イワシクジラ
イワシクジラ Balaenoptera borealis
保全状況評価
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
ワシントン条約附属書I
分類
イワシクジラ(鰯鯨、Balaenoptera borealis)は、クジラ目ナガスクジラ科に属するヒゲクジラである。 2023年の時点では、北半球種(B. b. borealis)と南半球種(B. b. schlegelii)が認識されている[1]。 明確な種の区分や判別が行われる以前は、日本国内ではニタリクジラやカツオクジラやミンククジラ等と混同される場合が目立った[2]。学術的に日本近海にニタリクジラが分布する事が明確になったのは1950年代である[3]。 インド洋南部、北大西洋・南大西洋、北太平洋・南太平洋などに分布する。 概して沖合性が強く、付属海(縁海)にはあまり入らないが[2]、オホーツク海や日本海や地中海[4]などにも散発的な記録が存在し、たとえば歯舞群島の周辺では多数が捕獲されていた[5]。 また、南アメリカ大陸やフォークランド諸島では浅い沿岸部にもよく見られ、マゼラン海峡を利用する場合もある[6]。フォークランド諸島は2021年に世界初の本種のホットスポットに認定された[注 2][7][8]。 チリのアイセン・デル・ヘネラル・カルロス・イバニェス・デル・カンポ州のペナス湾(英語版 ナガスクジラ科ではシロナガスクジラ・ピグミーシロナガスクジラ・ナガスクジラに次いで体長が長く、最大で体長19.5メートルに達する。体重はザトウクジラよりも軽い傾向にあり、最大体重は28トンである[11]。出産直後の幼獣は全長400 - 450センチメートル前後である。 他のヒゲクジラ類と同様に、オスよりもメスの方が若干だが大型になり、他のナガスクジラ科と同様に南半球の個体の方が大きくなる傾向がある。 体形は細長い。上顎吻端から鼻孔にかけて1本の筋状の盛りあがり(キール)がある。喉から腹部にかけて32 - 60本の畝が入り、畝はへそに達しない。下顎から腹部中央部の畝は白いが、谷は黒い。背面の色彩は暗青色、腹面の色彩は淡青色。 上顎口蓋には左右にそれぞれ最長80センチメートルに達する320 - 400枚のクジラヒゲがある。ひげには白く細い毛が密生する。ひげの色彩は黒いが、吻端部には白いものもある。背鰭は他のナガスクジラ科のクジラよりも前方にあり[12]、三日月型で直立する。陰茎の色彩は黒い。 食性は動物食で、甲殻類、魚類などを食べる。群れている獲物を口を大きく開けて海水ごと取りこみ髭で獲物だけを濾しとって食べるか、水面で口を開けながら泳ぎ獲物を濾し取りつつある程度の量が溜まってから一気に飲みこむ。スキム・フィーディング(漉き取り摂餌)と呼ばれる採餌形態を取り、これはナガスクジラ科では珍しい事例である。採餌方法の関係上、セミクジラ属と共通点が多く、採餌の場を共にする事もあるが、競合的な行動は見られない[13]。 繁殖形態は胎生。冬季に交尾し、妊娠期間は約11か月。2-3年に1回、1頭の幼獣を産む。授乳期間は約6か月。生後2-3年で性成熟(以前は約11年で性成熟していたとされる)する。寿命は最長で74年。 沖合性が強い事も相まって、ホエールウォッチングの積極的な対象になる事はアゾレス諸島等のいくつかの海域を除くと少なく、ブリーチング(英語版 2006年時点でのイワシクジラの生息数は調査から約54,000頭と推測され、これは商業捕鯨以前の時代と比べ、およそ5分の1しかいないことが分かる[15]。また、1991年の北大西洋での調査では約4000頭であろうと報告された。しかし、この時の調査方式はCPEU(catch per unit effort)と呼ばれる特定の種を捜索し、発見するまでの時間と労力から頭数を導き出す方法であったことで問題視されている。この計測方法は真に科学的でないと度々批判される手法であった[16]。 デンマーク海峡での調査では、1987年に1,290頭、1989年には1,590頭が確認された[17]。
分類
分布
形態骨格標本
生態採餌の光景
推定生息数