イングランド人
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イングランド人
English people:100-125 Million総人口
世界中において
約9,000万人
居住地域
 イギリス   45,565,093 b[1]
 アメリカ45,516,394 a[2]
 カナダ6,570,015 c[3]
 オーストラリア6,358,880 d[4]
 ニュージーランド2,987,321e[5]
言語
英語イギリス英語、イングランド英語)
宗教
プロテスタント聖公会イングランド国教会)が主流だが、カトリック教会も存在する
関連する民族
スコットランド人コーンウォール人
a イングランド系アメリカ人, b イングランド系カナダ人, c イングランド系オーストラリア人

イングランド人(イングランドじん、英語:English people 古英語:Englisc)は、イングランドを起源とし、英語を主な母語とする民族のこと。またはイングランド区域内で出生した連合王国(イギリス)の国籍を有する住民(この場合は、イングランド以外にルーツを有する者を含む)のこと。イングランド人としての民族アイデンティティの起源は古く、最初期においてはAnglecynn(アングル人)と呼ばれていた。

イングランド人の最も大きな集団は、イギリスの構成国(イギリスのカントリー)のひとつであるイングランドに居住している。この集団のうち、近世以前からこの地に定着していた人々の末裔は、ブリトン人、ローマ・ブリトン人、アングロ・サクソン人ヴァイキングノルマン人など、イングランドに当たる地域に定住していた近縁の民族集団との混血であるといわれている。2013年に発表された現代ヨーロッパの遺伝学的な研究によれば、現代ヨーロッパ人の遺伝子構造は、約7500年前に移動して来た最初の農耕民やこれより古い時代の狩猟採集民ではなく、新石器時代中期の紀元前4500年頃に定着したとされている[6]

より近年のイングランドへの移住者には、グレートブリテン島・アイルランド島をはじめ様々な地域の民族がおり、これらの大部分はウェールズスコットランドアイルランド共和国イギリス連邦諸国である。これらの移住者には、イギリス人・イングランド人としてのアイデンティティを持つものもいれば、二重もしくは外国系のアイデンティティを持つものもいる[7][8][9][10][11]
定義

イングランド人についての著作は複雑になることがある。イングランドはその歴史上、様々な時代ごとに侵略者や移住者による渡来があり、世界中に文化的影響や住民を送り出した地であることがその理由だ。よって、「イングランド人」という用語は、ゲルマン人の大移動を共通の起源と考えるイングランドの民族グループ(通常はアングロ・サクソン人と呼ばれる)を指すこともある。歴史家のキャサリン・ヒルズは自身の言うイングランド人の「建国神話」についてこう書いている。

「アングロ・サクソン人の来訪は……重要かつ興味深い出来事としてとらえられている。なぜなら、この来訪がブリテン島の現在の住民のアイデンティティの鍵となる要素だと信じられているからだ。このような大移動によってブリテン南東部の人口構成は永久に変わってしまったと考え、イングランド人はケルト系アイルランド人・ウェールズ人・スコットランド人と異なる別個の民族だということになった……これは建国神話の好例であり……起源を聞いた際に明確な答えがほとんど返ってこない理由を示している[12]。」

イングランド人を見る視点は多種多様なものが考えられるが、最広義の考えの中には、自身をイングランド人と考える人は、他者からもイングランド人だと思われる、という見方もある[13]
イングランド人の民族意識

現在、公的なイングランド国籍はない(スコットランド人・アイルランド人・ウェールズ人も含めて連合王国市民である)が、それでもなお「イングランド人」という用語はイングランドの民をnation (民族国民) として論じるのに適切である(オックスフォード英語辞書でのnationの定義は、「言語・文化・歴史・共通の居住地」などで連合する集団であり、連合の要素は祖先の絆だけとは限らない、とされている[14])。「イングランド国民 (English nation)」の概念は「イギリス国民 (British nation)」の概念よりも古く、また1990年代にはイングランド人としての自覚の復活が見られている[15]。これはウェールズ・スコットランドなどイギリス内の他の国民意識の現れ(これは、イギリス国内での新しい権限委譲の政策協定に関して最も明確に現れた)や、大英帝国が歴史の隅に消えていったのに伴って、イギリス人としての共通の国民意識が薄れたこととリンクしている[16][17][13]

