で亡くなっている。
1 指標
1.1 WHOによる流行警戒水準
1.2 CDCパンデミック指数
2 歴史
2.1 1918年、スペイン風邪
2.2 1957年、アジア風邪と香港風邪
2.3 2009年新型インフルエンザ
3 脚注
3.1 注釈
3.2 出典
4 参考文献
5 関連項目
指標
WHOによる流行警戒水準
前パンデミック期
フェーズ1 - 動物のインフルエンザウイルスでヒト感染を引き起こすものは、報告されていない。
フェーズ2 - 動物(飼育または野生)のインフルエンザウイルスのヒト感染が知られ、ゆえにそのウイルスがパンデミックの潜在的脅威と考えられる。
パンデミックアラート期
フェーズ3 - 人々の間で、散発的にまたは(いくつかの)小規模集団において疾患が発生するが、コミュニティ・レベルの大発生を支えるほどのヒト―ヒト伝染には至らない。限定的なヒト―ヒト伝染が、ある環境(例:感染者と無防備な介護者との密な接触)で起こることはあっても、そのウイルスがパンデミック・レベルの伝染能力を得たわけではない。
フェーズ4 - コミュニティ・レベルの大発生の要因となるヒト―ヒト伝染が確認される。罹る事態が疑われるか確認された国は至急、WHOと相談すべきであり、状況を共同で評価し、早急なパンデミック封じ込め作戦を実行可能かどうか判断する。パンデミックのリスクの増大は重要である一方、パンデミックが当然に起こるとは限らない。
フェーズ5 - ヒト―ヒト伝染がWHOの同一管区の複数の国で広まる。大半の国は影響を受けていない段階だが、フェーズ5の宣言は、パンデミックが差し迫り、鎮静手段の計画を策定、伝達、実行するための時間が短いことを、強く示すものである。
パンデミック期
フェーズ6 - フェーズ5以外のWHOの管区の一国以上でコミュニティ・レベルの大発生に至る。フェーズ6の指定は、地球規模のパンデミックが起きていることを示すものである。
CDCパンデミック指数
10.1% 以下季節性インフルエンザ、2009 A(H1N1)[4][5]
20.1?0.5%アジアかぜ、香港かぜ
30.5?1%
41.0%?2.0%
52.0% 以上スペインかぜ
歴史
1493イスパニョーラ島
1558 - 1559メキシコ、ペルー
1732 - 173313植民地
1761北米、西インド諸島
1775 - 1776イングランド[6]
1793アメリカ
1847 - 1848世界的[7]
1850 - 1851北米
1857 - 1859ヨーロッパ、北米、南米
1889 - 1890世界的ロシアかぜ[注 1]100万人[8]
1918 - 1920世界的スペインかぜ5,000万 - 1億人[9]
1957 - 1958世界的アジアかぜ約200万人[10]
1968 - 1969世界的香港かぜ100万人
1977 - 1978ソ連ソ連かぜ
2003 - 2004福建かぜ
2009 - 2010世界的2009年新型インフルエンザの世界的流行14,286人[11][12]
「ウイルスの社会史#インフルエンザ」も参照
1918年、スペイン風邪詳細は「スペインかぜ」を参照 スペイン風邪の患者でごった返すアメリカ軍の野戦病院(アメリカ合衆国・カンザス州)
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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