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イヌリン
識別情報
CAS登録番号9005-80-5
PubChem24763
KEGGD00171
特性
化学式(C6H12O6)n
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
イヌリン(inulin)は、自然界において様々な植物によって作られる多糖類の一群である。炭水化物の一種、果糖の重合体(フルクタン)の一種であり、同類の植物による貯蔵栄養素であるデンプンと異なりヒトの消化器では分解不能で、大腸の腸内細菌叢によって初めて代謝されるため、栄養成分表示では糖質ではなく食物繊維として扱われる。キク科の植物は肥大した根や地下茎、それに由来する塊茎などに栄養源を貯蔵するための手段として利用している。イヌリンを合成・貯蔵する植物は、多くの場合デンプンのような他の物質を貯蔵することはない。イヌリンの名称は、キク科オグルマ属の植物(Inula)から抽出されたことに由来する[1]。
イヌリンはヒトが水溶性食物繊維を補うことができるためチコリーの根などから抽出する[2]といった方法で工業的に生産され(後述)、飲料(コーヒー、茶、乳酸菌飲料など)、菓子(チョコレート、ビスケット、飴など)、パン、魚肉練り製品といった飲食物に素材として使用されることが近年増えてきている[3][4][5]。薄味のものから甘めのものまで広範に使用されており、砂糖や脂肪、小麦粉の代わりに用いられることもある。これは次の点において有利であるとされる。すなわち、イヌリンは砂糖や他の炭水化物と比較して3分の1から4分の1程度のエネルギーしか含まず、脂肪と比べて6分の1から9分の1程度のエネルギーしか含まない。さらに、カルシウムの吸収を促進し、おそらくはマグネシウムの吸収も促進する。また、腸におけるバクテリアの活動を増進させる。
栄養学的には水溶性食物繊維の一種として扱われ、多量に摂取すると(特に、過敏な人あるいは不慣れな人にとっては)腹部膨満を来す可能性があることに注意が必要とされる。血糖に直接的に作用することはないが、食後の血糖濃度上昇を抑制することに加え、腸内細菌による代謝産物がインスリン感受性を向上させることにより、糖尿病患者の血糖値を適切な水準に調節することが報告されている[6][7]。そのため、血糖値異常に起因する疾病に対しての有効な食事療法の手段として期待される。
健康食品の一種として、通信販売等で入手可能である。直接食べると、ほのかな甘味を感じる。吸湿性が高く、水分を含むとべたつく。ダマになりやすく、冷水に溶かす際には少しずつ入れて良く撹拌する必要がある。 イヌリンは主に果糖の重合体であり、普通は末端にブドウ糖が結合している。果糖はイヌリン中でβグリコシド結合をしている。植物中に存在する場合はおよそ2から140個の果糖を含む。 イヌリン類のうち最も単純なものは1-ケストース(1-kestose)であり、これは2つの果糖と1つのブドウ糖からなる。 加水分解によってオリゴ糖を生ずる。 イヌリンは糸球体において完全に濾過され、腎尿細管によって分泌されることも再吸収されることもないため、重要な腎機能(特に糸球体濾過量)の測定を行う指標物質として使用され続けてきた(イヌリンクリアランス)。 慢性腎臓病患者の大多数に対して、EDTA(エチレンジアミン四酢酸、エデト酸)、クレアチニンクリアランスといった項目を調べることで糸球体濾過量を実際に測定できると確認されており、それはイヌリンの測定よりも単純な方法で可能であるために広く行われるようになっているのであるが、それでもなお、イヌリンの検査をすることで糸球体濾過量を測定することは標準であるとされている。
生化学
薬物動態学