インターネットの歴史(インターネットのれきし)は1960年代のパケット通信の研究から始まる技術的な系譜で定義される。
直接的な関係は無いが、国際的な通信網はインターネットが初めてではなく、電信網が初めてである。19世紀後半には世界中に電信網が張り巡らされ、モールス信号による低速度な符号ベースの通信が行われていた。1940年代までコンピュータは存在せず、電信局の局員によるモールス信号の打鍵あるいは交換器で遠隔地にメッセージが転送される方法が主であったが、その時代にも電子商取引や新聞の伝言スペースへの文章投稿などは行われていた。電信の後に音声を伝達できる電話が考案され、1950年代には、黎明期にあった電子式コンピュータやテレックス網などを用いて、遠隔地のコンピュータ間の通信や端末との通信を行うようになった。インターネットを支える基本技術のひとつである、初期のパケット通信の研究が始められたのは1960年代からであり、人類の国際的な通信網の歴史からすると比較的後発である。ARPANET、イギリス国立物理学研究所のMark I、CYCLADES、メリット・ネットワーク(英語版)、Tymnet(英語版)、Telenet(英語版)といったパケット交換ネットワークが1960年代末から1970年代初めに開発され、様々な通信プロトコルを用いていた。中でもARPANETは、複数のネットワークを相互接続し,ネットワークのネットワークを構築するインターネットワーキングのためのプロトコルの開発へと乗り出した。
1982年、インターネット・プロトコル・スイート (TCP/IP) が標準化され、TCP/IPを採用したネットワーク群を世界規模で相互接続するインターネットという概念が提唱された。ARPANETへの接続は、1981年にアメリカ国立科学財団 (NSF) がCSNET (Computer Science Network) を開発したときに拡張され、さらに1986年にNSFNETが全米各地の研究教育機関から複数のスーパーコンピュータへの接続を提供した際にも拡張された。営利目的のインターネットサービスプロバイダ (ISP) が1980年代末から1990年代に出現しはじめた。ARPANETは1990年に役目を終える。1995年にNSFNETも役目を終えると、インターネットの商業化が完了し、インターネットの営利目的の利用についての制限がなくなった。
1990年代半ば以降、インターネットは文化や商業に大きな影響を与えている。電子メールによるほぼ即時の通信、インスタントメッセージ、VoIPによる「電話」、ビデオチャット、World Wide Web とそれによるインターネットコミュニティ、ブログ、ソーシャル・ネットワーキングなどがインターネットによって可能になった。研究教育コミュニティはさらに開発を進め、NSFのvBNS(英語版) (Very high-speed Backbone Network Service)、Internet2、ナショナル・ラムダレール(英語版)などの進化したネットワークを使っている。増大するデータ量が、1 Gbit/s,10 Gbit/s,100 Gbit/s,200 Gbit/s,400 Gbit/s等で動作する光ファイバー網の上でますます高速に転送される。増大するオンラインの情報・知識・商取引・娯楽などに駆り立てられ、インターネットは成長を続けている。
試算によれば、1993年時点での双方向電気通信でやり取りされた情報の総量のうち、インターネットを使ったものは1%にすぎなかった。2000年にはそれが51%に成長し、2007年には97%以上の情報がインターネット経由でやり取りされている[1]。その後はビッグデータ社会が到来し、IoTと称して、様々なモノがセンサーとしてインターネットに接続されるようになった。その結果として、学習データが豊富に集まるようになり、AI社会が到来した。インターネットは情報の流通の面で、社会に非常に大きな変化を引き起こした。
インターネットの年表
初期の研究開発:
1961 最初のパケット通信の論文
1966 メリット・ネットワーク創設
1966 ARPANET計画開始
1969 ARPANETで初のパケット送信
1970 イギリス国立物理学研究所の Mark I
1970 ネットワークインフォメーションセンター (NIC)
1971 メリット・ネットワークのパケット交換網運用開始
1971 Tymnetのパケット交換網
1972 Internet Assigned Numbers Authority (IANA) 創設
1973 CYCLADESのデモ公開
1974 Telenetのパケット交換網
1976 X.25プロトコルの規格承認
1979 インターネットアーキテクチャ委員会 (IAB)
1980 UUCPによるネットニュース開始
1980 イーサネットの規格公開
1981 BITNET創設
ネットワーク同士の接続とインターネットの創造:
1981 CSNET (Computer Science Network)
1982 TCP/IP標準化
1982 Simple Mail Transfer Protocol (SMTP)
1983 Domain Name System (DNS)
1983 ARPANETからMILNETを分離
1986 NSFNET(56 kbit/s のリンク)
1986 Internet Engineering Task Force (IETF)
1987 UUNET創設
1988 NSFNETの高速化: 1.5 Mbit/s (T1)
1988 OSI参照モデルリリース
1988 モリスワーム
1989 Border Gateway Protocol (BGP)
1989 PSINet創設。商用利用開始
1989 Federal Internet Exchange (FIX)
1990 GOSIP[2](TCP/IPは含まれていない)
1990 ARPANET退役
1990 Advanced Network and Services (ANS)
1990 UUNET/Alternetで商用利用を許可
1990 archie検索エンジン
1991 Wide Area Information Server (WAIS)
1991 Gopher
1991 CIX(初の商用インターネットエクスチェンジ)
1991 ANS CO+REにて商用トラフィックを許可
1991 World Wide Web (WWW)
1992 NSFNETの高速化: 45 Mbit/s (T3)
1992 インターネット協会 (ISOC) 創設
1993 Classless Inter-Domain Routing (CIDR)
1993 InterNIC創設
1993 Mosaicウェブブラウザ
1994 初のWebを対象とした全文検索エンジン (WebCrawler)
1994 North American Network Operators' Group (NANOG) 発足
商用化、民営化、接続拡大によるインターネットの変化:
1995 NAPによる商用ISPの相互接続という新たなインターネットの構成が登場
1995 NSFNET退役
1995 GOSIPの更新でTCP/IPが含まれるようになった
1995 Very high-speed Backbone Network Service (vBNS)
1995 IPv6提案
1998 ICANN (Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)
1999 IEEE 802.11b 無線ネットワーク
1999 Internet2/アビリン・ネットワーク
1999 vBNS+によりvBNSへの接続が拡大して許可される
2000 インターネット・バブル
2001 Code Red I、Code Red II、Nimdaといったワームが登場
2003 ナショナル・ラムダレール創設
主なインターネット・サービスの例:
1990 IMDb 映画データベース
1995 Amazon.com オンライン小売業
1995 eBay オンラインのオークション/小売業