イノシシ
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この項目では、狭義(種として)のイノシシについて説明しています。広義(科として)のイノシシについては「イノシシ科」をご覧ください。

イノシシ
イノシシ Sus scrofa
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))

分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:哺乳綱 Mammalia
:鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
亜目:猪豚亜目 Suina
:イノシシ科 Suidae
:イノシシ属 Sus
:イノシシ S. scrofa

学名
Sus scrofa Linnaeus1758
和名
イノシシ
英名
(wild) boar
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イノシシ(日本語:猪・豬、英名:Wild boar、学名:Sus scrofa)は、鯨偶蹄目イノシシ科動物の一種。本種を家畜化したものがブタである[1]
名称

学名は「Sus scrofa」であり、「Sus(イノシシ属)」+「scrofa(雌豚)」という意味でリンネによる命名である。ウシウマなど他の家畜の学名では野生種より前に家畜種に命名されている例が多々あり、先取権の点から問題となった(審議会の強権により解決された)が、イノシシとブタの間ではそのような問題は起きなかった。なおブタの学名は「Sus scrofa domesticus」であり、「domesticus(家畜の)」と家畜化されていることが強調されている。

英語では boar であるが、「去勢していない雄豚」という意味で使われることもあるため[2]、区別するために wild boar や wild pig とも呼ばれる。

日本語の古い大和言葉では「ヰ(イ)」と呼んだ。イノシシは「ヰ(猪)のシシ(肉)」が語源であり、シシは大和言葉で「」を意味する(「ニク」は音読み呉音)。現代中国語では、「猪(豬 / 猪)」の漢字は主にブタの意味で用いられており、イノシシは「野猪(野豬 / 野猪)」と呼んで区別する。同様に、朝鮮語の固有語においても「豚」は「テジ(??、dwaeji / twaeji)」、イノシシは「メッテジ(???、metdwaeji / mettwaeji)」と接頭辞で区別される。なお、十二支亥年もイノシシとなるのは日本のみであり、他の東アジア漢字文化圏においてはブタとなる。
生息域

元来は、アジアヨーロッパなどを中心に生息していた。人間によってイノシシまたはその家畜化されたブタが再野生化したものが、アメリカ大陸オーストラリア大陸などにも放され、爆発的に生息域を広げることになった。

分布地域によって個体に大きな差があり、米国アラバマ州では体長約2.8m、体重約470kgもある巨大なイノシシが過去には仕留められている。中国東北部ロシアのイノシシも体重300kg以上に達する個体がある。

日本にはニホンイノシシとリュウキュウイノシシの2亜種、ないしは八重山諸島のグループをさらに分けた3亜種が分布する。いずれもイノシシの亜種ではなく、別種として分類すべきとの議論もなされている。
東北地方の生息域の拡大

欧米やロシアのイノシシと比べると、日本のイノシシはサイズが小さく、手足も短いため雪の上で移動することが難しいこともあり、雪原地帯での生息が難しいと考えられる。しかし、近年の温暖化に伴って、東北地方におけるイノシシの生息域が広がっている。

山形県では、100年以上にわたってイノシシの生息が確認されていなかったが、2002年に天童市で1頭が捕獲されて以降、各地で出没が相次いでいる。2018年度末の推定個体数は約7800頭とされ、わずか10年間で20倍近くに膨れ上がっているとみられる。2019年度には約2000頭を捕獲したものの、イノシシによる農作物被害は約7400万円に上っている。
北海道にはイノシシは生息しているのか?

長らく「北海道にはイノシシは生息していない」というのが定説となっていたが、2003年に行われた環境省の調査で道東エリアに生息していると確認された。これは1980年?1988年頃に、イノブタの養殖のために本州から持ち込まれた数頭の個体が逃げ出し、野生化したものと考えられている。

北海道では「豚の放牧」が冬場にも行われ、足寄町ではイノブタが野生化し問題となっている[3]。1980年頃から足寄町でイノブタが飼育されるようになった。それらはほぼ放し飼い状態で飼育されていたため脱走し野生化した。駆除を試みたが元の飼い主が権利を主張して駆除が出来なかった。1987年頃に農作物被害が深刻化して1988年に所有者が所有権を放棄し、駆除が開始され1991年頃に個体数が減少するも完全駆除にはいたっていない[4]

こうした事例からも分かる通り、冬場でも水や餌が確保でき、雪や風雨を凌げる場所さえあれば、条件付きではあるが「北海道でも生息することは可能」と言える。ただし現状、無事に越冬できる個体は限られ、大規模な繁殖には至っていないと推察される[要出典]。
生態泥浴中のイノシシ

古くから狩猟の対象とされてきた動物の一つであるが、非常に神経質で警戒心の強い動物である。普段より見慣れないものなどを見かけると、それをできるだけ避けようとする習性があり、人間と遭遇した場合でも何もしなければ逃げ出すが、興奮状態だったり挑発を受けると反撃に出る[5]

基本的には昼行性であるが、人間の生活圏と重なる場合は人間を避けるため夜行性を示す[6][5][7]

多くの匂いに誘引性を示し、ダニ等の外部寄生虫を落としたり体温を調節したりするために、よく泥浴・水浴を行う。泥浴・水浴後には体を木に擦りつける行動も度々観察される。特にイノシシが泥浴を行う場所は「沼田場(ヌタバ)」と呼ばれ、イノシシが横になり転がりながら全身に泥を塗る様子から、苦しみあがくという意味のぬたうちまわる(のたうちまわる)という言葉が生まれた。

知能が高く、障害物の構造を目視で把握し、飛び越せても通過できないなどの判断が出来る[8]。飼育されている個体が地面を掘る際に木の棒を使うなど、道具を利用することもある[9]。学習能力や記憶力も優れており、イノシシのテーマパーク天城いのしし村」では芸を仕込み舞台で披露させることに成功した。一度侵入に成功した場所には繰り返し出没するが、危険な場所も把握して近寄らないため、農作物の被害が深刻化する[5](「イノシシ問題」で後述)。
攻撃性

非常に突進力が強く、ねぐらなどに不用意に接近したり鉢合わせした人間を襲うケースも多い[7]。イノシシの成獣は70kgかそれ以上の体重がある上、時速45kmで走る事も可能であり、イノシシの全力の突撃を受けると成人男性でも跳ね飛ばされて大けがを負う危険がある[7]

オスの場合にはも生えているため、たとえ立ち止まっている場合でもオスの場合は鼻先をしゃくり上げるようにして牙を用いた攻撃を行う。オスの牙は非常に鋭く、訓練された猟犬であっても縫合が必要な大きな裂傷や深い刺傷を負う場合があり[7]、作業服程度の厚さの布なら容易に切り裂いてしまうという[10]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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