イングランド国民としてのアイデンティティの表現には「共通の祖先」という信条が含まれることがあるが、政治に携わるイングランドの民族主義者の中で、イングランド人らしさを一種の縁戚関係として考える者はめったにいない。例えば、English Democrats (イングランド民主党。イングランド地方議会の開催を目指す政治団体) の声明には「我々は、イングランド人らしさを単に民族的なもの、あるいは文化的なものとは考えず、この二つが複雑に混じり合ったものだと考える。我々は、イングランド人らしさが心のあり方 (state of mind) であると堅く信じている」とある[18]。また、Campaign for an English Parliament (同様のロビー活動を行う団体) は、「民族性・人種・宗教・文化にかかわらず、この古くからの土地を自らの故郷・自らの未来と考える人はすべてイングランド人である」と言っている[19]

ガーディアン紙中で、アンドレア・レヴィ (Andrea Levy ジャマイカ人の両親を持つロンドン生まれの小説家) はイングランドは「紛れもなく」独立した国 (separate country) であり、自らを「いわゆる、生まれも育ちもイングランドのイングランド人(私の覚えている限りでは、生まれ育ちという言葉はアングロ・サクソンから直系で繋がる白人の祖先とともに生まれ育った、という言葉ではない)」と断言し、「イングランドが排他的な集団になったことはなく、むしろ混成国民であった」と主張した。レヴィはまた「イングランド人らしさというものは、決して民族性と結びつけられることがないようにしなければならない。イングランド人の大部分は白人だが、そうでない者もいる……イングランド・スコットランド・ウェールズ・アイルランドは多元的・包括的なnationであるべきだ」[20]

しかしながら、ほとんどのイングランドの非白人は、イングランド人よりもむしろイギリス人としてのアイデンティティを持っていることを考えれば、ここでの「English(イングランドの、イングランド人の)」という言葉の使い方には議論の余地がある。イギリス国立統計局 (Office of National Statistics) は、2004年の国勢調査の中で、イギリス人の民族的アイデンティティ意識と国民的アイデンティティ意識を比較した。この結果、白人の58%が自身の民族的帰属(nationality)が「イングランド人(English)」であると答え、非白人の大部分は「イギリス人 (British)」と答えた。例を挙げれば、「78%のバングラデシュ人(民族的出自がバングラデシュの人々)が自らがイギリス人だと答え、イングランド人・スコットランド人・ウェールズ人であると答えたのは5%に過ぎなかった」。また、自らをイングランド人とした非白人は、民族を「混血 (Mixed)」であるとした割合が37%と最も多かった[21]
起源

イングランドはブリテン諸島の近隣国との緊密な交流があり、また様々な時代ごとに移民が加わってきた背景があるため、イングランド人の起源を明確に特定するのは難しい。旧来の視点では、イングランド人は、第一にローマ帝国の支配の終焉に伴ってグレートブリテン島に渡ってきたアングロ・サクソン人その他のゲルマン人の子孫であり、後にノルマン人やヴァイキングなどの移民を同化してきたものとされている。だがこの歴史的見解を、単純化しすぎたもの、あるいは誤りだとさえ指摘する歴史家や遺伝学者もいる。しかしながら、アングロ・サクソン系イングランド人という考え方は、伝統的に見て、イングランド人のアイデンティティを定義し、スコットランド人・ウェールズ人・アイルランド人といったケルト系の近隣国に対してイングランド人を特徴付けるのに重要な役割を果たしている。さらに、イングランドのアングロ・サクソン起源は、長きにわたって存在するイングランドの祖先と、ずっと近年になって渡ってきた祖先との区別を図る人々にとって重要である。例えばサラ・ケインの舞台劇「Blasted」でも民族ナショナリズムの姿勢がみられ、移民の子供と自らを対比して「俺は輸入品じゃないんだ」という台詞がみられる。「彼ら(移民)には子供がいる。


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